icon fsr

雑誌目次

雑誌文献

耳鼻咽喉科・頭頸部外科79巻6号

2007年05月発行

雑誌目次

目でみる耳鼻咽喉科

上顎洞に発生した髄外性形質細胞腫の1例

著者: 望月優一郎 ,   稲垣幹矢 ,   金井憲一 ,   工藤睦男 ,   洲崎春海

ページ範囲:P.374 - P.375

 髄外性形質細胞腫は比較的稀な疾患であるが,発生部位としては頭頸部領域に多く,その中でも特に鼻・副鼻腔に多くみられる1)。今回われわれは,上顎洞に発生した髄外性形質細胞腫の1例を経験したので報告する。

Current Article

下咽頭癌の治療

著者: 森一功

ページ範囲:P.377 - P.387

Ⅰ はじめに

 下咽頭癌の治療成績はいまだもって良好とはいえない。筆者の記憶が正しければ,2004年の第56回気管食道科学会総会でのシンポジウム『下咽頭癌の治療戦略』において,癌研究会の川端一嘉先生は次の旨の発表をされた。『過去20年以上にわたって,遊離空腸やら化学療法やら,いろいろできる限りのことをやってきたが,その治療成績にはほとんど改善がなかった。われわれは一体何をしてきたのだろうと思う』。ちなみに,先生のおられる癌研究会での1978~1999年までの死因特異的5年生存率は44.7%であったという1)

 このお言葉は,まさに同感である。そして,われわれ頭頸部外科医に重くのしかかる。

 この,頭頸部領域での最も手強い『難病』に対し,筆者がさまざまな面からどのように取り組んできたか,そして今どのようにしているかをここでは紹介し,諸兄のご批判を賜りたいと考えている。

 なお,筆者は久留米大学医学部耳鼻咽喉科で恩師・平野 実・現名誉教授のご指導を賜り,久留米大学の多くのスタッフと研究・臨床に励んだ。その経験・データに基づいて,現在,近畿大学医学部耳鼻咽喉科において臨床に従事している。本論文では両大学でのデータに基づいて話を進めることにする。

原著

中間鎖骨上神経と外側鎖骨上神経の分岐部より発生した神経鞘腫例

著者: 上田大 ,   中井茂

ページ範囲:P.389 - P.393

Ⅰ.はじめに

 頸神経由来の神経鞘腫は後頸部に,腕神経叢由来の神経鞘腫は鎖骨上に無痛性で表面平滑な腫瘤として触知することが多いとされる1)。今回われわれは頸部の皮下腫瘤を主訴とし,中間鎖骨上神経と外側鎖骨上神経の分岐部より発生した稀な神経鞘腫の症例を経験したので若干の文献的考察を加えて報告する。

耳下腺唾石の1症例

著者: 西屋圭子 ,   海山智九 ,   奥野敬一郎

ページ範囲:P.395 - P.397

Ⅰ.はじめに

 唾石症は耳鼻咽喉科領域でしばしば遭遇する疾患であるが,顎下腺に多く,耳下腺,舌下腺,小唾液腺には少ない1~3)。今回われわれは急性耳下腺炎を契機として発見した耳下腺唾石症の1例を経験したので報告する。

CEA高値にて精査中FDG-PETにて発見された甲状腺髄様癌の1症例

著者: 鈴木さやか ,   鈴川佳吾 ,   物部寛子 ,   戸島均

ページ範囲:P.399 - P.403

Ⅰ.はじめに

 甲状腺髄様癌はわが国では全甲状腺癌の約1%と稀なものである1,9)。腫瘍マーカーではカルシトニン(calcitonin)および癌胎児性抗原(carcinoembryonic antigen:CEA)が知られているが,通常CEAの上昇から本疾患が疑われることは非常に少ない。今回われわれは,CEA高値の精査中にFDG-PETにて甲状腺に有意な集積を認めたため,耳鼻咽喉科を受診した甲状腺髄様癌の1症例を経験したので報告する。

