耳鼻咽喉科・頭頸部外科81巻13号

2009年12月発行

特集 耳鼻咽喉科専門研修をはじめる医師へ―知っておきたい臨床解剖

1．外耳道全摘出術

著者： 長谷川信吾¹ 丹生健一¹

所属機関： ¹神戸大学大学院医学研究科外科系講座耳鼻咽喉科頭頸部外科学分野

ページ範囲：P.899 - P.904

Ⅰ．はじめに

　外耳道癌は頭頸部癌のなかで比較的稀な疾患である。その背景に耳かき癖などの外耳道への慢性的な刺激が関与しており，初期には外耳道炎と同様の症状，所見を伴う^1）。このことが患者や医師の疾患の認識不足と重なり，症状が強くなるまで放置していたり，外耳道炎として漫然と治療されていたりして診断されたときには進行した状態であることをしばしば経験する^2）。

　癌が外耳道に限局しているか，外耳道を越えて中耳や耳下腺などへ浸潤しているかで治療の選択や術式が異なる^3～5）。

　本稿では癌が外耳道に限局している場合に行う外耳道全摘出術（外側側頭骨切除術と同義）について述べる。

参考文献

1）丹生健一・他：聴器癌―治療法についての検討．日耳鼻 95：1379-1388，1992

2）長谷川信吾・他：外耳の腫瘤．JOHNS 24：608-612，2008

3）長谷川信吾・他：聴器癌に対する治療法の選択は？―手術治療の立場から．JOHNS 25：1467-1471，2009

4）長谷川信吾・他：聴器癌における放射線治療の役割．耳鼻 53（補1）：S36-S40，2007

5）中川尚志・他：聴器癌の治療選択―手術療法の適応と限界．耳鼻 53（補1）：S41-S47，2007

6）岸本誠司：側頭骨原発悪性腫瘍―治療方針決定までの効果的な方策．頭頸部外科 7：57-62，1997

7）Arriaga M, et al：Staging proposal for external auditory meatus carcinoma based on preoperative clinical examination and computed tomography findings. Ann Otol Rhinol Laryngol 99：714-721, 1990

8）丹生健一・他：症例からみる難治性疾患の診断と治療―2聴器癌．小林俊光・他（編）．国際医学出版，東京，2005，pp1-12

9）丹生健一・他：深部外耳道癌・中耳癌の手術．耳鼻咽喉科・頭頸部外科MOOK，No. 24，野村恭也・他（編）．金原出版，東京，1994，pp126-132

10）大内　仁・他：びまん性外耳道炎．図説臨床耳鼻咽喉科講座1．耳疾患，メジカルビュー社，東京，1983，pp98-99