icon fsr

文献詳細

雑誌文献

耳鼻咽喉科・頭頸部外科79巻5号

2007年04月発行

文献概要

特集 耳鼻咽喉科・頭頸部外科のリハビリテーション―症例を中心に 各論

3.顔面神経麻痺 1)発症早期のリハビリテーション

著者: 川口和浩1 青柳優1 稲村博雄1

所属機関: 1山形大学医学部情報構造統御学講座耳鼻咽喉・頭頸部外科学分野

ページ範囲:P.153 - P.158

文献購入ページに移動
Ⅰ はじめに

 末しょう性顔面神経麻痺,特にBell麻痺やHunt症候群の治療においては,病的共同運動や顔面拘縮などの後遺症なしに回復させることが求められる。これらの疾患では自然治癒となるような軽症例と,後遺症が発現して回復が不十分な重症例が混在する。いうまでもなく自然治癒が見込めるような軽症例にはリハビリテーションは不要であるが,発症早期にはその鑑別は必ずしも容易ではない。

 末しょう性顔面神経麻痺の後遺症としては,病的共同運動,顔面痙攣,顔面拘縮,ワニの涙症状などが知られている。高度の神経変性を生じた顔面神経麻痺においては,程度の差こそあれ後遺症は必発である。いったん後遺症が発症すれば自然治癒は望めず,患者は長期にわたり不快な症状に苦しみ,QOLも低下する。これら後遺症の治療については,従来から理学療法や薬物治療,神経あるいは筋切断術などの外科的治療が試みられてきたが,これらの治療効果については必ずしも満足なものは得られていない。顔面神経麻痺のリハビリテーションは,薬物あるいは外科的治療で達成できない要素を担当するものであるが,その適応や手技については議論のあるところである。すべての顔面神経麻痺症例に対してリハビリテーションが必要となるわけではないが,ともすれば不適切なリハビリテーションによって後遺症がより顕在化することもありうる。

 本稿では,顔面神経麻痺におけるリハビリテーションについて考察するうえで必要な顔面神経,および顔面表情筋の解剖学的特徴,末しょう性顔面神経麻痺と回復における病態,さらにわれわれが行っている発症早期におけるリハビリテーション指導について解説する。固定した後遺症の評価や各種治療に関しては他稿を参照されたい1)

参考文献

1)稲村博雄・他:A型ボツリヌス毒素を用いた顔面神経麻痺後遺症の治療効果.耳鼻臨床 99:829-834,2006
2)Seddon HJ:Three types of nerve injuries. Brain 66:237-288, 1943
3)青柳 優:顔面神経麻痺の電気的診断法.耳鼻臨床 95:985-995,2002
4)小松崎篤・他:末しょう性顔面神経麻痺の治療効果判定についての申し合わせ事項試案.Facial N Res Jpn 15:227-230,1995
5)稲村博雄:顔面神経麻痺の検査 ENoGとMST.JOHNS 16:341-346,2000
6)高橋伸明:末しょう性顔面神経麻痺症例におけるF波の臨床的研究.日耳鼻 105:1121-1127,2002
7)稲村博雄・他:顔面神経麻痺後遺症の出現状況―アンケート調査による検討.Facial N Res Jpn 19:5-7,1999
8)Beuskens Carien HG, et al:Literature review of evidence based physiotherapy in patients with facial nerve paresis. J Jpn Phys Ther Assoc 7:35-39, 2004
9)Valls-Sole J, et al:Myokymic discharges and enhanced facial nerve reflex responses after recovery from idiopathic facial palsy. Muscle Nerve 15:37-42, 199
10)Cossu G, et al:Reflex excitability of facial motoneurons at onset of muscle reinnervation after facial nerve palsy. Muscle Nerve 22:614-620, 1999
11)柏森良二:末しょう神経障害のリハビリテーション―脳神経領域の障害.総合リハ 34:316-326,2006

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1316

印刷版ISSN:0914-3491

雑誌購入ページに移動
icon up
あなたは医療従事者ですか?