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文献詳細

雑誌文献

耳鼻咽喉科・頭頸部外科81巻13号

2009年12月発行

原著

耳下腺良性腫瘍の術後顔面神経麻痺に関する検討

著者: 海沼和幸1 塚田景大1 鈴木宏明1 鬼頭良輔1 宇佐美真一1

所属機関: 1信州大学医学部耳鼻咽喉科学教室

ページ範囲:P.949 - P.953

文献概要

Ⅰ.はじめに

 耳下腺腫瘍の根治療法は組織型にかかわらず手術による腫瘍の完全摘出のみである。手術の合併症には顔面神経麻痺,Frey症候群,唾液瘻など多数あるが,患者および術者ともに最も心配するのが顔面神経麻痺と思われる。文献的に,術後の顔面神経麻痺の発生率は5.8~48.2%と報告され1~10),そのほとんどが一過性で,少数ながら永久麻痺の症例もあるとされている。良性腫瘍の手術では顔面神経を保存するのが原則であるが,神経と腫瘍の関係によっては根治性(特に多形腺腫)を優先して,顔面神経を部分的に合併切除しなければならないことがあり,リスクに関する十分なインフォームド・コンセントがますます重要になっている。医事紛争が増加している今日,施設ごとの成績を具体的に把握する必要があると思われる。今回,当科における最近8年間の耳下腺良性腫瘍手術の術後顔面神経麻痺について検討し,文献的考察を加えるとともに,良性腫瘍にもかかわらず顔面神経の切断を余儀なくされた症例を2症例を報告する。

参考文献

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掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1316

印刷版ISSN:0914-3491

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