文献詳細
特集 オフィスサージャリー・ショートステイサージャリー
文献概要
Ⅰ はじめに
粉瘤(アテローム)はしばしば日常臨床で遭遇する疾患である。粉瘤はその内容物の性状に伴い,臨床の場で用いられている俗称である。Atheromaは粥状を意味し,動脈硬化病変の記載に用いられることが多い。欧米ではあまり粉瘤をatheromaと表記することはない。病理組織学的には有毛部に生じるepidermal cyst(類表皮囊胞,表皮囊腫もしくは囊胞)とtrichilemmal cyst,pilar cyst(外毛根鞘囊腫),さらに外傷などにより無毛部に生じるepidermal inclusion cyst,wen(表皮陥入囊胞)が含まれる。これと類似しているが皮様囊胞(dermoid cyst)は先天異常などで表皮が迷入したもので,真皮や皮膚付属器をもつものをいう。文字通り皮膚のような囊胞の意味である。側頭部や前額部に見られる稀な囊胞である。これに対し,epidermal cystは皮膚ではなく,その表皮の部分(dermis)に類似した(類表皮の)囊胞の意味である1,2)。402例の粉瘤の病理組織学的検討では,外毛根鞘囊腫は2.7%でほかは表皮囊腫(epidermal cyst)であったとの報告がある3)。表皮囊腫は毛囊漏斗上部(follicular infundibulum)もしくは被覆表皮(epidermis)に由来し,病態的に多くは毛囊,毛髪のターンオーバーの過程で皮脂腺管の閉塞に伴い生じた貯留囊胞である。以下,表皮囊腫を中心に述べるが,本稿では時に簡略化のため一部においてepidermal cystを単に『囊胞』と表記する。
癒着を起こし閉塞した皮脂腺の排泄口が黒色面疱として観察されるが(図1),これが明確には認められない症例もある。角化の著明な重層扁平上皮で包まれた囊胞で内腔側にはケラチンと落屑角化物が充満している。皮膚科,形成外科,一般外科の外来でもしばしば見受けられる疾患である。男女比は約2対1で男性に多く,部位的には顔面,頸部,背部に多いと報告されている4)。耳鼻咽喉科では耳介周囲の病変としてしばしば治療に当たることになる。感染を合併して医療機関を受診することが多い。
粉瘤(アテローム)はしばしば日常臨床で遭遇する疾患である。粉瘤はその内容物の性状に伴い,臨床の場で用いられている俗称である。Atheromaは粥状を意味し,動脈硬化病変の記載に用いられることが多い。欧米ではあまり粉瘤をatheromaと表記することはない。病理組織学的には有毛部に生じるepidermal cyst(類表皮囊胞,表皮囊腫もしくは囊胞)とtrichilemmal cyst,pilar cyst(外毛根鞘囊腫),さらに外傷などにより無毛部に生じるepidermal inclusion cyst,wen(表皮陥入囊胞)が含まれる。これと類似しているが皮様囊胞(dermoid cyst)は先天異常などで表皮が迷入したもので,真皮や皮膚付属器をもつものをいう。文字通り皮膚のような囊胞の意味である。側頭部や前額部に見られる稀な囊胞である。これに対し,epidermal cystは皮膚ではなく,その表皮の部分(dermis)に類似した(類表皮の)囊胞の意味である1,2)。402例の粉瘤の病理組織学的検討では,外毛根鞘囊腫は2.7%でほかは表皮囊腫(epidermal cyst)であったとの報告がある3)。表皮囊腫は毛囊漏斗上部(follicular infundibulum)もしくは被覆表皮(epidermis)に由来し,病態的に多くは毛囊,毛髪のターンオーバーの過程で皮脂腺管の閉塞に伴い生じた貯留囊胞である。以下,表皮囊腫を中心に述べるが,本稿では時に簡略化のため一部においてepidermal cystを単に『囊胞』と表記する。
癒着を起こし閉塞した皮脂腺の排泄口が黒色面疱として観察されるが(図1),これが明確には認められない症例もある。角化の著明な重層扁平上皮で包まれた囊胞で内腔側にはケラチンと落屑角化物が充満している。皮膚科,形成外科,一般外科の外来でもしばしば見受けられる疾患である。男女比は約2対1で男性に多く,部位的には顔面,頸部,背部に多いと報告されている4)。耳鼻咽喉科では耳介周囲の病変としてしばしば治療に当たることになる。感染を合併して医療機関を受診することが多い。
参考文献
1)森岡貞雄・他:皮膚囊腫.現代皮膚科学大系9,山村雄一・他(編).中山書店,東京,1980,pp119-140
2)Pilch BZ:Head and neck surgical pathology. Lippincott Williams and Wilkins, Philadelphia, 2001, pp551-554
3)山口敏之・他:粉瘤症例の検討.日臨外会誌68:547-551,2007
4)向井理奈・他:耳介良性腫瘍105例の検討.日形会誌20:350-357,2000
5)竹内英二・他:耳垂に生じた巨大表皮囊腫例.耳鼻臨床94:601-604,2001
6)神保好夫・他:ピアスケロイドの治療.形成外科47:S279-S282,2004
7)知野剛直・他:表皮囊腫から生じた有棘細胞癌の1例.皮膚臨床46:299-302,2004
8)岩澤うつぎ・他:臀部の皮様囊腫から発生した有棘細胞癌の1例.日皮会誌112:129-135,2002
9)田口英樹・他:巨大な皮様囊腫より発生し死亡に至った有棘細胞癌の1例.臨皮50:967-969,1996
10)小川真希子・他:粉瘤様外観を呈した耳垂部Merkel細胞癌の1例.臨皮59:798-800,2005
11)西山茂夫:カラーアトラス:耳の皮膚疾患―腫瘍性病変(Ⅰ).耳展48:334-335,2005
12)西山茂夫:カラーアトラス:耳の皮膚疾患―腫瘍性病変(Ⅴ).耳展49:160-161,2006
13)伊藤明和:外耳腫瘍.耳鼻咽喉科頭頸部外科MOOK No.5,野村恭也・他(編).金原出版,東京,1987,pp128-136
14)青木計績・他:粉瘤.手術60:429-433,2006
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