耳鼻咽喉科・頭頸部外科81巻5号

2009年04月発行

特集 頭頸部再建外科―日常臨床から理論まで

Ⅴ．日常の診療で具体的に困ったときの形成手術

2．皮膚の処置―カバーリング方法など

著者： 河田了¹

所属機関： ¹大阪医科大学耳鼻咽喉科学教室

ページ範囲：P.177 - P.180

文献概要

Ⅰ　はじめに

　耳鼻咽喉科・頭頸部外科の手術において，頸部以外の皮膚を利用してカバーリングすることが必要となる場合がある。再手術や頸部に放射線照射をした症例などがそれに当たる。そのような症例は，頸部以外からの血流の良い皮弁を用いるのが基本である。現在遊離皮弁が頭頸部領域の再建術の主流であるが，再手術の場合は，適当な吻合血管がない場合も少なくない。有茎皮弁である大胸筋皮弁や広背筋皮弁は大きな皮膚を採取できるため，大きな欠損に対して非常に有用な方法であるが，手術の侵襲がやや大きいことが問題点である。

　そこで比較的小さな欠損に対して，われわれは前胸壁皮弁を好んで用いている。前胸壁から頸部に移動させるので，その距離には制限があるものの，手技が簡単で侵襲も少ないという利点がある。特に術後瘻孔閉鎖，気管孔閉鎖に有用な皮弁であり，本稿ではそれらの手技を中心に紹介する。

参考文献

1）Murakami Y, et al：Repair of salivary fistula after reconstruction of pharyngoesophagus. Arch Otolaryngol Head Neck Surg 114：770-774, 1988

2）今出祐二：有茎皮弁採取のコツ―前胸壁皮弁．JOHNS 13：1718-1722，1997

3）Kraus DH, et al：Salvage laryngectomy for unsuccessful larynx preservation therapy. Ann Otol Rhinol Laryngol 104：936-940, 1995

4）村上　泰：術後瘻孔閉鎖手術―食道系瘻孔マネージメントの実技．JOHNS 8：1817-1821，1992

5）村上　泰：喉頭全摘後の咽頭皮膚瘻とその修復再建術．JOHNS 12：525-531，1996