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雑誌目次

雑誌文献

耳鼻咽喉科・頭頸部外科81巻2号

2009年02月発行

雑誌目次

目でみる耳鼻咽喉科

声帯に発生した紡錘細胞癌症例

著者: 井口広義 ,   天津久郎 ,   岡部宇彦 ,   藤岡孝典 ,   大石賢弥 ,   山根英雄

ページ範囲:P.92 - P.93

Ⅰ.はじめに

 紡錘細胞癌は頭頸部領域において比較的発生頻度の低い癌である。喉頭原発紡錘細胞癌はしばしば肉芽腫などの良性疾患や肉腫との鑑別が問題となり,診断,治療に当たっては腫瘍特性を理解しておく必要がある。今回われわれは臨床的に典型例と思われる喉頭原発紡錘細胞癌症例を経験したので呈示する。

Current Article

中耳手術,術野の外で起こること―私の方法

著者: 須納瀬弘

ページ範囲:P.95 - P.102

Ⅰ はじめに

 現在用いられている中耳手術の術式は,皮膚切開から外耳道や中耳の扱い方に至るまでさまざまあり,それぞれに長所と短所が存在する。術者がそのうち何を重視するかによって,同一の病変であってもアプローチや骨削除の範囲,必要となるテクニックなど,採用される術式の詳細は異なってくる。しかし,手術の安全性や確実性を確保するために守るべき大原則に大きな違いはない。本稿では筆者が日ごろ東京女子医科大学の同僚に伝えている事柄のなかで,手術に有用な事項を記載したい。

原著

顎下腺腫瘍における細胞診の信頼性と術式選択

著者: 中沢裕子 ,   中溝宗永 ,   横島一彦 ,   粉川隆行 ,   酒主敦子 ,   稲井俊太 ,   島田健一 ,   八木聰明

ページ範囲:P.103 - P.107

Ⅰ.はじめに

 顎下腺腫瘍は耳下腺腫瘍よりも発生頻度は低いが,全体に占める悪性腫瘍の割合が高く,その予後も悪いとされている1)。したがって,顎下腺腫瘍における術前の良・悪性の診断には注意を要すると考えられる。

 当科では,顎下腺腫瘍の手術に際して穿刺吸引細胞診(以下,FNAと略す)で良性との結果が得られても,病歴や触診所見,画像診断などで悪性腫瘍が否定できない場合には,顎下部郭清術や所属リンパ節摘出術を行ってきた。しかし顎下部の手術では,顔面神経下顎辺縁枝の麻痺の可能性や整容面での問題から,侵襲の大きい顎下部郭清術を避けたいところである。

 そこで,今回は当院で一次治療を行った顎下腺腫瘍症例の術前FNAに着目し,その結果と最終病理診断の関連性,術式や術後合併症について検討することで術式の選択について考察した。

耳下腺多発性囊胞により診断しえたHIV感染症の1例

著者: 福元晃 ,   池園哲郎

ページ範囲:P.109 - P.112

Ⅰ.はじめに

 耳下腺リンパ上皮性囊胞は比較的稀な疾患であったが,HIV感染の流行とともに米国では劇的に症例が増加したといわれ1~3),耳下腺の囊胞性腫脹を認めた場合はHIV感染症の検索が必要とされる。本疾患はしばしばHIV感染の比較的早い段階で観察され1~4),耳下腺腫脹のみを契機にHIV感染症が診断されることもある4)。しかし本邦での報告はまだ少ない。

 今回われわれは耳下腺の多発性囊胞を契機にHIV感染症を診断しえた症例を経験したので,若干の文献的考察を加えて報告する。

上顎に発生したランゲルハンス細胞組織球症の1症例

著者: 藤森貴世子 ,   都築建三 ,   竹林宏記 ,   小野淳一郎 ,   谷澤隆邦 ,   廣田誠一 ,   松田育雄 ,   岡秀樹 ,   阪上雅史

ページ範囲:P.113 - P.117

Ⅰ.はじめに

 ランゲルハンス細胞組織球症(Langerhans cell histiocytosis:LCH)は,ランゲルハンス細胞が増殖する原因不明の腫瘍性疾患と定義されている。今回は,当科で経験した上顎に発生したLCHの1症例を報告する。

地方中核病院(福島県いわき市)における喉頭癌の臨床的検討

著者: 鈴木淳 ,   舘田勝 ,   長谷川純 ,   嵯峨井俊 ,   片桐克則 ,   石田英一 ,   小林俊光

ページ範囲:P.119 - P.123

Ⅰ.はじめに

 喉頭癌は頭頸部癌のなかで最も頻度が高く,2005年度の統計1)では,年間3,414人が罹患し,1,089人が死亡している。疾患全体の治療成績は比較的良好とされるが,進行癌の予後はいまだに不良であり,解決すべき課題は多い。いわき市立総合磐城共立病院は福島県浜通り地区の中核病院であり,近隣に頭頸部癌を扱う専門施設がないため,癌治療の拠点としての役割も担っている。今回われわれは,1998年からの9年間に,同病院で一次加療を行った喉頭癌の症例の臨床的検討を行ったので,若干の文献的考察を加えて報告する。

