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雑誌目次

雑誌文献

耳鼻咽喉科・頭頸部外科80巻6号

2008年05月発行

雑誌目次

目でみる耳鼻咽喉科

NBI(Narrow Band Imaging)による鼓膜の観察

著者: 高野信也 ,   森川敬之

ページ範囲:P.358 - P.360

Ⅰ.はじめに

 Narrow Band Imaging:狭帯域光観察(以下,NBIと略す)はOLYMPUSメディカルシステムズ(株)が開発した光源装置である。光源から供給される光を血液中に含まれるヘモグロビンに吸収されやすい特定の波長(415nmおよび540nm)に限定することにより,従来の光源による内視鏡検査に比べて粘膜表層の毛細血管や微細構造を強調表示する光学的強調技術である。これまで,消化管および咽頭の悪性腫瘍鑑別へ応用されその有用性についての記載も数多くなってきている1~4)

 今回われわれはNBIの耳科領域への応用を試み急性中耳炎の鼓膜所見について観察した。

Current Article

ナトリウム利尿ペプチドと内耳

著者: 鈴木幹男 ,   我那覇章 ,   親泊美香

ページ範囲:P.361 - P.366

Ⅰ はじめに

 哺乳動物の心房筋細胞には顆粒が存在して内分泌細胞中のホルモン貯蔵部位と似ていることが知られていたが,1981年,de Boldら1)はラット心房抽出液を他のラットに静注して尿量とナトリウムイオン排泄が著明に増加することを見いだした(ANP)。それ以降ナトリウム利尿ペプチドの研究は飛躍的に進み,現在では急性心不全治療薬として商品化され,高い有効性が報告されるようになった2)

 ナトリウム利尿ペプチドファミリーはANP(atrial natriuretic peptide),BNP(B-type natriuretic peptide),CNP(C-type natriuretic peptide),DNP(Dendroaspis natriuretic peptide),urodilatinの5つに分類されている。DNPはヒト血清,心筋で見つかっているが遺伝子が不明であり,urodilatinはANPと共通前駆体から作られる。本論文ではナトリウム利尿ペプチドのなかでも研究が進んでいるANP,BNP,CNPについて述べる。

原著

第Ⅷ脳神経症状を初発とした原発性肺癌内耳道内転移の1症例

著者: 高浪太郎 ,   中西わか子 ,   山田智佳子 ,   井上里可 ,   前田恵理 ,   鈴木光也

ページ範囲:P.367 - P.371

Ⅰ.はじめに

 小脳橋角部や側頭骨領域を占拠する転移性腫瘍病変に遭遇する機会は臨床上少ない。今回われわれは,右難聴,回転性めまいで発症し,その後,遅発性に右顔面神経麻痺が出現した原発性肺癌の内耳道内転移症例を経験したので,若干の文献的考察を加えて報告する。

急性散在性脳脊髄炎症例におけるABRの検討

著者: 高野賢一 ,   吉岡巌 ,   佐藤純 ,   小澤貴行

ページ範囲:P.373 - P.376

Ⅰ.はじめに

 急性散在性脳脊髄炎(acute disseminated encephalomyelitis:以下,ADEMと略す)は,感染症や予防接種後に発熱,嘔吐,頭痛などの症状で急性発症して,意識障害,巣症状,視力障害などの中枢神経症状および膀胱直腸障害,歩行障害などの脊髄症状を呈する炎症性脱髄性疾患である1)。人口10万人に対し,年0.8人の発症率とされる比較的稀な疾患である1)

 ADEMのような大脳~脳幹に白質病変を認める疾患は,聴性脳幹反応(以下,ABRと略す)の異常をきたすことが知られている2,3)。今回,われわれは稀な脱髄疾患であるADEM症例のABR検査を経時的に施行し,病巣部位の検出や経過観察に有用であると考えられたので,若干の考察を加えて報告する。

