文献詳細
文献概要
原著
Image-guided frontal trephinationで治療した前頭洞囊胞の2症例
著者: 飯塚さとし1 中丸裕爾1 瀧重成1 前田昌紀1 福田諭1
所属機関: 1北海道大学大学院医学研究科耳鼻咽喉科・頭頸部外科学分野
ページ範囲:P.315 - P.319
文献購入ページに移動前頭洞囊胞開放の術式にはさまざまな方法がある。代表的なものとして鼻内からの開放1),鼻外切開による開放2),前頭洞内に脂肪組織を充塡する方法3),さらには開頭して前頭洞を頭蓋化する方法4)などがある。おのおのの手術法に利点,欠点があり,いまだ標準治療が確立されていない。その原因として鼻前頭洞管開口部に解剖的変異が多いこと,脳,眼窩など危険部位が隣接しているため開放可能な範囲に制限があることなどが挙げられる5)。仮に開放できても,鼻内からの洗浄では創部に付着した血餅を除去しづらく,開放部位がすぐに閉鎖して再発を生じやすい。近年,内視鏡下副鼻腔手術の発展により,内視鏡下に両側の前頭洞を最大限に開放する手術が開発されているが,嗅覚障害や髄液鼻漏などの合併症の問題やアジア系民族では前頭洞の前後径が短く6),開放できる前頭洞の広さに限界があり再発が多いなどの問題点が指摘されている7)。
Frontal trephinationは鼻前頭洞管の位置を同定するための手術器具である(図1)8,9)。眉毛部より経皮的に前頭洞に極小の鉄製パイプを留置し,そのパイプから洗浄液を流すことで鼻前頭洞管の鼻腔への自然な交通経路が判明する。この器具の最大の利点は判明した経路を拡大することにより,鼻前頭洞管周囲粘膜を保存しながら,前頭洞を開放できる点にある。しかし難点としてfrontal trephinationは留置の際に前頭洞ではなく,頭蓋底や眼窩に留置してしまう危険性がある。そのためにナビゲーションガイド(image-guide)下にfrontal trephinationを留置することが推奨されている10)。
今回,われわれはナビゲーション下にfrontal trephinationを用いて安全かつ簡便に鼻前頭洞囊胞を開放し,さらにfrontal trephinationを術後,数日間留置し,前頭洞内を洗浄することで,囊胞開放部の血餅を除去し,再発を防止できた2症例を経験したので報告する。
参考文献
掲載誌情報