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雑誌目次

雑誌文献

耳鼻咽喉科・頭頸部外科80巻9号

2008年08月発行

雑誌目次

目でみる耳鼻咽喉科

Wegener肉芽腫症と鼻性NK/T細胞リンパ腫の鑑別診断

著者: 家根旦有 ,   赤坂咲恵 ,   城田志保 ,   細井裕司

ページ範囲:P.594 - P.596

Ⅰ.はじめに

 鼻腔内の腫瘍は多種多様で,その診断には苦慮することも多い。その代表的疾患にWegener肉芽腫症と鼻性NK/T細胞リンパ腫がある。両者は一見すると,同じような進行性の壊死性肉芽腫様病変であるが,病態は全く異なり,治療方法も異なることからその鑑別診断は重要である。しかし,両者の鑑別は容易ではなく,迅速に確定診断するには病理診断のみならず,臨床像を十分に把握することが必要である(表1)1)

Current Article

喉頭癌治療後の音声に関するQOLの検討

著者: 折舘伸彦 ,   本間明宏 ,   福田諭

ページ範囲:P.597 - P.603

Ⅰ はじめに

 喉頭癌に対する治療法は単独あるいは化学療法併用での放射線治療,喉頭微細手術,喉頭部分切除,喉頭亜全摘術,喉頭全摘術など多様化している。例えば,声門癌T1症例に対する治療成績では,放射線治療と内視鏡下レーザー手術の間に大きな差はない1~3)。進行癌に対しては,喉頭全摘+術後照射と化学療法併用放射線治療(+必要に応じて救済手術)の治療成績に有意差はないとされる4~6)。したがって,治療後の有害事象,後遺障害は治療法選択に大きな影響をもつ。治療後の機能とQOLを測定して後遺障害を評価することは,新たな治療法の有効性の検討にも重要である。しかしながら,喉頭癌患者の治療後音声に関するQOLをいかなる治療を受けた患者も同一の基準で比較検討した報告は少ない。本研究の目的は各治療法による音声に関するQOLを同一評価方法を用いて検証することである。

原著

外耳道多形腺腫の1例

著者: 高木大樹 ,   羽藤直人 ,   暁清文

ページ範囲:P.605 - P.608

Ⅰ.はじめに

 外耳道に発生する良性腫瘍は稀であるが種類は多く,その診断はしばしば苦慮する。内田ら1)によると,外耳道良性腫瘍のなかでは色素性母斑(37.5%)が最も多いと報告されており,次いで骨腫(23.1%),耳垢腺腫(18.3%)が高頻度であり,多形腺腫は2.9%と少ない。そのため,症例報告は散見されるが,外耳道多形腺腫の診断,成因や治療法に関してのまとまった報告はない。今回われわれは術前に診断が困難であった外耳道多形腺腫の1例を経験したので症例を報告するとともに,過去のわが国における外耳道多形腺腫例を参照し,その診療方針に関して考察したので報告する。

外耳道癌を伴った耳性脳膿瘍の1例

著者: 正木稔子 ,   野村泰之 ,   浅川剛志 ,   松山一夫 ,   鴫原俊太郎 ,   池田稔 ,   福島匡道 ,   角光一郎

ページ範囲:P.609 - P.613

Ⅰ.はじめに

 耳性頭蓋内合併症は抗菌薬の発達に伴って減少し,致死率も減少してきたといわれている1)。しかし報告例はいまだに散見され1~11),重篤性に注意を要する疾患であることに変わりはない。一方,外耳道癌も稀な疾患であり,渉猟した限りでは外耳道に限局した扁平上皮癌を伴った耳性脳膿瘍の本邦例はみあたらなかった。今回われわれは外耳道癌を伴った耳性脳膿瘍症例を経験したので考察を含めて報告する。

