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文献詳細

雑誌文献

耳鼻咽喉科・頭頸部外科80巻1号

2008年01月発行

文献概要

特集 耳鼻咽喉科専門研修をはじめる医師へ―症例報告発表・論文執筆のコツ,注意点

1.学会発表の方法・仕方(口演・ポスター)

著者: 氷見徹夫1

所属機関: 1札幌医科大学医学部耳鼻咽喉科

ページ範囲:P.33 - P.39

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Ⅰ.症例報告とは

 医学論文や学会発表のなかで1例から数例についてまとめたものが症例報告である。臨床医学研究は表1のように分類されるが,症例検討・報告は記述的な研究に分類される。その疾患自体が珍しい症例,疾患は珍しくないが特異な症状・経過・病態を示した症例・特別な治療が奏効した症例などがその対象となる。症例の詳細を呈示するとともに文献的な考察を行って疾患を解説して症例を位置づけ,問題点を指摘する,という作業が必要である。しかし,症例報告は多数の症例を集積し分析した臨床研究や表1の分析的研究などに比較して,聴衆に与えるインパクトは小さく研究としての価値が低いとみられがちである。これは,医学研究のなかでも症例報告は少数を対象としている研究であり,極論をいえば症例さえいれば発表することができ,比較的短時間,短期間でまとめることができることから,研究の入門として行われていることが多いと思われる。

 しかし,入門とはいっても,『症例検討・報告』は臨床の現場では日常に行われていることである。自分の担当する症例の問題点を明確にして,治療法や治療手技を比較検討しながら適用し,事後評価を行うという一連の作業はまさしく『症例報告』という作業にほかならない。この意味では,自分の臨床能力を高める方法として発表する機会を設けることは重要である。さらに,学会での発表は,他者や他の施設に対して『公表』することにより客観的な評価を受けたり,批判を受けたり,あるいは適切なアドバイスをもらったりするための大きなチャンスの場であると考えられる。学会などで症例報告を発表するための準備を行い,議論に備えて知識を整理することは,気づかない疑問点を浮かび上がらせることが多い。過去の偉大な研究業績も原点は症例経験のなかから生まれた疑問を解決しようとする意欲から生まれたといっても過言ではないことからも,症例報告は非常に重要な医学研究であることがわかる。

参考文献

1)大隈典子:必修プレゼンテーション法.実験医学 21:1784-1789,2003
2)五十嵐 健:プレゼンテーションの勝ち方.日本放送協会,東京,2003
3)大隈典子:必修プレゼンテーション法.実験医学 21:2139-2143,2003
4)外科関連学会協議会:症例報告を含む医学論文及び学会研究会発表における患者プライバシー保護に関する指針.日本外科学会ホームページ,学会関連情報.http://www.jssoc.or.jp/aboutus/relatedinf/privacy.html
5)伏木信次:学会・研究発表に関しての小児神経学会倫理ガイドライン.脳と発達 38:125-128,2006

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1316

印刷版ISSN:0914-3491

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