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文献詳細

雑誌文献

耳鼻咽喉科・頭頸部外科81巻5号

2009年04月発行

文献概要

特集 頭頸部再建外科―日常臨床から理論まで Ⅲ.再建部位による再建材料の選択と再建方法

2.上顎の再建

著者: 兵藤伊久夫1 長谷川泰久2

所属機関: 1愛知県がんセンター中央病院形成外科 2愛知県がんセンター中央病院頭頸部外科

ページ範囲:P.79 - P.85

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Ⅰ はじめに

 上顎癌は,鼻・副鼻腔癌のなかで最も発生頻度が高く,組織学的には扁平上皮癌が最も多い1)。①上顎癌の手術法は,『頭頸部癌取り扱い規約』によれば上顎部分切除術,上顎全摘術,拡大上顎全摘術,頭蓋底郭清術と分類・定義されている2)。②これらの手術により,手術侵襲の程度のよって異なるものの咬合や嚥下,発声といった機能が障害される。また,顔面の変形といった整容面に関する不利益が生じることがある。

 上顎切除後の機能や整容面に関する障害を改善する方法として,顎義歯などの補綴によって改善を図る方法,もしくは皮弁による再建方法がある。顎義歯を用いた補綴と皮弁を用いた再建方法にはそれぞれ利点,欠点があり個々の症例によって選択されており,場合によっては両方を組み合わせて行うこともある。

 顎義歯による補綴は,一般的に皮弁を用いた皮弁採取部を要しないなど再建方法に比べて低侵襲である。しかし一方で顎義歯を用いる場合,ある程度の硬組織が必要であるため,術式によっては装着が困難な症例があり,咬筋群などを切除される場合,開口障害が生じる,陥凹変形が目立つ症例があるといった機能改善の限界がある。

 皮弁を用いた再建方法には,主に有茎皮弁を用いる方法と遊離皮弁を用いる方法があり,切除部位や範囲によって適宜施行される。帽状腱膜弁などの有茎皮弁はその安定した血行により確実な創閉鎖が期待できるが,再建範囲が比較的小範囲にとどまる。遊離皮弁による再建は,拡大上顎全摘術や頭蓋底郭清術などにより生じた広範な欠損に対して有用である。皮弁による確実な創閉鎖を行うのと同時に口蓋閉鎖を行うことが可能で,機能面と陥凹変形などの整容面に関する再建を行うことができる。

 今回当院で行われている上顎切除後の皮弁再建について検討した。

参考文献

1)頭頸部悪性腫瘍全国登録新規症例登録 基本情報集計結果(2001年度初診症例).日本頭頸部癌学会,悪性腫瘍登録委員会
2)日本頭頸部癌学会編:頭頸部癌取扱い規約.金原出版,東京,2005
3)Nakayama B, et al:Successful upper alveolar reconstruction for gingival cancer using a fibular osteoadipofascial flap without osseointegrated implants. Ann Plast Surg 54:323-327, 2005
4)Clark JR, et al:Scapular angle osteomyogenous flap in postmaxillectomy reconstruction:defect, reconstruction, shoulder function, and harvest technique. Head Neck 30:10-20, 2008
5)Kosutic D, et al:Latissimus dorsi-scapula free flap for reconstruction of defects following radical maxillectomy with orbital exenteration. J Plast Reconstr Aesthet Surg 61:620-627, 2008
6)河田 了・他:有茎皮弁採取のコツ3―広背筋皮弁.JOHNS 13:1728-1732,1997
7)Nakayama B, et al:Reconstruction using a three-dimensional orbitozygomatic skeletal model of titanium mesh plate and soft-tissue free flap transfer following total maxillectomy. Plast Reconstr Surg 114:631-639, 2004
8)兵藤伊久夫・他:当院における悪性腫瘍後の上顎再建.耳鼻 52(補3) S220-223 2006
9)Sakuraba M, et al:Simple maxillary reconstruction using free tissue transfer and prostheses. Plast Reconstr Surg 111:594-598, 2003
10)Yamamoto Y, et al:Role of buttress reconstruction in zygomaticomaxillary skeletal defects. Plast Reconstr Surg 101:943-950, 1998

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1316

印刷版ISSN:0914-3491

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