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文献詳細

雑誌文献

耳鼻咽喉科・頭頸部外科80巻13号

2008年12月発行

文献概要

鏡下咡語

科学研究の落とし穴―脚気の研究にまつわる物語

著者: 青柳優1

所属機関: 1山形大学医学部情報構造統御学講座耳鼻咽喉・頭頸部外科学分野

ページ範囲:P.945 - P.948

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 今年のNHK大河ドラマは『篤姫』である。薩摩藩主島津斉彬の養女で,第13代将軍徳川家定の継室であり,第14代将軍徳川家茂の継母である天璋院篤姫が主人公の幕末ドラマである。NHK大河ドラマの常であるが,篤姫の故郷,鹿児島への観光熱は高まっているに違いない。しかし,私は『家定』,『家茂』という名を聞くと,2人の死因となった脚気衝心とビタミンB1の発見に関連する脚気の研究にまつわる物語に思いを巡らせないではいられない。

 家定,家茂ともに甘党だったようである。一説によると家定はカステラなどの菓子作りが趣味であったという。よく煮豆やふかし芋などを作り家臣たちに振舞ったりしており,松平春嶽などは陰で『イモ公方』と呼んでいた。また,家茂は30本もの虫歯があったという。ビタミンB1の需要量は,食事中のエネルギー量に比例する。糖質の摂取量が過剰であると需要量は増大するので,相対的にビタミンB1欠乏症に陥ることもある。したがって,2人とも脚気に罹患する素地は十分にあったわけである。

参考文献

板倉聖宣:模倣の時代(上,下).仮説社,東京,1988

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1316

印刷版ISSN:0914-3491

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