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特集 オフィスサージャリー・ショートステイサージャリー
13.声帯ポリープ切除術
著者: 児嶋久剛1
所属機関: 1児嶋耳鼻咽喉科
ページ範囲:P.103 - P.111
文献購入ページに移動Ⅰ はじめに
声帯ポリープは炎症や声の酷使,喫煙などが誘因となり,比較的急に発症する。発生部位としては声帯振動の激しい声帯膜様部中央付近に多く発生することから声帯の高速振動との何らかのかかわりが推測されている。声帯を病理学的にみると,表面から粘膜上皮,粘膜固有層浅層,声帯靭帯(粘膜固有層中間層,深層),声帯筋が層構造を形成している。なかでも粘膜上皮から粘膜固有層浅層に至る組織は声帯振動に不可欠とされている。声帯ポリープでは粘膜固有層浅層に出血やフィブリン析出,毛細血管の拡張,浮腫などの血管系の病変がみられる。以上のことから声帯ポリープの成因は声帯の高速振動という機械的刺激で引き起こされた粘膜固有層浅層の限局性出血と考えられている1)。
したがって,声帯ポリープの切除に当たっては主病変である粘膜固有層浅層の病変のみを切除し,他の組織はできるだけ温存することが望ましい。不用意な手術操作によってこの層構造を破綻させると声帯は硬く瘢痕化し,二度と正常な振動をもたらすことはない。声帯ポリープ切除手術に対する心得として,粘膜上皮と固有層浅層の組織切除は必要最小限にとどめること,声帯靭帯に及ぶ侵襲は差し控えることが大切である2)。つまり,手術に当たっては声帯粘膜が本来もつ物性をできるだけ損なわないように,かつきわめて正確に病変を切除する必要がある。この目的のために,当初局所麻酔下で行われていた声帯ポリープ切除術は次第に全身麻酔下の喉頭微細手術(ラリンゴマイクロサージャリー)へと置き換わり,これが確立された方法として広く行われるようになった。
ところが近年,日帰り手術という考え方が生まれてくると,ラリンゴマイクロサージャリーには全身麻酔に伴う術前・術後の管理3)が必要であるという欠点が持ち上がり,これがオフィスサージャリーとして普及しない大きな理由となった。日帰り手術という観点から再び局所麻酔下の喉頭手術に注目が集まったのである。問題は局所麻酔下であっても病変をいかに正確に切除するかにあるが,これには近年の医療機器の発達がおおいに貢献した。すなわち,ファイバースコープの利用によってラリンゴマイクロサージャリーでの顕微鏡下に観察するのと同様,病変の範囲を正確に知ることが可能になり,安定した手術野が確保できるようになったことである4,5)。
近年,デイサージャリーユニットが発達し,全身麻酔の必要な手術も日帰り,あるいは,ショートステイで行うことも可能になっているので全身麻酔による欠点は幾分緩和されているものの,そういった施設をもつところでもラリンゴマイクロサージャリーに替わって局所麻酔下の喉頭手術の役割は増加している6~8)。その理由は挿管チューブがないので手術創,特に後部声門部が見やすいこと,手術中に患者の声をモニターできること,ストロボ光源を利用して声帯振動の状態を観察できること,そしてなにより,全身麻酔に比べて手軽なことが挙げられる。ただ,症例によっては局所麻酔下に手術野を確保することが困難な症例もあるので,現時点ではその適応をよく考えて局所麻酔下喉頭手術にするのか,全身麻酔下ラリンゴマイクロサージャリーにするのかを吟味する必要がある。
声帯ポリープは炎症や声の酷使,喫煙などが誘因となり,比較的急に発症する。発生部位としては声帯振動の激しい声帯膜様部中央付近に多く発生することから声帯の高速振動との何らかのかかわりが推測されている。声帯を病理学的にみると,表面から粘膜上皮,粘膜固有層浅層,声帯靭帯(粘膜固有層中間層,深層),声帯筋が層構造を形成している。なかでも粘膜上皮から粘膜固有層浅層に至る組織は声帯振動に不可欠とされている。声帯ポリープでは粘膜固有層浅層に出血やフィブリン析出,毛細血管の拡張,浮腫などの血管系の病変がみられる。以上のことから声帯ポリープの成因は声帯の高速振動という機械的刺激で引き起こされた粘膜固有層浅層の限局性出血と考えられている1)。
したがって,声帯ポリープの切除に当たっては主病変である粘膜固有層浅層の病変のみを切除し,他の組織はできるだけ温存することが望ましい。不用意な手術操作によってこの層構造を破綻させると声帯は硬く瘢痕化し,二度と正常な振動をもたらすことはない。声帯ポリープ切除手術に対する心得として,粘膜上皮と固有層浅層の組織切除は必要最小限にとどめること,声帯靭帯に及ぶ侵襲は差し控えることが大切である2)。つまり,手術に当たっては声帯粘膜が本来もつ物性をできるだけ損なわないように,かつきわめて正確に病変を切除する必要がある。この目的のために,当初局所麻酔下で行われていた声帯ポリープ切除術は次第に全身麻酔下の喉頭微細手術(ラリンゴマイクロサージャリー)へと置き換わり,これが確立された方法として広く行われるようになった。
ところが近年,日帰り手術という考え方が生まれてくると,ラリンゴマイクロサージャリーには全身麻酔に伴う術前・術後の管理3)が必要であるという欠点が持ち上がり,これがオフィスサージャリーとして普及しない大きな理由となった。日帰り手術という観点から再び局所麻酔下の喉頭手術に注目が集まったのである。問題は局所麻酔下であっても病変をいかに正確に切除するかにあるが,これには近年の医療機器の発達がおおいに貢献した。すなわち,ファイバースコープの利用によってラリンゴマイクロサージャリーでの顕微鏡下に観察するのと同様,病変の範囲を正確に知ることが可能になり,安定した手術野が確保できるようになったことである4,5)。
近年,デイサージャリーユニットが発達し,全身麻酔の必要な手術も日帰り,あるいは,ショートステイで行うことも可能になっているので全身麻酔による欠点は幾分緩和されているものの,そういった施設をもつところでもラリンゴマイクロサージャリーに替わって局所麻酔下の喉頭手術の役割は増加している6~8)。その理由は挿管チューブがないので手術創,特に後部声門部が見やすいこと,手術中に患者の声をモニターできること,ストロボ光源を利用して声帯振動の状態を観察できること,そしてなにより,全身麻酔に比べて手軽なことが挙げられる。ただ,症例によっては局所麻酔下に手術野を確保することが困難な症例もあるので,現時点ではその適応をよく考えて局所麻酔下喉頭手術にするのか,全身麻酔下ラリンゴマイクロサージャリーにするのかを吟味する必要がある。
参考文献
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