icon fsr

文献詳細

雑誌文献

耳鼻咽喉科・頭頸部外科80巻3号

2008年03月発行

原著

耳下腺深葉良性腫瘍手術後の顔面神経麻痺

著者: 横島一彦1 中溝宗永1 酒主敦子1 稲井俊太1 横山有希子1 杉崎一樹1 小町太郎1 八木聰明1

所属機関: 1日本医科大学耳鼻咽喉科学教室

ページ範囲:P.209 - P.212

文献概要

Ⅰ.はじめに

 耳下腺腫瘍の術前評価のなかで,腫瘍の部位診断,特に浅葉腫瘍と深葉腫瘍の鑑別は重要である。腫瘍が深葉に存在すると,神経周囲の処理が多くなることで手術の難易度が高くなるうえ,顔面神経麻痺が高頻度に発症すると考えられるからである1~3)

 画像診断で耳下腺内の顔面神経を描出することは難しいため4,5),下顎後静脈,胸鎖乳突筋や顎二腹筋後腹との位置関係から顔面神経の仮想曲面を考えて,部位診断を行うのが一般的である6,7)。しかし,その方法にも限界があり,手術を施行してはじめて深葉腫瘍であることがわかることも少なくない。そのため,耳下腺腫瘍手術を行う場合には浅葉腫瘍への対応だけではなく,深葉腫瘍手術の手技に加え,インフォームド・コンセントに最もかかわる術後顔面神経麻痺についても十分に知っておく必要がある。

 そこで,われわれが最近3年間に行った耳下腺深葉良性腫瘍手術例を解析し,術後顔面神経麻痺発症の頻度,原因,回復状況について検討した。

参考文献

1)田村嘉之・他:耳下腺深葉の良性多形腺腫の外科的治療法.耳喉頭頸 66:234-238,1994
2)黒野祐一:耳下腺多形腺腫の治療―深葉型の切除手術.JOHNS 13:69-72,1997
3)佐久間信行・他:耳下腺腫瘍の部位についての考察.耳喉頭頸 63:909-913,1991
4)多田雄一郎・他:耳下腺腫瘍のMRI―顔面神経の描出について.耳喉頭頸 66:687-691,1994
5)古川政樹・他:耳下腺内顔面神経の画像.JOHNS 13:57-63,1997
6)成松明子・他:唾液腺疾患X線CT.耳鼻咽喉科・頭頸部外科MOOK 17,耳鼻咽喉科画像診断.金原出版,東京,1990,pp140-147
7)友田幸一・他:唾液腺のMRI.耳喉頭頸 67:94-100,1995
8)山下敏夫:耳下腺深葉腫瘍切除術.耳下腺腫瘍臨床の最前線,山下敏夫(編).金原出版,東京,2004,pp73-74
9)木西 實・他:顔面神経麻痺程度の診断.耳鼻咽喉科・頭頸部外科MOOK 13,顔面神経麻痺.金原出版,東京,1989,pp69-77
10)飯塚桂司・他:耳下腺腫瘍に対する区域切除.手術 43:509-513,1989
11)吉橋秀高・他:耳下腺腫瘍術後の顔面神経麻痺に対する検討.耳鼻臨床 92:1331-1334,1999
12)今野昭義・他:耳科腺癌の治療成績と耳下腺拡大全摘後の再建術.頭頸部腫瘍 15:109-118,1989

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1316

印刷版ISSN:0914-3491

雑誌購入ページに移動
icon up

本サービスは医療関係者に向けた情報提供を目的としております。
一般の方に対する情報提供を目的としたものではない事をご了承ください。
また,本サービスのご利用にあたっては,利用規約およびプライバシーポリシーへの同意が必要です。

※本サービスを使わずにご契約中の電子商品をご利用したい場合はこちら