文献詳細
特集 耳鼻咽喉科における心因性疾患とその対応
文献概要
Ⅰ.はじめに
耳鼻咽喉科は感覚器を多く取り扱う領域であり,感覚器の感知閾値は心因性素因により大きく左右される。めまい,耳鳴,耳閉感,のどの違和感,味覚異常,嗅覚異常などと,感覚障害を訴える患者は頻繁に受診される。一般的に耳鼻咽喉科外来は外科的な処置を必要とし,多忙である。このような状況で,感覚障害を訴えた患者が受診することで診察の流れが滞り,診療に戸惑うことが隠せない医療者も多くおられることと思う。
例えば,めまいに心因性素因が強く関与することは過去から多く報告されている。近来,自殺率が年々増加し,社会問題となっている。その引き金となっている根底にうつ病が頻繁にみられ,うつ病はストレスと大きな関連をもつ。『めまい』は重症化する傾向にあるうつ病を予告する症状の一つと報告されており1),これらの患者が精神科に精通していない一般医にかかる可能性は十分に考えられる。めまいのみならず,類似した感覚障害に共通してみられる可能性がある。そのため,心身医学に関心をもつことが耳鼻咽喉科医に問われている2,3)。
この稿では心身障害の関与が疑われる耳鼻咽喉科疾患に対して,筆者らが心がけていることについて記す。正しい診断,過去の薬物の整理に加え,薬物と心理精神療法がポイントである。
耳鼻咽喉科は感覚器を多く取り扱う領域であり,感覚器の感知閾値は心因性素因により大きく左右される。めまい,耳鳴,耳閉感,のどの違和感,味覚異常,嗅覚異常などと,感覚障害を訴える患者は頻繁に受診される。一般的に耳鼻咽喉科外来は外科的な処置を必要とし,多忙である。このような状況で,感覚障害を訴えた患者が受診することで診察の流れが滞り,診療に戸惑うことが隠せない医療者も多くおられることと思う。
例えば,めまいに心因性素因が強く関与することは過去から多く報告されている。近来,自殺率が年々増加し,社会問題となっている。その引き金となっている根底にうつ病が頻繁にみられ,うつ病はストレスと大きな関連をもつ。『めまい』は重症化する傾向にあるうつ病を予告する症状の一つと報告されており1),これらの患者が精神科に精通していない一般医にかかる可能性は十分に考えられる。めまいのみならず,類似した感覚障害に共通してみられる可能性がある。そのため,心身医学に関心をもつことが耳鼻咽喉科医に問われている2,3)。
この稿では心身障害の関与が疑われる耳鼻咽喉科疾患に対して,筆者らが心がけていることについて記す。正しい診断,過去の薬物の整理に加え,薬物と心理精神療法がポイントである。
参考文献
1)Nakao M, et al:Prediction of major depression in Japanese adults:somatic manifestation of depression in annual health examinations. J Affect Disord 90:29-35, 2006
2)清水謙祐・他:最新の向精神薬の使い方―うつ・不安・睡眠障害.各種疾患における向精神薬の使い方―耳鼻咽喉科疾患における向精神薬の使い方.臨と研 86:1006-1012,2009
3)五島史行:皮膚科・眼科・耳鼻咽喉科における最新の心身医療トピックス―耳鼻咽喉科における心身症の割合と心理相談の現状.心身医学 50:45-51,2010
4)中野 淳・中山明峰・他:めまいを主訴とした境界型人格障害の一症例.Equilibrium Res 63:210-214,2004
5)松崎圭治・中山明峰・他:当院耳鼻咽喉科にて心理分析を施行した症例について―特にめまい患者.Equilibrium Res 63:564-568,2004
6)田ヶ谷浩邦:睡眠障害をめぐって―不眠症の薬物療法.Pharma Medica 27:49-52,2009
7)金原信久・他:薬物動態臨床編―精神神経用薬の動態と薬効・副作用.治療学 43:1319-1323,2009
8)中山明峰:抗うつ傾向のめまい患者に対するパロキセチンの効果.Pharma Medica 20:99-101,2002
9)中山明峰・他:めまい患者に対する集団精神療法.Equilibrium Res 57:588-595,1998
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