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特集 頭頸部再建外科―日常臨床から理論まで Ⅲ.再建部位による再建材料の選択と再建方法
2.上顎の再建
著者: 兵藤伊久夫1 長谷川泰久2
所属機関: 1愛知県がんセンター中央病院形成外科 2愛知県がんセンター中央病院頭頸部外科
ページ範囲:P.79 - P.85
文献購入ページに移動上顎癌は,鼻・副鼻腔癌のなかで最も発生頻度が高く,組織学的には扁平上皮癌が最も多い1)。①上顎癌の手術法は,『頭頸部癌取り扱い規約』によれば上顎部分切除術,上顎全摘術,拡大上顎全摘術,頭蓋底郭清術と分類・定義されている2)。②これらの手術により,手術侵襲の程度のよって異なるものの咬合や嚥下,発声といった機能が障害される。また,顔面の変形といった整容面に関する不利益が生じることがある。
上顎切除後の機能や整容面に関する障害を改善する方法として,顎義歯などの補綴によって改善を図る方法,もしくは皮弁による再建方法がある。顎義歯を用いた補綴と皮弁を用いた再建方法にはそれぞれ利点,欠点があり個々の症例によって選択されており,場合によっては両方を組み合わせて行うこともある。
顎義歯による補綴は,一般的に皮弁を用いた皮弁採取部を要しないなど再建方法に比べて低侵襲である。しかし一方で顎義歯を用いる場合,ある程度の硬組織が必要であるため,術式によっては装着が困難な症例があり,咬筋群などを切除される場合,開口障害が生じる,陥凹変形が目立つ症例があるといった機能改善の限界がある。
皮弁を用いた再建方法には,主に有茎皮弁を用いる方法と遊離皮弁を用いる方法があり,切除部位や範囲によって適宜施行される。帽状腱膜弁などの有茎皮弁はその安定した血行により確実な創閉鎖が期待できるが,再建範囲が比較的小範囲にとどまる。遊離皮弁による再建は,拡大上顎全摘術や頭蓋底郭清術などにより生じた広範な欠損に対して有用である。皮弁による確実な創閉鎖を行うのと同時に口蓋閉鎖を行うことが可能で,機能面と陥凹変形などの整容面に関する再建を行うことができる。
今回当院で行われている上顎切除後の皮弁再建について検討した。
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