鼻腔転移で発見された腎癌

著者: 竹尾哲 ,   竹内万彦 ,   角田貴継 ,   宮本由起子 ,   間島雄一

ページ範囲:P.615 - P.618

Ⅰ.はじめに

 鼻副鼻腔領域に他臓器からの転移性腫瘍が発生するのは0.7~2%と稀である1,2)。今回,われわれは転移性鼻腔腫瘍による症状を契機に発見された腎細胞癌の1例を経験したので報告する。

鼻前庭部に発生した巨細胞肉芽腫の1例

著者: 縄手彩子 ,   佐伯忠彦 ,   平野博嗣

ページ範囲:P.619 - P.621

Ⅰ.はじめに

 巨細胞肉芽腫(giant cell granuloma:以下GCGと略す)は顎骨内の出血に対する修復過程に発生し,骨巨細胞腫とは異なる病変として1953年にJaffeら1)が最初に報告した疾患である。しかし,近年では顎骨病変だけでなく全身に発生する可能性のある病変と捉えられている2)。今回われわれは右鼻前庭部に発生したGCGの1例を経験したので報告する。

軟口蓋に発生した血管平滑筋腫の1例

著者: 山本一宏 ,   金泰秀 ,   田邉牧人

ページ範囲:P.623 - P.625

Ⅰ.はじめに

 平滑筋腫は平滑筋細胞に由来する良性腫瘍で,子宮などの女性生殖器,胃や腸などの消化管に発生することが多いといわれている1)。組織学的に平滑筋腫(solid leiomyoma),血管平滑筋腫(vascular leiomyoma, angioleiomyoma),平滑筋芽腫(epithelioid leiomyoma, leiomyoblastoma)に分類される1)。口腔に発生する平滑筋腫は稀であり,その約2/3が血管平滑筋腫といわれている1,2)。今回,軟口蓋に発生した血管平滑筋腫の1例を治療する機会を得たので,経過を報告するとともに,文献的考察を行った。

気管切開術を要した高齢者深頸部感染症の2例

著者: 鈴村恵理 ,   竹内万彦 ,   間島雄一

ページ範囲:P.627 - P.631

Ⅰ.はじめに

 認知症や変性疾患を伴う高齢者が急性疾患を発症した場合,みずから自覚症状を訴えることができず,診断,治療に苦慮することがしばしばある。今回,発熱を主訴に耳鼻咽喉科外来を初診後,急激に呼吸困難をきたし,気管切開を要した症例を2例経験したので,その病因について若干の文献的考察を加えて報告する。

耳下腺MALTリンパ腫の1例

著者: 深谷和正 ,   佐藤靖夫 ,   荒木康智 ,   本村朋子

ページ範囲:P.633 - P.636

Ⅰ.はじめに

 粘膜を介して外界と接する部位である消化管,唾液腺,気管支,胸腺などに形成されるリンパ組織は粘膜関連リンパ組織(mucosa-associated lymphoid tissue:MALT)と呼ばれる。このMALTを発生母地とする悪性リンパ腫がMALTリンパ腫である。MALTリンパ腫は多くは消化管,なかでも特に胃に発生するが,頭頸部領域では唾液腺,眼付属器,甲状腺などに発生する1)。今回,われわれは比較的稀な耳下腺に発生した高悪性度のMALTリンパ腫の1症例を経験したので,若干の文献的考察を加えて報告する。

頭蓋外内頸動脈瘤の1例

著者: 森田真也 ,   高田訓 ,   松村道哉 ,   佐藤宏紀 ,   古田康

ページ範囲:P.637 - P.639

Ⅰ.はじめに

 内頸動脈瘤は頻度の高い疾患であるが,頭蓋外の内頸動脈に発生する動脈瘤は非常に稀である1,2)。頭蓋外内頸動脈瘤は頸部の拍動する無痛性腫瘤として発見されることが多いが,塞栓や血栓による脳梗塞,一過性脳虚血などの中枢神経症状を引き起こす可能性もあり,慎重な対処が必要である2~4)。また,下位脳神経や交感神経を腫瘤が圧迫することで嚥下障害や嗄声とHorner徴候などの症状を呈することもある3)。発生要因としては,外傷,動脈硬化,細菌感染,梅毒,線維筋性異形成,Marfan症候群,大動脈炎症候群,手術操作,放射線照射などが挙げられる5)。近年では外傷性および動脈硬化性のものが大部分を占める1,2)。今回,われわれは扁桃周囲膿瘍を疑わせる局所所見を呈した中咽頭へ突出する頭蓋外内頸動脈瘤を経験したので報告する。

