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雑誌目次

雑誌文献

耳鼻咽喉科・頭頸部外科81巻9号

2009年08月発行

雑誌目次

目でみる耳鼻咽喉科

Glosso-valleculo-epiglottectomyを施行した舌根進行癌の1症例

著者: 横島一彦 ,   中溝宗永 ,   稲井俊太 ,   酒主敦子 ,   三枝英人 ,   島田健一 ,   八木聰明

ページ範囲:P.594 - P.596

Ⅰ.はじめに

 進行舌根癌の治療法の選択には論議がある。代表的な術式である舌喉頭全摘は,術後の機能喪失が甚大であることが問題である。一方,化学放射線治療は機能温存の点で注目されているが,その治療結果が明らかになっていない。そこで,機能温存を目ざす手術の1つであるglosso-valleculo-epiglottectomyを施行した舌根進行癌の1症例を呈示し,この手術の工夫と有用性について述べたい。

原著

明らかな外傷の既往なく発症した破傷風の1例

著者: 小野倫嗣 ,   横井秀格 ,   田崎京子 ,   成井裕弥 ,   井下綾子 ,   大井寛美 ,   芳川洋 ,   池田勝久

ページ範囲:P.601 - P.603

Ⅰ.はじめに

 破傷風は,外傷により感染し,破傷風菌(Clostridium tetani)が産生する神経毒素により開口障害,呼吸困難,後弓反張などを引き起こすが,治療が遅れると致命率が高い病態である。予防接種の普及により,発生率および死亡率が低下しているが,現在でも年間100人程度の発症がある1)。開口障害を主訴に受診する患者は耳鼻咽喉科を受診する可能性があり,注意を要する。

 今回われわれは明らかな外傷の既往なく発症した破傷風症例を経験したので文献的考察を加えて報告する。

彎曲型咽喉頭直達鏡の応用―下咽頭梨状窩瘻への使用経験

著者: 岡田信也 ,   酒井昭博 ,   大貫純一 ,   大上研二 ,   飯田政弘

ページ範囲:P.605 - P.608

Ⅰ.はじめに

 彎曲型咽喉頭直達鏡は佐藤ら1)により2004年に開発され,近年,下咽頭表在癌に対する内視鏡的咽喉頭手術の際に用いられている(図1)。特に既存の直達喉頭鏡では明視することが困難であった下咽頭輪状後部,後壁に存在する表在癌の治療に有用である。今回われわれは下咽頭の非腫瘍性疾患である下咽頭梨状窩瘻に対して彎曲型咽喉頭直達鏡を使用し,瘻孔の確認に有用であったので,文献的考察を加えて報告する。

脳腫瘍を合併したベーチェット症例

著者: 金川英寿 ,   菅原一真 ,   竹本剛 ,   橋本誠 ,   下郡博明 ,   古川又一 ,   山下裕司

ページ範囲:P.609 - P.612

Ⅰ.はじめに

 ベーチェット病は再発性の口腔内アフタ性潰瘍,結節性紅斑様皮疹,ぶどう膜炎,陰部潰瘍を4大主症状とする全身性の難治性疾患である。口腔粘膜病変の存在により,耳鼻咽喉科医がベーチェット病患者を診察する機会は多い。中枢神経障害を合併したベーチェット病(神経ベーチェット病)はベーチェット病の約10%に認められる1,2)。ベーチェット病に感音難聴やめまいを伴う報告は散見され3,4),脳腫瘍や内耳障害の鑑別が重要になる。今回,小脳橋角部に腫瘍が認められたが,ベーチェット病があり第8脳神経以外の脳神経学的所見が認められなかったために腫瘍の発見が遅れた症例を経験したので若干の文献的考察を加えて報告する。

副鼻腔炎より波及した硬膜下膿瘍の1例

著者: 杉本一郎 ,   佐々木淳 ,   勇木清 ,   谷口栄治 ,   宮脇浩紀

ページ範囲:P.613 - P.616

Ⅰ.はじめに

 副鼻腔炎による頭蓋内合併症は,抗菌薬や画像診断の発達とともに減少しているが,最近でも重篤な経過をたどる症例が報告されており1),注意を要し,迅速な対応が求められる。今回われわれは副鼻腔炎から波及した硬膜下膿瘍の1例を経験したので報告する。

原発性上皮小体機能亢進症術後に偽痛風発作を生じた1例

著者: 鈴木政美 ,   小村豪 ,   福岡修

ページ範囲:P.617 - P.620

Ⅰ.はじめに

 原発性上皮小体機能亢進症の外科的治療は耳鼻咽喉科・頭頸部外科でも行われるが,術後合併症の偽痛風発作に関する報告はわが国では内分泌外科を中心にされており1,2),耳鼻咽喉科・頭頸部外科で広く認識されているとは限らない。

