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特集 耳鼻咽喉科における心因性疾患とその対応
3.耳鳴と聴覚過敏
著者: 中川雅文1 荒木謙太郎2
所属機関: 1みつわ台総合病院聴覚センター 2みつわ台総合病院リハビリテーション科
ページ範囲:P.927 - P.935
文献購入ページに移動Ⅰ.耳鳴
1.耳鳴診療の基本的な考え方
耳鳴は当人以外がその症状や徴候を確認することが困難な,きわめて自覚的な,『徴候・症状』である。また,患者は自分の窮状を適切なことばで伝えることができず,主観的かつ情意的なことば(不定愁訴)として訴える傾向が強い。そのような状況下で医師は『ことば』を通じて診療を実現することの困難さに戸惑い,患者は伝えられないもどかしさからさらなる不安を訴えてしまいがちである。医師・患者間でのコミュニケーションエラーが耳鳴の臨床を複雑化させているといえよう。
耳鳴診療を良い形に帰結させるためには,医師・患者関係において相互理解と信頼をまず確保する必要がある。必要にしてかつ十分な検査を論理的に進めていく作業は患者との信頼構築において大切である。医師自身の根気強い『傾聴,共感』の姿勢を維持しながら,問診を重ね,後述する疾患群の鑑別をしていくことこそが耳鳴診療の基本であろう。カウンセリングを通じて,耳鳴とその背景にある疾患との因果関係について十分理解させ,『患者の得心(ラポール)』を得させることが耳鳴診療のゴールとなる。
1.耳鳴診療の基本的な考え方
耳鳴は当人以外がその症状や徴候を確認することが困難な,きわめて自覚的な,『徴候・症状』である。また,患者は自分の窮状を適切なことばで伝えることができず,主観的かつ情意的なことば(不定愁訴)として訴える傾向が強い。そのような状況下で医師は『ことば』を通じて診療を実現することの困難さに戸惑い,患者は伝えられないもどかしさからさらなる不安を訴えてしまいがちである。医師・患者間でのコミュニケーションエラーが耳鳴の臨床を複雑化させているといえよう。
耳鳴診療を良い形に帰結させるためには,医師・患者関係において相互理解と信頼をまず確保する必要がある。必要にしてかつ十分な検査を論理的に進めていく作業は患者との信頼構築において大切である。医師自身の根気強い『傾聴,共感』の姿勢を維持しながら,問診を重ね,後述する疾患群の鑑別をしていくことこそが耳鳴診療の基本であろう。カウンセリングを通じて,耳鳴とその背景にある疾患との因果関係について十分理解させ,『患者の得心(ラポール)』を得させることが耳鳴診療のゴールとなる。
参考文献
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International TRI Tinnitus Conference, 2010
International TRI Tinnitus Conference, 2010
5)中川雅文・他:脳の可塑性.(訳書)医歯薬出版,東京,2009(Möller AR:Neural Plasticity and Disorders of the Nervous System. Cambridge Press, New York, 2006)
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