耳後部に発生したeccrine spiradenomaの1例

著者: 宮本真理子 ,   山村幸江 ,   西嶋文美 ,   吉原俊雄

ページ範囲:P.405 - P.408

Ⅰ.はじめに

 Eccrine spiradenoma(エクリンらせん腺腫)は,1956年Kerstingら1)により報告された,エクリン汗器官起源の比較的稀な良性腫瘍である。わが国では,1962年古谷ら2)の報告以来,約150例の報告があるが3),耳鼻咽喉科領域での報告は少ない。今回われわれは,耳後部に発生したeccrine spiradenomaの1例を経験したので,臨床経過に若干の文献的考察を加えて報告する。

急激に視力障害をきたした副鼻腔炎の1症例

著者: 柴﨑修 ,   星野朝文

ページ範囲:P.409 - P.413

Ⅰ.はじめに

 副鼻腔炎の重篤な合併症として,周囲組織への炎症波及による眼窩内合併症がある。眼球運動障害や視力障害をきたした症例では,診断や治療が遅れると後遺症を残すことがあり,迅速な診断と適切な治療が望まれる1)

 今回,外傷以外に明らかな副鼻腔炎の既往がなく,症状出現から1日で視力障害をきたした篩骨洞,前頭洞炎の症例を経験した。本症例の発症に関して,若干の文献的考察を加えて報告する。

喉頭ファイバースコープにて診断困難であった喉頭魚骨異物の1例

著者: 西嶋文美 ,   池松里奈 ,   吉原俊雄

ページ範囲:P.415 - P.418

Ⅰ.はじめに

 喉頭異物は比較的少なく,なかでも声門上異物は稀である。異物の確認が困難な例も報告されているが1,2),その多くは発見が遅れたため炎症反応による強い浮腫や肉芽などで異物が覆われたものである。今回われわれは,魚骨異物の大部分が埋没していたため,初診時に喉頭ファイバースコープでの確認が困難であった症例を経験したので報告する。

喉頭粘液腫の1例

著者: 加藤明子 ,   上田成久 ,   島尻正平 ,   塩盛輝夫 ,   森貴稔 ,   鈴木秀明

ページ範囲:P.419 - P.421

Ⅰ.はじめに

 粘液腫は心臓や骨,皮膚,皮下,腱膜組織,泌尿生殖器の管,骨格筋などに好発する良性腫瘍である。なかでも頭頸部領域では,特に顎骨に発生することが多く,喉頭に発生する粘液腫は稀である1)。今回われわれは,喉頭に発生した粘液腫の1例を経験したので,若干の文献的考察を加えて報告する。

頸部化膿性脊椎炎による椎前部膿瘍の1例

著者: 祢津宏昭 ,   八木克憲 ,   千田英二

ページ範囲:P.423 - P.427

Ⅰ.はじめに

 深頸部の蜂窩織炎および膿瘍は,急速に進行し感染初期の判断の遅れにより後遺症を残したり,場合によっては致命的になることがあり耳鼻咽喉科領域では最も問題となる感染症の1つである。今回われわれは保存的治療では改善せず,観血的治療を要した頸部化膿性脊椎炎による椎前部膿瘍の1症例を経験したので報告する。

シリーズ DPCに対応したクリニカルパスの実際

⑮粘膜下下鼻甲介骨切除術

著者: 井門謙太郎 ,   平川勝洋

ページ範囲:P.433 - P.438

Ⅰ はじめに

 クリニカルパス(以下,パスと略す)とは,看護の質の向上,患者の満足度の上昇,医療スタッフの教育,医療施設の経営改善などに効果を上げる臨床マネージメントツールとしてアメリカで考案され,わが国では1990年代半ばから導入する施設が増加してきた1)。さらに2003年より特定機能病院の一般病床では,診療報酬が従来の出来高算定から診断群分類構築(diagnosis procedure combination:DPC)2,3)と呼ばれる疾患ごとの分類に基づく定額支払い制に代わった。DPCでは入院期間が長いほど診療点数が低くなるように設定されており,ますます医療の効率化が求められるようになり,医療を標準化することを目的4)とするパスの役割の重要性が増している。

