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特集 表在癌の新しい対応
5.中下咽頭表在癌の治療―経口的咽喉頭部分切除術(TOVS)の応用
著者: 塩谷彰浩1
所属機関: 1防衛医科大学校耳鼻咽喉科学講座
ページ範囲:P.777 - P.781
文献購入ページに移動Ⅰ.はじめに
喉頭・下咽頭癌に対する機能温存治療の1つに頸部外切開による喉頭・下咽頭部分切除術があるが,われわれは,気管切開をせずに内腔から喉頭・下咽頭部分切除ができるような手術環境を開発し,声門上癌・下咽頭癌のT1,T2,一部のT3を対象に良好な治療成績と術後機能を報告してきた1~5)。さらに最近では本手術を中咽頭癌にも応用している6,7)。
現在のところ中下咽頭の表在癌は,『浸潤が上皮下層にとどまるものでリンパ節転移の有無は問わない』と定義されている8)。この手術はもともとは表在癌切除のために開発されたものではなく,上皮下層を超えて筋組織や軟骨組織までも切除するものであるが,当然表在癌にも応用可能である。また中下咽頭の表在癌の定義では,腫瘍径については規定されていないので,例えば,径4cmを超える下咽頭癌T3でも,本手術により切除してみたら浸潤が上皮下層までで,結果として表在癌であったという場合も実際にはある。
以下,われわれが開発した経口的咽喉頭部分切除術(transoral videolaryngoscopic surgery:TOVS)について解説する。
喉頭・下咽頭癌に対する機能温存治療の1つに頸部外切開による喉頭・下咽頭部分切除術があるが,われわれは,気管切開をせずに内腔から喉頭・下咽頭部分切除ができるような手術環境を開発し,声門上癌・下咽頭癌のT1,T2,一部のT3を対象に良好な治療成績と術後機能を報告してきた1~5)。さらに最近では本手術を中咽頭癌にも応用している6,7)。
現在のところ中下咽頭の表在癌は,『浸潤が上皮下層にとどまるものでリンパ節転移の有無は問わない』と定義されている8)。この手術はもともとは表在癌切除のために開発されたものではなく,上皮下層を超えて筋組織や軟骨組織までも切除するものであるが,当然表在癌にも応用可能である。また中下咽頭の表在癌の定義では,腫瘍径については規定されていないので,例えば,径4cmを超える下咽頭癌T3でも,本手術により切除してみたら浸潤が上皮下層までで,結果として表在癌であったという場合も実際にはある。
以下,われわれが開発した経口的咽喉頭部分切除術(transoral videolaryngoscopic surgery:TOVS)について解説する。
参考文献
1)Shiotani A, et al:Videolaryngoscopic transoral en bloc resection of supraglottic and hypopharyngeal cancers using laparoscopic surgical instruments. Ann Otol Rhinol Laryngol 119:225-232, 2010
2)塩谷彰浩:経口的喉頭・下咽頭部分切除術.耳鼻臨床 101:68-69,2008
3)塩谷彰浩・他:喉頭がん(T2,T3)治療法の選択 切除・再建か放射線・化学療法か―喉頭癌T2,T3の治療―喉頭亜全摘術と経口的声門上部切除術を中心に.頭頸部癌 34:338-344,2008
4)塩谷彰浩・他:喉頭癌,下咽頭癌への声を残す低侵襲手術―経口的喉頭下咽頭部分切除術.医事新報 4425:49-52,2009
5)冨藤雅之・他:内視鏡診断と内視鏡手術 声門上癌,下咽頭癌に対する経口的喉頭・下咽頭部分切除術.日気食会報 61:160-167,2010
6)山下 拓・他:中咽頭側壁扁平上皮癌に対するTransoral Lateral Oropharyngectomy 新しい手術環境の構築と術後機能について.頭頸部外科 19:153-160,2010
7)Yamashita T, et al:Endoscopic transoral oropharyngectomy using laparo1scopic surgical instruments. Head Neck(in press)
8)加藤孝邦・他:耳鼻咽喉科臨床の進歩―咽頭・喉頭癌の新しい内視鏡診断.日耳鼻 112:60-65,2009
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