文献詳細
特集 女性と耳鼻咽喉科疾患
文献概要
Ⅰ.はじめに
この20年来,発症の増加が指摘されている小児心因性難聴は学校保健の面からも検討がなされ,2000年には耳鼻咽喉科学校医のための対応指針が出されている1)。報告の多くが小児例であるために,心因性難聴は小児特有のものと考えられがちである。しかし,以前は心因性難聴が『ヒステリー性難聴』と呼ばれていたように,小児の発症は稀で成人女性が心因反応を生じて発症するとみられていた。このように小児も含め,一般に周知されるようになってからも発症は女性に多いことが明らかになっている。
医学でいう『ヒステリー』は神経症の1型であり,器質性疾患はなく非器質性疾患である。語源は女性に特有と考えられていたことから『子宮』を意味する古代ギリシア語から名づけられている。心因症状である『ヒステリー』は現在では解離性障害と転換性障害の2つに分けられている。心因性難聴は転換性障害に当たり,心理的なストレスを身体症状として出現したものである。ここでは心因性難聴の症例を呈示し,その診療について述べる。
この20年来,発症の増加が指摘されている小児心因性難聴は学校保健の面からも検討がなされ,2000年には耳鼻咽喉科学校医のための対応指針が出されている1)。報告の多くが小児例であるために,心因性難聴は小児特有のものと考えられがちである。しかし,以前は心因性難聴が『ヒステリー性難聴』と呼ばれていたように,小児の発症は稀で成人女性が心因反応を生じて発症するとみられていた。このように小児も含め,一般に周知されるようになってからも発症は女性に多いことが明らかになっている。
医学でいう『ヒステリー』は神経症の1型であり,器質性疾患はなく非器質性疾患である。語源は女性に特有と考えられていたことから『子宮』を意味する古代ギリシア語から名づけられている。心因症状である『ヒステリー』は現在では解離性障害と転換性障害の2つに分けられている。心因性難聴は転換性障害に当たり,心理的なストレスを身体症状として出現したものである。ここでは心因性難聴の症例を呈示し,その診療について述べる。
参考文献
1)日本耳鼻咽喉科学会社会医療部日本学校保健委員会:耳鼻咽喉科学校医のための小児心因性難聴への対応指針.日耳鼻 103:588-598,2000
2)赤松えり子:成人の心因性難聴の背景と環境.心因性難聴,矢野 純・他(編).中山書店,東京,2005,pp31-42
3)工藤典代:心因性疾患.MB ENTONI 6:92-97,2001
4)高橋三郎・他:DSM-Ⅳ-TR 精神疾患の診断・統計マニュアル.新訂版.医学書店,東京,2004,pp651-695
5)久保千春・他:心療内科・精神科からみた心因性難聴(転換性障害としての難聴).心因性難聴,矢野 純・他(編).中山書店,東京,2005,pp18-21
6)工藤典代:小児の心因性難聴.心因性難聴,矢野 純・他(編).中山書店,東京,2005,pp18-21
7)工藤典代:小児心因性難聴の基礎的および臨床的研究―聴覚学上の特徴について.日耳鼻 88:1558-1597,1985
8)工藤典代:心理発達面からみた心因性難聴児の臨床的検討.小児耳鼻咽喉科 21(1):30-34,2000
9)留守卓也,工藤典代:歪成分耳音響放射の心因性難聴診断への応用.小児耳鼻咽喉科 22(2):38-42,2001
10)佐藤 斎・他:持続音検査を用いた機能性難聴診断.Audiology Jpn 46:201-206,2003
11)工藤典代:心因性難聴の診断―検査の進め方.心因性難聴,矢野 純・他(編).中山書店,東京,2005,pp55-63
12)矢野 純:心因性難聴の臨床像―成人の心因性難聴.心因性難聴,矢野 純・他(編).中山書店,東京,2005,pp13-17
13)矢野 純:心因性難聴への対応,治療法―成人における介入期と対応法,進め方.心因性難聴,矢野 純・他(編).中山書店,東京,2005,pp140-143
14)芦谷道子:心因性難聴への対応,治療法―小児における介入期と対応,法,進め方.心因性難聴,矢野 純・他(編).中山書店,東京,2005,pp133-139
15)Rotenberg BW, et al:Conversion disorder in a child presenting as sudden sensorineural hearing loss. Int J Pediatr Otorhinolaryngol 69:1261-1264, 2005
掲載誌情報