 粘膜下下鼻甲介骨切除術は,肥厚性鼻炎やアレルギー性鼻炎などで下甲介が著明に肥厚し,保存的治療で軽快しないことが予想される場合に,鼻腔の開存性を改善させる目的で古くから行われてきた術式である。最近ではアレルギー性鼻炎の鼻閉以外の症状に対する有効性も報告され5),その適応が拡大している。当院ではアレルギー性鼻炎のみならず,閉塞性睡眠時無呼吸症候群症例のうち,鼻閉がその一因と考えられる症例やCPAP導入の際に鼻腔抵抗が大きい症例に対しても積極的に施行している。この術式は,下甲介骨を残した粘膜切除よりも出血が少なく,粘膜を残すため術後にみられる痂皮がほとんど形成されず,治癒機転が早い。このため入院が短期間ですみ,合併症も比較的少なくバリアンスが生じにくいことから,一連の入院医療行為を標準化しやすく,パスのよい適応となる。

 粘膜下下鼻甲介骨切除術は,鼻中隔矯正術や後鼻神経切断術などのほかの術式と併用して行われることも多いが,本稿では,局所麻酔下に単独で行われる粘膜下下鼻甲介骨切除術について,当院で実際に使用しているパスを呈示しながら説明する。

⑮粘膜下下鼻甲介骨切除術

著者: 藤枝重治 ,   上山尚子 ,   漆崎誉子 ,   吉田真主美 ,   竹内繁美

ページ範囲:P.439 - P.444

Ⅰ はじめに

 近年,医療と看護の質向上と保証を目的としてクリニカルパス(以下,パスと略す)が作成され,運用されている。パス自身は医療の介入内容を計画化,書式化し,施行した医療の評価と改善を行うシステムである。しかしパスの運用には,さまざまなバリアンスが存在する1)。一般に,耳鼻咽喉科・頭頸部外科が扱う手術のなかで,鼻科手術はバリアンスが少ないと考えられている。そのため,パス導入時にまず作成されるのが鼻科手術である2)

 粘膜下下鼻甲介骨切除術は鼻閉の強いアレルギー性鼻炎などの患者に行われることが多い術式である。当院ではほとんどの症例で鼻中隔彎曲術を同時に行っている。本稿では,粘膜下下鼻甲介骨切除術・鼻中隔矯正術のパスを紹介する。

鏡下咡語

人工内耳と人工中耳―その開発をめぐって

著者: 柳原尚明

ページ範囲:P.429 - P.432

Ⅰ.はじめに

 難聴,特に感音難聴を克服することは耳鼻咽喉科医の夢であり使命である。人工内耳,人工中耳はわれわれの夢と使命を叶えてくれる有力な武器であり,耳鼻咽喉科の未来に明るい展望を開くものである。幸いにも私はこの新しい戦略的医療の発展を始めからみることができ,また自分自身もその歴史のなかで活動することができて多くのことを学んだ。ここにその一端を述べて読者の参考に供したい。

--------------------

あとがき

著者: 竹中洋

ページ範囲:P.450 - P.450

 本誌79巻2号で触れた,『温暖化と植生』についての続きを少し記します。植物には暖かさの指数という活動の指標があります。簡単にいえば摂氏5 ℃以上で温帯植物の重要な生命現象が営まれています。普通は月ごとの平均気温の積算で表現されます。当然温暖化が進めば積算温度も変わります。例えば,私も含めて多くのスギ花粉飛散予測者(あくまで予想者ではない)は標準木を中心に『今年の花芽の量は少ない』と判断しました。昨年の夏に台風が多かったこと,熱帯夜が少なかったことも当然のことながら根拠となっています。

