文献詳細
特集 耳鼻咽喉科とチーム医療の実践(2)糖尿病合併者のステロイド療法
文献概要
Ⅰ.はじめに
日本人全体の97%がなんらかの病気を原因として死亡し,その97%のうちの約70%がいわゆる『日本人の三大死因』と呼ばれる癌,心臓病,脳卒中で占められている。糖尿病は,高血圧,肥満,高脂血症とともに『メタボリックシンドローム』と呼ばれ,これら『三大死因』のリスクファクターであることが知られている。なかでも糖尿病,高血圧,高脂血症の3つは,自覚症状が出にくいためサイレントキラー(沈黙の殺人者)とも呼ばれ,放置されることが多く,耳鼻咽喉科に受診あるいは入院した際に初めて,これらに罹患していることが明らかになることも多い。耳鼻咽喉科医が診断ならびに治療対象としている領域には,数多くの感覚受容器が存在する。これら感覚受容器が急激に障害を受けると患者のQOLに多大な障害をきたす可能性がある。突発性難聴や前庭神経炎などがその代表である。また喉頭や喉頭蓋の急性炎症は,上気道の急激な狭窄や閉塞をきたすことがあり,患者を死に至らしめることもある。
これらに対しては,比較的高用量のステロイド(グルココルチコイド)が治療に用いられる。ステロイドが有す強力な抗炎症作用,免疫抑制作用による著明な改善効果が期待できるからである。反面,ステロイドは糖代謝への影響をはじめ,さまざまな副作用を有していることが知られている。本稿では,治療に際して比較的高用量のステロイドが使用されることが多い,突発性難聴や顔面神経麻痺を例に,糖尿病が合併した場合の具体的な対応法について述べる。
日本人全体の97%がなんらかの病気を原因として死亡し,その97%のうちの約70%がいわゆる『日本人の三大死因』と呼ばれる癌,心臓病,脳卒中で占められている。糖尿病は,高血圧,肥満,高脂血症とともに『メタボリックシンドローム』と呼ばれ,これら『三大死因』のリスクファクターであることが知られている。なかでも糖尿病,高血圧,高脂血症の3つは,自覚症状が出にくいためサイレントキラー(沈黙の殺人者)とも呼ばれ,放置されることが多く,耳鼻咽喉科に受診あるいは入院した際に初めて,これらに罹患していることが明らかになることも多い。耳鼻咽喉科医が診断ならびに治療対象としている領域には,数多くの感覚受容器が存在する。これら感覚受容器が急激に障害を受けると患者のQOLに多大な障害をきたす可能性がある。突発性難聴や前庭神経炎などがその代表である。また喉頭や喉頭蓋の急性炎症は,上気道の急激な狭窄や閉塞をきたすことがあり,患者を死に至らしめることもある。
これらに対しては,比較的高用量のステロイド(グルココルチコイド)が治療に用いられる。ステロイドが有す強力な抗炎症作用,免疫抑制作用による著明な改善効果が期待できるからである。反面,ステロイドは糖代謝への影響をはじめ,さまざまな副作用を有していることが知られている。本稿では,治療に際して比較的高用量のステロイドが使用されることが多い,突発性難聴や顔面神経麻痺を例に,糖尿病が合併した場合の具体的な対応法について述べる。
参考文献
1)橋本博史・他:気をつけたいステロイド剤の副作用.臨と研 81:62-66,2002
2)宮村信博・他:糖尿病患者に副腎皮質ステロイドを投与するときの血糖コントロールは? JOHNS 23:343-346,2007
3)小川吉司・他:薬物による耐糖能障害―ステロイドホルモン.日臨 63(増2):324-328,2005
4)三浦順之助:糖尿病神経障害としての顔面神経麻痺と治療時の糖尿病の管理について.Facial N Res Jpn 27:64-66,2007
5)高池浩子:ステロイド使用患者,免疫抑制薬使用患者におけるインスリンの使い方.糖尿診療マスター 4:367-371,2006
6)De Diego JI, et al:Idiopathic facial paralysis:a randomized, prospective, and controlled study using single-dose prednisone versus acyclovir three times daily. Laryngoscope 108:573-575, 1998
7)村上信五・他:特集・耳鼻咽喉科における抗ウイルス剤とステロイド剤の使い方―顔面神経麻痺.MB ENT 3:14-18,2001
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