シリーズ DPCに対応したクリニカルパスの実際―悪性腫瘍

⑧放射線単独療法:喉頭癌T1

著者: 力丸文秀 ,   古後龍之介 ,   檜垣雄一郎 ,   冨田吉信

ページ範囲:P.649 - P.657

Ⅰ はじめに

 DPC(diagnosis procedure combination)は,診断群分類に基づく1日当たりの包括評価制度で,2003年4月より全国82の特定機能病院に導入されている。このDPCの導入で平均在院日数の短縮のためクリニカルパス(以下,パスと略す)の利用も促進される。このパスは特定の疾患に対して治療や検査をスケジュールとしてまとめたもので,医療を適正化し,計画性をもって提供することができる。また,患者側へは,治療内容の理解を与えることができる。

 当院では現在のところ,このDPC導入はなされておらず,当科のパスはあくまでも医療の適正化と患者への治療内容の理解のために使用しているものである。

鏡下咡語

耳鼻咽喉科診療50有余年のつぶやき

著者: 瀧本勲

ページ範囲:P.645 - P.647

 小学生の頃から理科は好きで兄,叔父,従兄弟などに医師が多く,私も,ということで一応予定通り昭和28(1953)年,耳鼻科教室に入局。大学人,病院勤務,言語聴覚士養成校教員と経験してきたが,現在まで特にトラブルもなく50有余年の医師生活・家庭生活を過ごしてきた。今,顧みると大まかにいって前半と後半では生活や社会の状況,先端技術,医療界は大きく変化している。

 これまで聴能言語学院に勤務,付設診療所でも卒業生を採用して聴覚・言語障害のリハビリテーションも行った関係で,愛知県言語聴覚士会から教育講演を依頼されたので関連資料を集めて再勉強したり,昔のアルバムを見直したりして,その移り変わりに感慨を新たにした。改めて見直しを『つぶやいて』みよう。

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あとがき

著者: 竹中洋

ページ範囲:P.664 - P.664

 6月は国際学会が目白押しでした。ヨーロッパ鼻科学会とISIANがギリシャのクレタ島で開催され,踵を接して『国際真珠腫学会』がトルコで開催されました。6月14日土曜日深夜の関西空港トルコ航空イスタンブール行きは耳鼻咽喉科医のラッシュで,ご夫婦連れの挨拶がそこかしこで聞けました。私は10日から『日本アレルギー学会春季臨床大会』(東京),引き続きの内外学会行脚です。19日には帰国,20日早朝ポリクリの締め,昼から日耳鼻理事会と続きました。教室員にはナガーイ教授不在で良かったのか,悪かったのか。後者だと信じています?。

 クレタ島は中学時代から憧れの地でしたので,当方も夫婦でギリシャに向かいました。リゾートホテルでの学会は快適そのものですし,碧い空と海は将にイメージ通りでした。クノッソスの遺跡は160m四方とそれほど大きいものではありませんが,迷宮伝説を現実のものとして,神話世界から開放したアサー・エバンスの努力に感激しました。ミノア文明の根源が交易にあるのに宮殿は海岸線からかなり離れた場所でした。日本の吉野ヶ里遺跡や山内丸山遺跡と同様,見晴らしがよく程よく外敵の侵入から離れたところが選ばれたのでしょうか。

基本情報

耳鼻咽喉科・頭頸部外科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1316

印刷版ISSN 0914-3491

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