髄液漏と外転神経麻痺をきたした蝶形骨洞炎の1例

著者: 太田有美 ,   小川賀子 ,   嶽村貞治 ,   二宮宏智

ページ範囲:P.377 - P.381

Ⅰ.はじめに

 蝶形骨洞および篩骨蜂巣は眼窩尖端部,海綿静脈洞に近接することから,これらの副鼻腔病変から第Ⅱ~Ⅵ脳神経に障害をきたすことがある1,2)

 今回,蝶形骨洞炎に外転神経麻痺,髄液漏および翼突筋部膿瘍による開口障害を合併した症例を経験したので報告する。

歯科材料による上顎洞異物の1例

著者: 西屋圭子 ,   登坂亜希子 ,   海山智九 ,   奥野敬一郎

ページ範囲:P.383 - P.386

Ⅰ.はじめに

 上顎洞異物は近年,歯科インプラント治療の普及とともに歯科材料による医原性異物症例が増加している。今回,インプラント治療中にその歯科材料の迷入による上顎洞異物で,内視鏡下鼻内手術にて異物摘出をした症例を経験したので報告する。

Sjögren症候群に伴った喉頭MALTリンパ腫の1例

著者: 安積靖敏 ,   髙橋邦明 ,   中山雅博 ,   井村穣二 ,   堀光雄

ページ範囲:P.387 - P.390

Ⅰ.はじめに

 MALTリンパ腫(marginal zone B-cell lymphoma of MALT type)は,粘膜関連リンパ組織(mucosa-associated lymphoid tissue:以下,MALTと略す)を発生母地とする低悪性度のリンパ腫の一種で,1983年,Isaacsonら1)によりその概念が提唱された。1994年のREAL分類から独立した疾患として採用されている。喉頭に発生することは非常に稀で,わが国からは1994年以降12例の報告があるに過ぎない10~19)。今回われわれはSjögren症候群(以下,SSと略す)の経過中に,声門上に原発した喉頭MALTリンパ腫の1例を経験したので報告する。

腫瘍内出血により気道閉塞をきたした副咽頭間隙腫瘍症例

著者: 松吉秀武 ,   鮫島靖浩 ,   蓑田涼生 ,   梶原薫子 ,   後藤英功 ,   林田桃子 ,   田中文顕 ,   湯本英二

ページ範囲:P.391 - P.394

Ⅰ.はじめに

 副咽頭間隙に発生する腫瘍は全頭頸部腫瘍の0.5%を占め,その70~80%は良性で残りの20~30が悪性とされている1)。神経鞘腫,多形腺種,傍神経腫などが大部分を占め2),約50%が無痛性頸部腫脹にて発見されると報告3)されている。今回われわれは腫瘍内出血により急激に増大し,気道閉塞をきたした副咽頭間隙腫瘍の1例を経験したのでその概要を報告し,あわせて文献的考察を行った。

側頭部皮膚原発腺様囊胞癌の頸部リンパ節転移例

著者: 大久保淳一 ,   上田成久 ,   大淵豊明 ,   北村拓朗 ,   橋田光一 ,   若杉哲郎 ,   鈴木秀明

ページ範囲:P.395 - P.398

Ⅰ.はじめに

 腺様囊胞癌は唾液腺に好発する悪性腫瘍の1つである。その他,涙腺,気管支,乳腺,子宮などを発生母地とすることも知られているが,皮膚原発は稀である1)。今回われわれは,側頭部皮膚原発の腺様囊胞癌で頸部リンパ節転移をきたした1例を経験したので報告する。

手術・手技

4画面分割入力ユニットを用いた赤外線フレンツェル眼鏡の眼振記録システム

著者: 新鍋晶浩 ,   大久保啓介 ,   荒木康智 ,   深谷和正 ,   大塚邦憲

ページ範囲:P.399 - P.403

Ⅰ.はじめに

 自発眼振検査,頭位眼振検査,頭位変換眼振検査,指標追跡検査をはじめとする眼振検査1)は,めまいの診断,治療,経過観察に必要不可欠である。実際の臨床では,ほとんどは医師が検者として一般外来診療中に行っている。最近は良性発作性頭位めまい症に対する理学療法2)も広く行われるようになり,個々の患者の眼振の誘発,観察には十分な時間が必要である。しかし,限られた診療時間内に医師が必要と考える症例についての眼振検査をすべて行うことは難しいことも少なくない。そこでわれわれは以下に示すような眼振記録システムを考案し,生理機能検査技師との協力により,めまい患者の眼振を記録し,実際に運用を行った。運用開始より2年が経過し,若干の修正を加えて現在まで有効に活用している。本システムの概要について報告する。