 今回,原発性上皮小体機能亢進症術後に偽痛風発作を生じた1例を経験したので,文献的考察を加えて報告する。

当科における顎下腺腫瘍33症例の臨床統計

著者: 上田大 ,   大島怜子 ,   石坂成康 ,   三牧三郎

ページ範囲:P.621 - P.625

Ⅰ.はじめに

 唾液腺腫瘍は頭頸部腫瘍の約5%を占める1)といわれている。その中で,耳下腺腫瘍が最多であり,顎下腺腫瘍は耳下腺腫瘍の約20%程度である2)。今回われわれは,顎下腺腫瘍33症例に対して,臨床統計学的検討を行ったので報告する。

緊急入院を要しためまい症例122例の検討

著者: 竹村考史 ,   羽馬宏一 ,   門脇嘉宣 ,   緒方憲久

ページ範囲:P.627 - P.631

Ⅰ.はじめに

 日常診療で,めまいを主訴とする症例を診察する機会は多い。その原因は多彩で,受診する科も耳鼻咽喉科,内科,脳神経外科,救急部とさまざまであり,病態の把握は困難である。時に生命に影響する重篤な中枢性疾患に遭遇することもある。今回,当院耳鼻咽喉科に緊急入院しためまい症例について検討したので報告する。

喉頭原発の混合型小細胞癌例

著者: 中出多子 ,   岩井大 ,   金子敏彦 ,   河本光平 ,   星野勝一 ,   稲葉宗夫 ,   清水俊樹

ページ範囲:P.633 - P.637

Ⅰ.はじめに

 喉頭癌の99%は扁平上皮癌であるが1),喉頭は肺外小細胞癌の好発臓器でもある。ただしこの頻度は喉頭癌の0.3%に満たず2),過去30年で国内外において喉頭小細胞癌の報告は検索した限り160例である1)。扁平上皮癌を含めた非小細胞癌と小細胞癌が混在する混合型小細胞癌はさらに稀で,これまでの報告は16例である2)(表1)。症例数がきわめて少ないため,いまだ標準的な治療法も確立されていない。腫瘍は一般に,高度に進行性で早期に遠隔転移する特徴を有し予後不良であり,多くが2年以内に死亡するとされている3)

 今回われわれは,左声門上部に発生した混合型小細胞癌を経験したので,文献的考察を加えて報告する。

当科における鼓膜形成術の治療成績

著者: 竹村考史 ,   羽馬宏一 ,   門脇嘉宣 ,   緒方憲久

ページ範囲:P.639 - P.642

Ⅰ.はじめに

 当施設では成功率の高い耳後部切開による鼓膜形成術(従来法)を行っている。また最近では,1989年の湯浅ら1)の報告以来急速に普及し,その適応も拡大している接着法2~5)による鼓膜形成術も,症例によっては行っている。今回,その現状と治療成績について報告する。

シリーズ 専門医試験への対応

―5.横断的問題―1)知っておきたいリハビリテーションの知識

著者: 伊藤裕之

ページ範囲:P.643 - P.646

Ⅰ はじめに

 『Oxford English Dictionary(第2版)』によると1),rehabilitationという言葉は,16世紀には,身分や法的権利,宗教上の特権などを失った者を元の状態に戻すこと,あるいは,元の状態に戻す活動の結果を意味するものであった。1940年代には,障害者や服役者などの人を適切な訓練によりある正常な生活に戻すことや工業や経済の復興にもrehabilitationという言葉が使われるようになった。Rehabilitationが失われた機能障害の再獲得の意味をもつようになったのは1930年代後半のことと推測される。本稿では,耳鼻咽喉科専門医が知っておきたい最低限の事項について述べたい。

書評

新 ことばの科学入門 第2版

著者: 澤島政行

ページ範囲:P.632 - P.632

音声言語病理学を学ぶ人のために

 本書は,2005年に出版された同名の初版本の第2版である。その原本(英語)は,1980年に出版され,1984年にその第2版が今回と同じ訳者で出版されている。通算では本書は第5版となる。本書は,米国の大学学部生を対象に書かれた音声科学の入門書である。著者は米国ハスキンス研究所の研究員で,訳者および評者とは知り合いの仲である。2005年の改訂で従来の著者に加えて,若手のL. J. Raphaelが加わり,内容の整理,補足がなされている。