 ところが,3月に入って突如のスギ花粉嵐に襲われました。病院は患者さんに襲われることになりました。日最高気温が摂氏12 ℃を超え,湿度が低くなると関西ではスギ花粉が飛び交います。例年だと2か月をかけてゆっくり飛び出すものが,一気に飛散を始めます。『少ない出来高でも短期間に集中して効率よく飛んだ』のが今年の関西のスギ花粉飛散です。とんだところで温暖化の副産物が出現してしまいました。大きな教訓を得ました。

基本情報

耳鼻咽喉科・頭頸部外科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1316

印刷版ISSN 0914-3491

雑誌購入ページに移動

バックナンバー

95巻13号(2023年12月発行)

特集 めざせ! 一歩進んだ周術期管理

95巻12号(2023年11月発行)

特集 嚥下障害の手術を極める! プロに学ぶコツとトラブルシューティング〔特別付録Web動画〕

95巻11号(2023年10月発行)

特集 必見! エキスパートの頸部郭清術〔特別付録Web動画〕

95巻10号(2023年9月発行)

特集 達人にきく! 厄介なめまいへの対応法

95巻9号(2023年8月発行)

特集 小児の耳鼻咽喉・頭頸部手術—保護者への説明のコツから術中・術後の注意点まで〔特別付録Web動画〕

95巻8号(2023年7月発行)

特集 真菌症—知っておきたい診療のポイント

95巻7号(2023年6月発行)

特集 最新版 見てわかる! 喉頭・咽頭に対する経口手術〔特別付録Web動画〕

95巻6号(2023年5月発行)

特集 神経の扱い方をマスターする—術中の確実な温存と再建

95巻5号(2023年4月発行)

増刊号 豊富な処方例でポイント解説! 耳鼻咽喉科・頭頸部外科処方マニュアル

95巻4号(2023年4月発行)

特集 睡眠時無呼吸症候群の診療エッセンシャル

95巻3号(2023年3月発行)

特集 内視鏡所見カラーアトラス—見極めポイントはここだ!

95巻2号(2023年2月発行)

特集 アレルギー疾患を広く深く診る

95巻1号(2023年1月発行)

特集 どこまで読める? MRI典型所見アトラス

94巻13号(2022年12月発行)

特集 見逃すな!緊急手術症例—いつ・どのように手術適応を見極めるか

94巻12号(2022年11月発行)

特集 この1冊でわかる遺伝学的検査—基礎知識と臨床応用

94巻11号(2022年10月発行)

特集 ここが変わった! 頭頸部癌診療ガイドライン2022

94巻10号(2022年9月発行)

特集 真珠腫まるわかり! あなたの疑問にお答えします

94巻9号(2022年8月発行)

特集 帰しちゃいけない! 外来診療のピットフォール

94巻8号(2022年7月発行)

特集 ウイルス感染症に強くなる!—予防・診断・治療のポイント

94巻7号(2022年6月発行)

特集 この1冊ですべてがわかる 頭頸部がんの支持療法と緩和ケア

94巻6号(2022年5月発行)

特集 外来診療のテクニック—匠に学ぶプロのコツ

94巻5号(2022年4月発行)

増刊号 結果の読み方がよくわかる! 耳鼻咽喉科検査ガイド

94巻4号(2022年4月発行)

特集 CT典型所見アトラス—まずはここを診る!

94巻3号(2022年3月発行)

特集 中耳・側頭骨手術のスキルアップ—耳科手術指導医をめざして!〔特別付録Web動画〕

94巻2号(2022年2月発行)

特集 鼻副鼻腔・頭蓋底手術のスキルアップ—鼻科手術指導医をめざして!〔特別付録Web動画〕

94巻1号(2022年1月発行)

特集 新たに薬事承認・保険収載された薬剤・医療資材・治療法ガイド

icon up
あなたは医療従事者ですか?