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文献詳細

雑誌文献

耳鼻咽喉科・頭頸部外科81巻12号

2009年11月発行

文献概要

Current Article

急性めまいの考え方・取り扱い方

著者: 古屋信彦1 高橋克昌1 宮下元明1 高安幸弘1

所属機関: 1群馬大学大学院医学系研究科耳鼻咽喉科・頭頸部外科学

ページ範囲:P.803 - P.811

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Ⅰ はじめに

 めまいは耳鼻咽喉科のみならず各科にまたがる共通した病気であり,特に急性めまいの取り扱いは各科で手をこまねいている領域でもある。受診するほうにおいても『めまいはどこで診てもらえるか?』について迷いがみられる。急性めまいの原因として,①脳梗塞などの脳循環障害,②不整脈,失神発作などの循環器障害,③パニック症候群などの精神症状,④前庭障害に起因する末しょう性めまいなどがみられる。①は脳神経外科,神経内科,②は内科(循環器),③は精神神経科,④は耳鼻咽喉科が主として関与する疾患である(図1)。

 これら複数領域に原因が関与する急性めまいは,患者がどの科を最初に訪れるかによってその取り扱われ方がさまざまである。多くの場合,脳神経外科・神経内科では脳MRI,CTを撮って脳障害の有無を,内科(循環器)では心疾患の有無について判断し,精神神経科では器質的疾患の有無を他科に依頼するなどを行い,自領域に関与しないことを判断して,患者には『頭は問題ありませんね―,心臓は関係していませんね―」と伝えてとりあえず点滴などの診療行為の後に退場してもらうことが多い(図2)。一方,患者は症状に対する恐怖と,原因は何であるかの不安感から他院の門をたたくことになり,『めまい難民』としてdoctor shoppingを繰り返すことになる(図3)。

 めまいの原因疾患は何があるかについてさまざまな報告があり,診療所,中核基幹病院,教育機関によって多少の分布は異なる。しかし,末しょう性めまいであるメニエール病,前庭神経炎,突発性難聴,良性発作性めまい症,Hunt症候群など,めまい症例全体に対する割合はほぼ70~75%になっている(図4)。めまい原因を占める末しょう性めまいを診断するには画像診断法以外に眼振の記録,聴力検査,前庭機能検査などが必要となり,これらの検査はどこの耳鼻咽喉科でも可能な診療行為である。すなわち最終的にめまい疾患全体を診断できる施設,技術をもっているのは耳鼻咽喉科であり,耳鼻咽喉科医が適切に対応しなければ『めまい難民』は増え続けることが予測される。

参考文献

1)Nakashima T, et al:Endolymphatic hydrops revealed by intravenous gadolinium injection in patients with Meniere's disease. Acta Otolaryngol Aug 14:1-6, 2009
2)Epley JM:Thecanalith repositioning procedyre:for treatment of benign paroxysmal positional vertigo. Otolaryngol Head Neck Surg 107:399-404, 1992
3)Higgs WA:Sudden deafness as the presenting symptome of acoustic neurinoma. Arch Otolaryngol 98:73-76, 1973
4)小林 兼・他:耳鼻咽喉科診療所におけるめまい診療の実態.Equilibrium Res 67:108-114,2008
5)宇野敦彦・他:市中病院耳鼻咽喉科における最近のめまい統計.日耳鼻 104:1119-1125,2001

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1316

印刷版ISSN:0914-3491

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