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あとがき
著者: 八木聰明
所属機関:
ページ範囲:P.332 - P.332
文献購入ページに移動 2009年2月18日に厚生労働省の『臨床研修制度のあり方等に関する検討会』から『意見のとりまとめの概要』が発表されました。編集子は,医育機関に所属するものとして,この委員会の動向には少なからず注目しつつ経過をみてきました。2009年2月2日に行われた第5回検討会で基本的な考え方が討議され,その内容が開示されており,『意見のとりまとめの概要』が出される前にはその内容を把握していました。さて,その概要をみると,医育機関の担当者としては,当然と感ずる部分が多く,ほっとしているところもあります。見直しの方向として研修プログラムの弾力化という部分がありますが,そのなかで必修診療科は内科(6か月以上),救急(3か月以上)にとどめるとあり,2年目から将来のキャリアに応じた研修も可能とあります。また,第5回検討会では,臨床研修1年目の最初に希望する診療科の研修を実施し,研修期間は3か月とする,という部分もあります。これらは,編集子の教室で,新しい研修制度が導入される前に行っていた,入局後2年間に,最初6か月間,耳鼻咽喉科・頭頸部外科で研修を行い,その後,内科や救急,麻酔科などを9か月間かけてローテートする方式とほとんど変わりません。現行の研修制度では,研修医は根無し草のように,また医学部学生の延長のように,目的意識の薄いなかで研修を行っている実態があります。これらが,改善されることを願わずにはいられません。しかし,この『とりまとめ』に対して,研修現場からの反対が多いといくつかの新聞が取り上げています。その反対者(団体)をよくみると,医育機関以外の病院代表が多数を占めていることがわかります。新臨床研修制度で,以前は高給を出さないと来なかった若手の医師が,それと比べれば安い給与で来てくれるメリットがなくなるからかも知れません。うがった考えでしょうか。しかし,この制度が作った医療崩壊につながる医師の研修に対する考え方の変化は,おそらく以前の状態に戻ることはないでしょう。耳鼻咽喉科・頭頸部外科の教育を担当する者として,これから10年あるいは15年後に次代を教育すべき耳鼻咽喉科・頭頸部外科医が育っているかと問われると,以前のように答えられない状態です。今回の研修制度の見直しが,将来の耳鼻咽喉科・頭頸部外科の維持・発展に多少でも明るい光を投げかけてくれることを望まずにはいられません。
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