耳鼻咽喉科・頭頸部外科79巻5号

2007年04月発行

特集 耳鼻咽喉科・頭頸部外科のリハビリテーション―症例を中心に

各論

4．頭頸部腫瘍術後の機能回復　1）口腔癌術後の咀嚼・嚥下

著者： 赤羽誉¹ 吉野邦俊¹ 荒木千佳² 北坂美津子³

所属機関： ¹大阪府立成人病センター耳鼻咽喉科 ²大阪府立成人病センターリハビリテーション部 ³大阪府立成人病センター看護部

ページ範囲：P.165 - P.172

文献概要

Ⅰ　はじめに

　口腔癌の治療，特に手術治療後には，準備期から口腔期を中心とした咀嚼障害のみではなく，咽頭期の嚥下機能にも影響を及ぼし，咀嚼から嚥下機能に対する一連の術後機能の低下が避けられない。特に切除範囲が大きくなると，手術後の機能障害がより高度となり，構音，咀嚼，嚥下といった日常生活の営みに影響を及ぼす結果となる。

　昨今，機能温存手術が積極的に施行されており，切除後の再建手術の工夫^1）だけではなく，術後の嚥下リハビリテーション（以下，リハビリと略す）も重要な位置づけにあるといえる。

　全国的に頭頸部癌に精通したリハビリスタッフが少ないのが現状であり，今後，頭頸部癌治療に伴う咀嚼・嚥下に携わるリハビリスタッフの充実が課題と思われる。また，舌接触補助床（palatal augmentation plate：PAP）^2,3）に代表されるような口腔内補綴物^4）の作製に当たり歯科・口腔外科領域との積極的な連携も必要である。

　本稿では，われわれが行った口腔癌症例を中心に，咀嚼・嚥下のリハビリについて述べる。

参考文献

1）今野昭義：口腔癌切除後の再建術と術後機能．JOHNS 6：323-330，1990

2）有岡享子・他：口腔腫瘍術後の摂食・嚥下障害に対し舌接触補助床（PAP）を適応した5例．日摂食嚥下リハ会誌 9：76-82，2005

3）中島純子・他：舌部分切除例における舌接触補助床装着による嚥下動態の変化．日摂食嚥下リハ会誌 9：206-212，2005

4）Logemann JA, et al：Effects of intraoral prosthetics on swallowing in patients with oral cancer. Dysphagia 4：118-120，1989

5）藤本保志・他：口腔・中咽頭がん術後嚥下機能の評価―嚥下機能評価基準（Swallowing Ability Scale）の妥当性について．日耳鼻 100：1401-1407，1997

6）List MA, et al：A performance status scale for head and neck cancer patients. Cancer 66：564-569, 1990

7）谷本啓二・他：嚥下造影（Videofluorographic Study for Swallowing）の意義と手技．日獨医報 46（1）：26-32，2001

8）藤島一郎：耳鼻咽喉科診療プラクティス　Ⅳ．リハビリテーションによる嚥下障害の治療．　2．嚥下障害の間接訓練と直接訓練．文光堂，東京，2002

9）ビデオ．頭頸部腫瘍術後嚥下障害のリハビリテーション．医歯薬出版，2004

10）小山祐司・他：口腔癌手術後のリハビリテーション．臨床リハ 7：884-889，1998

11）本多知行：耳鼻咽喉科診療プラクティス　Ⅳ．リハビリテーションによる嚥下障害の治療．　3．口腔期嚥下障害のリハビリテーション．文光堂，東京，2002

12）野原幹司・他：口腔腫瘍術後の嚥下障害例に対するIntermittent oro-esophageal tube feeding（OE）法の適用．日摂食嚥下リハ会誌 6：115-121，2002

13）三木祥男・他：舌切除患者と聞き手の間の会話頻度が発語明瞭度に及ぼす影響について．音声言語医学 47：25-33，2006