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特集 診療所で必要な救急処置
文献概要
Ⅰ.はじめに
耳鼻咽喉科が外科系診療科であるがゆえに日常の診療で出血を伴う疾患を取り扱う場面は少なくない。多くは軽度の出血であるが,時に大量出血や止血に難渋する場面に遭遇する。しかも,マンパワー,医療設備に制約のある診療所では,これら出血患者への対応に苦慮することも少なくない。筆者のこれまでの大学病院,がんセンター,市中病院の勤務の後,現在開業医である自らの経験より診療所での出血を伴う疾患への対応について述べる。
耳鼻咽喉科診療所での出血への対応範囲は各診療所の医療設備および医師の技量に依存するところが大きく,画一的に決定することはできない。
当院は,耳鼻咽喉科用単純X線装置,X線CTを有するが,血液・細菌検査は外部委託であり,自院において血算などの迅速検査はできない。日帰り手術用の手術室があり,自動血圧計,心電計,パルスオキシメーターの生体監視装置を有し,酸素吸入が可能であるが,全身麻酔器は所有してない。また,入院設備をもたない一般的無床診療所である。実際,日本における大多数の耳鼻咽喉科診療所は無床診療所であり,本稿では無床診療所における出血への対応を当院での経験を中心に述べる。
診療所を受診する出血患者の大多数は軽・中等症症例であるが,稀に救急病院に耳鼻咽喉科専門医が不在であるなどの理由から,近隣の耳鼻咽喉科受診を指示されて思いがけない重症例が来院することがある。したがって,耳鼻咽喉科診療所の医師には,自院での対処可能な状態か否かを迅速かつ正確に把握して2次医療機関への転送時期を誤らないことが求められる。
耳鼻咽喉科が外科系診療科であるがゆえに日常の診療で出血を伴う疾患を取り扱う場面は少なくない。多くは軽度の出血であるが,時に大量出血や止血に難渋する場面に遭遇する。しかも,マンパワー,医療設備に制約のある診療所では,これら出血患者への対応に苦慮することも少なくない。筆者のこれまでの大学病院,がんセンター,市中病院の勤務の後,現在開業医である自らの経験より診療所での出血を伴う疾患への対応について述べる。
耳鼻咽喉科診療所での出血への対応範囲は各診療所の医療設備および医師の技量に依存するところが大きく,画一的に決定することはできない。
当院は,耳鼻咽喉科用単純X線装置,X線CTを有するが,血液・細菌検査は外部委託であり,自院において血算などの迅速検査はできない。日帰り手術用の手術室があり,自動血圧計,心電計,パルスオキシメーターの生体監視装置を有し,酸素吸入が可能であるが,全身麻酔器は所有してない。また,入院設備をもたない一般的無床診療所である。実際,日本における大多数の耳鼻咽喉科診療所は無床診療所であり,本稿では無床診療所における出血への対応を当院での経験を中心に述べる。
診療所を受診する出血患者の大多数は軽・中等症症例であるが,稀に救急病院に耳鼻咽喉科専門医が不在であるなどの理由から,近隣の耳鼻咽喉科受診を指示されて思いがけない重症例が来院することがある。したがって,耳鼻咽喉科診療所の医師には,自院での対処可能な状態か否かを迅速かつ正確に把握して2次医療機関への転送時期を誤らないことが求められる。
参考文献
1)工藤典代:小児の鼻出血への対応.JOHNS 21:1029-1032,2005
2)福田正弘:開業医としての対応と処置.JOHNS 21:1007-1009,2005
3)Cassisi N, et al:Changes in arterial oxygen tension and pulmonary mechanical with the use of posterior nasal packing. Laryngoscope 81:1261-1266, 1971
4)宮島逸郎:鼻腔後部出血への対応.JOHNS 21:1015-1019,2005
5)藤吉達也:扁摘の合併症とその対応.MB ENT 39:61-66,2004
6)木戸訓一・他:救急症例の緊急度判定と治療方針.耳鼻咽喉科救急療法ハンドブック,竹山 勇・岡本 健(編).南江堂,東京,1990,pp6-18
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