シリーズ DPCに対応したクリニカルパスの実際―悪性腫瘍
①上咽頭癌のクリニカルパス
著者:
吉崎智一
,
室野重之
,
脇坂尚宏
,
近藤悟
,
古川仭
ページ範囲:P.77 - P.86
Ⅰ はじめに
近年,医療の質の向上,医療費の効果的使用,在院日数の短縮が提唱されており,そのため,クリニカルパス(以下,パスと略す)を用いたチーム医療が注目されている。パスとは疾患の平均的な経過を想定して医師,看護師,薬剤師,栄養士などすべての医療関係者がチーム医療を行うための治療計画書である。したがって,一般的には比較的経過が安定した疾患を対象とする1,2)。
頭頸部癌は同一疾患であったとしても,病期,合併症,医療機関の設備,患者の意思によって選択される治療法が多岐にわたるためパスの作成は容易でない3)。また,いったん作成しても十分に活用していない施設も多い。本稿のテーマである上咽頭癌に対しては,当院では第ⅡA病期までは放射線単独であるが,ⅡBからⅣB期に対しては放射線と化学療法(CDDP,5-FU)の交替療法を施行している。化学療法も放射線療法も副作用は各患者により大きく異なるため,手術を中心とした治療法に比べバリアンスが増加する。しかし,パスはそのつど進化させていくものとしてより実用的なパスへのバージョンアップを心がけていけば,第何版かに到達して振り返ったならば以前よりも標準化が図れていることに気がつく。ここではこのうち交替療法施行に際してのパスについて概説する。