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文献詳細

雑誌文献

耳鼻咽喉科・頭頸部外科79巻8号

2007年07月発行

文献概要

原著

頭頸部放射線治療後晩期に発症した進行性嚥下障害に対して桂枝人参湯®が有効であった1例

著者: 三枝英人1 中村毅1 愛野威一郎1 中溝宗永1 小町太郎1 粉川隆行1 松岡智治1

所属機関: 1日本医科大学耳鼻咽喉科学教室

ページ範囲:P.589 - P.593

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Ⅰ.はじめに

 放射線治療技術の進歩により悪性腫瘍治療後の長期生存例が増加してきている。しかし,一方で放射線治療晩期合併症の報告例も増えてきている。頭頸部領域における放射線治療晩期合併症には,甲状軟骨壊死などの組織壊死1),進行性感音難聴2~4),舌下神経麻痺などの末しょう神経障害2,5,6),放射線誘発癌などの報告がなされている。放射線誘発癌以外は,放射線による末しょう細動脈の破綻が不可逆性に慢性進行することが原因であり,一般に放射線治療後数年,多くは10年前後から発症し,難治性であるとされている6,7)。今回,われわれは頭頸部放射線治療後晩期に発症した進行性嚥下障害に対して漢方製剤である桂枝人参湯®を処方し,嚥下が改善して患者のQOLに貢献できた1例を経験したので報告する。

参考文献

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掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1316

印刷版ISSN:0914-3491

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