原著
反復性鼻出血に対する内視鏡下蝶口蓋動脈結紮術施行例の検討
著者:
鈴木正宣
,
大谷文雄
,
松村道哉
,
蠣崎文彦
,
森田真也
,
佐藤宏紀
,
中丸裕爾
,
古田康
ページ範囲:P.67 - P.72
Ⅰ はじめに
鼻出血は,耳鼻咽喉科の日常診療においてしばしばみられる疾患の1つである。入院を要する鼻出血には,鼻内ガーゼによるパッキングやバルーン留置などの保存的療法が施行されるが,その止血率は約301)~502)%と報告されており,確実な止血方法とはいえない。また,これらは疼痛や不快感を伴う処置であり,患者は鼻出血に対して大きな不安,恐怖を抱くこととなる。
反復性難治性の鼻出血に対して,従来より,経上顎洞顎動脈結紮術3)や血管内カテーテルを用いた動脈塞栓術4)が行われてきた。しかし,経上顎洞顎動脈結紮術は,術後の腫れや頰部のしびれなど歯齦切開による合併症が生じうる5)。また血管内カテーテルによる動脈塞栓術は限られた施設でしか施行できず,さらに脳梗塞や血管内膜損傷などの重篤な合併症をきたしうる5)。
近年,内視鏡下鼻副鼻腔手術(ESS)の発展に伴い,内視鏡下に蝶口蓋動脈にアプローチする方法が多く報告されている。当院は,北海道で唯一ドクターヘリを有する救命救急センターを併設しており,鼻出血で受診する患者が多い。鼻出血を反復する症例においては,積極的に内視鏡下蝶口蓋動脈結紮術を施行してきた。今回,当科における内視鏡下蝶口蓋動脈結紮術の手技と成績を検討した。