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文献詳細

雑誌文献

耳鼻咽喉科・頭頸部外科79巻6号

2007年05月発行

シリーズ DPCに対応したクリニカルパスの実際

⑮粘膜下下鼻甲介骨切除術

著者: 井門謙太郎1 平川勝洋1

所属機関: 1広島大学大学院医歯薬学総合研究科耳鼻咽喉科・頭頸部外科

ページ範囲:P.433 - P.438

文献概要

Ⅰ はじめに

 クリニカルパス(以下,パスと略す)とは,看護の質の向上,患者の満足度の上昇,医療スタッフの教育,医療施設の経営改善などに効果を上げる臨床マネージメントツールとしてアメリカで考案され,わが国では1990年代半ばから導入する施設が増加してきた1)。さらに2003年より特定機能病院の一般病床では,診療報酬が従来の出来高算定から診断群分類構築(diagnosis procedure combination:DPC)2,3)と呼ばれる疾患ごとの分類に基づく定額支払い制に代わった。DPCでは入院期間が長いほど診療点数が低くなるように設定されており,ますます医療の効率化が求められるようになり,医療を標準化することを目的4)とするパスの役割の重要性が増している。

 粘膜下下鼻甲介骨切除術は,肥厚性鼻炎やアレルギー性鼻炎などで下甲介が著明に肥厚し,保存的治療で軽快しないことが予想される場合に,鼻腔の開存性を改善させる目的で古くから行われてきた術式である。最近ではアレルギー性鼻炎の鼻閉以外の症状に対する有効性も報告され5),その適応が拡大している。当院ではアレルギー性鼻炎のみならず,閉塞性睡眠時無呼吸症候群症例のうち,鼻閉がその一因と考えられる症例やCPAP導入の際に鼻腔抵抗が大きい症例に対しても積極的に施行している。この術式は,下甲介骨を残した粘膜切除よりも出血が少なく,粘膜を残すため術後にみられる痂皮がほとんど形成されず,治癒機転が早い。このため入院が短期間ですみ,合併症も比較的少なくバリアンスが生じにくいことから,一連の入院医療行為を標準化しやすく,パスのよい適応となる。

 粘膜下下鼻甲介骨切除術は,鼻中隔矯正術や後鼻神経切断術などのほかの術式と併用して行われることも多いが,本稿では,局所麻酔下に単独で行われる粘膜下下鼻甲介骨切除術について,当院で実際に使用しているパスを呈示しながら説明する。

参考文献

1)長谷川俊彦:一般外科におけるクリニカルパス.包括医療下でのクリティカルパスの意義.外科治療 92:14-18,2005
2)松田晋哉:DPCと病院マネジメント.じほう,東京,2005,pp303-312
3)松田晋哉:基礎から読み解くDPC―正しい理解と実践のために.医学書院,東京,2005,pp1-80
4)深谷 卓:クリニカルパス―なぜ医療に必要とされるのか.耳喉頭頸 73:257-259,2001
5)森 繁人・他:鼻アレルギーに対する粘膜下下甲介骨切除術.耳鼻臨床 89:435-441,1996
6)木所昭夫・他:クリニカルパスの実際―われわれはこうしている 乳癌手術.外科治療 85:303-312,2001
7)松島照彦・他:クリティカルパスとは.ENTONI 37:1-7,2004
8)郡司篤晃:パス法とその医療管理における意義.病院 57:153-158,1998

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1316

印刷版ISSN:0914-3491

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