当科における平成18(2006)年度救急診療状況

著者: 小倉真理子 ,   大石直樹 ,   坂本耕二 ,   冨田俊樹 ,   齊藤秀行 ,   小川郁

ページ範囲:P.125 - P.131

Ⅰ.はじめに

 近年,救急搬送による受診患者の増加が社会問題化しており,東京都では2007年6月1日より救急搬送のトリアージが導入された。また救急車の適正使用を呼びかけるポスターが貼られたり,インターネットでの夜間診療案内を行うなど,救急車の利用率を抑えるためのさまざまな試みがなされている。

 当院は第3次救急医療機関に指定されているが,そのなかで当科は1次から3次救急までのすべての救急患者に対応しているのが現状であり,東京都内で耳鼻咽喉科救急患者の受け入れ数が多い施設の1つである。今回われわれは平成18(2006)年度の当科での救急車受け入れ状況について検討し,併せて新しく導入されたトリアージの問題点について考察したので報告する。

高Ca血症をきたさなかった巨大上皮小体癌の1例

著者: 蠣崎文彦 ,   本間明宏 ,   畠山博充 ,   前田昌紀 ,   福田諭

ページ範囲:P.133 - P.136

Ⅰ.はじめに

 上皮小体癌は全悪性腫瘍のうち0.005%と稀な疾患であり,米国における罹患率は人口100,000人当たり0.015人で,有病率は0.005%と推定されている1~5)。原発性上皮小体機能亢進症のなかでの割合は0.6~4%程度である6)。一般に腺腫や過形成と比較して大きいものが多いが,50mmを超えるものは10%程度で,血清Ca値は14mg/dl以上と著明な高値を示す場合が多い7~8)

 今回われわれは血清Ca値がほぼ正常上限の巨大な上皮小体癌を経験したので報告する。

ナビゲーションシステムを用いて摘出した眼窩内散弾異物の1症例

著者: 小池修治 ,   那須隆 ,   阿部靖弘 ,   伊藤吏 ,   青柳優 ,   高村浩

ページ範囲:P.137 - P.141

Ⅰ.はじめに

 わが国での耳鼻咽喉・頭頸部領域における銃弾異物の発生数は,銃砲刀剣類所持等取締法により銃砲刀剣類の所持や使用が厳しく制限されているためきわめて少なく,われわれの渉猟し得た限り頭蓋内を除いた報告例は,1983年以降17例にすぎない1~9)。今回われわれは,散弾銃の流れ弾による眼窩内異物をナビゲーションシステムを使用し,鼻内視鏡下に摘出した症例を経験したので報告する。

外切開または口蓋扁桃摘出術を要した咽頭腔外異物2例

著者: 八木沼裕司 ,   東海林史

ページ範囲:P.143 - P.146

Ⅰ.はじめに

 咽頭異物は日常診療においてしばしば遭遇する疾患であるが,異物が完全に咽頭腔外に脱出してしまうと異物の発見が困難になり,後日重大な合併症を招くことがある。今回われわれは,稀な方向に刺入脱出したため診断に難渋し,外科的手技により摘出した2症例を経験したので文献的考察とともに報告する。

シリーズ 専門医試験への対応

―3.鼻症状を主訴とする疾患―1)アレルギー性鼻炎(診断,治療,喘息)

著者: 野中学

ページ範囲:P.147 - P.153

Ⅰ はじめに

 アレルギー性鼻炎は1965年後半から増加しはじめ,1970年に入り急増し,その後も増加を続けている。最近の増加はスギ花粉症で顕著である。本稿ではその診断と治療,喘息との関係などを中心に述べる。

―3.鼻症状を主訴とする疾患―2)副鼻腔悪性腫瘍

著者: 西野宏

ページ範囲:P.155 - P.160

Ⅰ 診察

 副鼻腔悪性腫瘍の頻度は低い。2003年頭頸部癌登録において上顎洞悪性腫瘍は117例であり,頭頸部癌の3.6%を占めるのみであった1)。その頻度の低くさも手伝って,診断されるまでの経過が長いことも珍しくない。

 副鼻腔悪性腫瘍を診断するには,まずその存在を疑わなければならない。そして局所所見は,ただ眺めているだけではとれない。腫瘍の存在が疑われる自覚症状がある場合には(表1),腫瘍の存在が疑われる所見の有無に注意を払い診察する(表2)。しかしどんなに注意しても,鼻茸とamelanotic melanomaは区別がつかず,手術時の組織検査で初めて診断がつくことがある。

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あとがき

著者: 竹中洋

ページ範囲:P.166 - P.166

 今年の冬はことのほか暖かく,京都市内では紅葉がまだ残っています。年の瀬に1年を振り返ってみますと,年を跨いだ年金問題は終息せず,医療費についての国民的合意形成はされないまま,医師不足に焦点が当たってきました。後期高齢者医療制度は風前の灯となり,財源不足は解決されないまま現在進行中です。もちろんサブプライムローンに端を発した金融不況も徐々に実体経済に影響を及ぼし始めました。

 しかし,国民の意思の発露は政党サイドに握られており,消化不良のような毎日が続いています。一方,事の発端となったアメリカ合衆国では,大統領選挙が行われ,次期大統領は国勢や民意のあるところを調べながら政権を作ろうとしているようにみえます。年余にわたる大統領選挙の流れは無駄のようにみえながら,求心力を形成する当たり,国体の違いがみえ隠れして面白い限りです。

基本情報

耳鼻咽喉科・頭頸部外科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1316

印刷版ISSN 0914-3491

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