シリーズ DPCに対応したクリニカルパスの実際―悪性腫瘍

⑤下咽頭癌T2症例

著者: 花澤豊行 ,   櫻井大樹 ,   木下崇 ,   米倉修二 ,   久満美奈子 ,   佐々木慶太 ,   茶薗英明 ,   岡本美孝

ページ範囲:P.409 - P.415

Ⅰ はじめに

 当科における中・下咽頭癌の治療方針は,図1に示すとおり,リンパ節転移(N)の程度により分類・決定されている。したがって,今回のテーマである下咽頭癌T2症例においても,そのNの程度により治療方針が異なるわけだが,いずれの症例にも適応されている化学療法同時併用の放射線治療(concurrent chemoradiotherapy:CCRT)についてのクリニカルパス(以下,パスと略す)を作成し,運用を開始しているので,これについて解説する。

鏡下咡語

がん医療に想う

著者: 海老原敏

ページ範囲:P.406 - P.407

Ⅰ.がん医療へのかかわり

 がん診療に従事して43年経った。がん患者さんをみて最初に強い衝撃を受けたのは,専門課程の3年生のポリクリで,右上顎拡大全摘を受けた老女をみたときである。眼部から頰部にかけての皮膚欠損に恐ろしいものをみた気がしてとても自分が進む道ではないと思ったものだ。医学部6年間の学生生活と1年のインターンを前橋で過ごし第一外科か法医学教室に入ることを考えていたが,東京に戻らざるを得なくなった。東京に戻り,どこの教室に入るか一から探さなければというときに,創立後日の浅い国立がんセンターはどうかということになり,兄を介して当時の手術部長竹田千里先生にお会いすることになった。

 がんセンターに入ってから,当初は5~6年,がん診療全般にわたっての知識を得て次のことを考えようと思っていた。当時は外科の医局に入れば,10年は無給が当たり前の時代に,半年でフルタイムの非常勤に,その1年5か月後には耳鼻咽喉科の医員として採用され麻酔科併任となった。がんセンターでは救急蘇生と全身管理を身につけるためまず麻酔科に2年いる予定であったが,1年10か月経ったとき,当時麻酔科医長だった方が米国の大学の教授として行かれることになり,麻酔科標榜医取得の直前に指導医不在となり資格取得のために300例の麻酔例を届けなければならないことになり,予定より半年長くなった。この2年半に及ぶ麻酔医のときに術野のよく見える特等席でさまざまな外科医の手技を間近に見ることができたのが,後の手技の開発に大きな力となった。

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あとがき

著者: 竹中洋

ページ範囲:P.422 - P.422

 今年の春は3月初旬が寒く,スギ花粉の飛散は予想より遅れ気味でした。関西ではスギ花粉の飛散は3週間ほどで,桜開花を迎えてヒノキ科花粉が猛威をふるったようです。珍しく入学式を満開の桜が飾ってくれました。祇園の梅と桜を一瞬交差して楽しめたのが正に早足でやってくる春の感激でしょうか。

 さて,政治の世界はねじれ現象とか呼ばれて半年が過ぎましたが,何ら有効な手が打たれることなく年度末を迎え『ガソリン税』や『道路特定財源』,『地方交付税』など歳入に絡む話題が目白押しでした。国の歳入・歳出は,税収予想を下に組み立てられる話と従来の予算・決算の枠のなかで継続した事業性が相撲をとるようなことです。これらのことはわれわれが普通に家計とか小使いで行っていることですが,国や大学,病院レベルになるとどうも上手く行かないのはどうしてでしょうか? 

基本情報

耳鼻咽喉科・頭頸部外科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1316

印刷版ISSN 0914-3491

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