 今回の第2版は,基本的な内容に変更はないが,章立てにかなりの工夫をこらし,学生に理解しやすく,興味をもたせるような配慮が行われている。本書の構成は,第Ⅰ部序論(イントロダクション),第Ⅱ部音響学,第Ⅲ部音声生成,第Ⅳ部音声知覚,第Ⅴ部音声研究機器となり,それぞれの中で,比較的細かい章立ての下に内容が記述され,全体で13章となっている。全体で7章立ての初版と目次を比べてみると,内容的には大差はないが,第2版のほうが章立てがすっきりして,各章の中身が明瞭でわかりやすくなっている。

頭蓋顎顔面外科―術式選択とその実際

著者: 鳥飼勝行

ページ範囲:P.648 - P.648

頭蓋顎顔面外科のバイブル

 本書は,日本におけるcraniofacial surgeryのパイオニアであり,口蓋形成術の上石法で知られる著者による頭蓋顎顔面外科のテキストである。本書の構成は『先天異常』『発育異常』『外傷』『腫瘍』『美容外科』の5章から成る。本書では,医師と歯科医師のダブルライセンスをもつ著者の秘伝を含めた,頭蓋顎顔面外科の全範囲を,かゆいところに手が届くていねいさと,著者独特の明快かつシャープな講義をもって学ぶことができる。

 著者は横浜市立大学および北里大学を通じての私の師であり,長年にわたり暖かいご指導をいただいてきた。よく学会発表の結びなどで『今後さらに研究を重ねて…』とか『今後の研究が待たれるところである…』などのフレーズを耳にすることがあるが,そんなときに著者はよく『そんなことはこの場で聞きたくないよ』とおっしゃっていた。妥協を許さず,その場その場で最高の結果を出すよう全力を尽くされる著者らしいお言葉である。

鏡下囁語

メニエール病をシェークスピアと人間行動から読み解く

著者: 高橋正紘

ページ範囲:P.649 - P.653

Ⅰ.メニエール病患者の実態とスモン病の教訓

 メニエール病の病因はいまだに解明されず,治療方法も確立していない。以前,メニエール病患者と地域住民にアンケート調査を実施し,性,年齢の対応した185名の両群間で比較したことがある。日常の過ごし方,ストレス源,気分発散手段に大きな違いはなかったが,行動特性(行動の癖)の項目で大きな違いがみられた。親や上司の期待に沿う,嫌なことも我慢する,徹底的にやる,熱中しやすい,事前にいろいろ心配しやすい,イライラしたり怒りやすいが,メニエール病患者群で地域住民に比べ男女ともに著しく強かった(統計学的に危険率0.1%で有意)1)。メニエール病患者はなぜこのような行動をとるのか,を考えてみたい。

 筆者はメニエール病の調査・診療を目的に,2006年5月に週2回のめまい専門診療を開始し,丸3年が経過した2)。この間に受診したメニエール病患者304名の発症誘因をみると,記載された247名で多忙44.9%,職場ストレス19.4%,家庭トラブル17.8%,家族病気・死10.1%,睡眠不良・不足8.5%で,以下,介護,育児,子ども受験,隣人トラブル,孫の世話,友人トラブル,不明,子どもと同居,子ども家庭のトラブルであった(重複記入あり)。これらは疲労,我慢,心労を強いる要因である。仕事熱心で,周到に準備し,嫌なことを我慢し,周囲の期待に沿う人々が,これらの状況に置かれ発症する―患者像―が浮かび上がる。

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あとがき

著者: 竹中洋

ページ範囲:P.660 - P.660

 全く私ごとですが,6月1日から大阪医科大学の学長に就任致しました。学校法人の定めにより,学長専職となります。耳鼻咽喉科学教室の教授としての14年間,あるいは耳鼻咽喉科医としての35年間を振り返れば,将に『光陰矢の如し』,『少年老いやすく,学なり難し』が実感です。

 耳鼻咽喉科学の臨床では,鼻科学の手術は大きく変貌しましたが,副損傷は増加しているとの報告があります。具体的には副鼻腔構造についての手術解剖習得が技術と並行していないのか心配です。アレルギー性鼻炎の一般的治療は進化したようにみえますが,患者の満足度は決して高くありません。また,20年前の課題であった根治療法はいまだに課題であります。明らかに上顎癌は減りましたが,inverted papillomaからの悪性化は頻度が高くなったように思います。顔面外傷が減少したのは乗用車の改良や乗車マナーの徹底からでしょうか? アデノイドや口蓋扁桃肥大の小児が増えてきているように思います。

基本情報

耳鼻咽喉科・頭頸部外科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1316

印刷版ISSN 0914-3491

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