文献詳細
特集 表在癌の新しい対応
2.食道表在癌に対する内視鏡診断と治療
著者: 大森泰1 川久保博文1 横山顕2
所属機関: 1川崎市立川崎病院外科 2独立行政法人国立病院機構久里浜アルコール症センター内科
ページ範囲:P.757 - P.761
文献概要
食道癌の診断と治療は最近の40年間に大きな発展を遂げた。1950~60年代には発見される食道癌は進行癌のみであり,その治療成績はきわめて不良であった。しかし1966年に早期食道癌の第1例が報告されて以来,食道癌の診断と治療は大きく変貌し,現在では進行癌のみならず粘膜癌・粘膜癌(表在癌)の発見が恒常化し食道癌の予後は著しく向上した。
このような表在型食道癌の診断には特に内視鏡画像の向上,色素内視鏡の進歩が大きく関与してきた。さらに診断の進歩に伴い食道癌治療も大きく変容し,従来は放射線治療と手術が唯一の治療であったが,早期癌診断の確立により内視鏡治療が可能となり確実な治癒が期待できるようになった。この結果,進行癌のみが治療対象であった時代には術後2年の生存率ですら20%弱であったが,現在では食道癌全体の5年生存率は40%を超えるようになってきた。このような結果は手術技術の向上,化学放射線療法の進歩などによる効果も重要であるが,早期癌診断による早期癌治療の増加が大きな影響をもっていることは否定できない。
患者にとっても,食道喪失による機能低下や放射線治療後後遺症や化学療法の副作用から解放され癌が治癒するとともにQOLの高い生活が保証される時代となってきた。さらに,現在では画像強調内視鏡や拡大内視鏡などの新たな内視鏡診断技術の成熟がもたらした新たな発見(微少癌の発見,質的診断の向上;特に深達度診断の精緻化)が内視鏡治療の適応拡大をさらに推し進めている。
参考文献
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