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文献詳細

雑誌文献

耳鼻咽喉科・頭頸部外科80巻1号

2008年01月発行

文献概要

シリーズ DPCに対応したクリニカルパスの実際―悪性腫瘍

①上咽頭癌治療の試験的クリニカルパス

著者: 佃守1 三上康和1 松田秀樹1 堀内長一1 田口享秀1

所属機関: 1横浜市立大学医学部耳鼻咽喉科・頭頸部外科

ページ範囲:P.87 - P.93

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Ⅰ はじめに

 上咽頭癌は初診時から原発部位は小さくても頸部(特に両側)に転移の多い癌である。また肺を中心に遠隔転移も少なからず認められる(表1,2)。そのため治療前に十分な検査ののち,重複癌,遠隔転移がないことを把握し,N3,M1症例以外ではT分類にかかわらず,原発部位と両側全頸部に放射線治療を行うことが多い。放射線治療単独では5年生存率が20~30%ときわめて悪かったため,根治照射に化学療法を加えた治療が一般的になっている(図1,2)1~4)。しかし現在,わが国のDPCでは放射線治療のみが認められ,化学療法を加味しても算定は低く,今後DPCに化学療法の内容がすべて加算されることを切に希望する。

 予後の悪い上咽頭癌のため当科では入院のうえ,抗腫瘍性の高い多剤併用化学療法を放射線治療と併用しており,この化学療法のレジメンを当院の癌化学療法審査・評価委員会の承認を得て,薬剤部と化学療法のプロトコールを作製し(医療者用),日常診療として用い,一方患者には治療の説明書,化学療法の内容を渡し(患者用),情報の共有を図っている。いずれにしても化学療法の,特に有害事象は個人差(バリアンス)があり5),前述の医療者用の様式をクリニカルパス(以下,パスと略す)がわりに使用しているのが現状である。M1,N3症例には各レジメンの薬剤の量を増量したneo-adjuvant chemotherapy(NAC)を2コース行い,その後にCBDCAを併用した放射線治療を行っている(図3)。また高齢者や合併症のある症例には別のレジメンの化学療法を併用しているが4)今回は割愛する。本稿では化学療法併用放射線治療を行う合併症のない上咽頭癌症例を中心とした内容とし,参考にしていただければ幸いである。なお一部の薬剤はジェネリック薬品を用いていることを明記しておく。

参考文献

1)Al-Sarraf M, et al:Chemo-radiotherapy in patients with locally advanced nasopharyngeal carcinoma:a radiation therapy oncology group study. J Clin Oncol 8:1342-1351, 1990
2)Practice Guidelines in Oncology-v. 1. 2007:http://www.nccn.org/professionals/physician
3)佃 守・他:頭頸部がん.臨床腫瘍学,有吉寛・他(編).癌と化学療法,東京,2003,pp503-516
4)佃 守:頭頸部進行癌に対するChemoradiation,加我君孝・他(編).耳鼻咽喉科・頭頸部外科学の最新医療.先端医療技術研究所,東京,2005,pp149-154
5)佃 守:癌治療における有害反応対策―癌化学療法と有害反応発現の時期.日本臨牀 61:917-922,2003
6)佃 守:耳鼻咽喉科領域におけるクリニカルパスとインフォームドコンセント―頭頸部癌のインフォームドコンセント.ENTONI 37:60-68,2004

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1316

印刷版ISSN:0914-3491

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