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文献詳細

雑誌文献

耳鼻咽喉科・頭頸部外科82巻13号

2010年12月発行

シリーズ 知っておきたい生理・病態の基礎

11.嚥下

著者: 三枝英人1

所属機関: 1日本医科大学耳鼻咽喉科学教室

ページ範囲:P.959 - P.964

文献概要

Ⅰ はじめに

 嚥下障害は,あくまで原因となる何らかの疾患や病態があって,その結果か,もしくは二次的に発症するものであり,“嚥下障害病”というものがあるわけではない。したがって,ある一定の診断基準や治療指針に従って,治療を行うものでもない。嚥下障害による脱水・栄養障害に対しては経鼻経管栄養や経胃瘻栄養,中心静脈栄養が,誤嚥や肺炎に対しては気管内挿管や気管切開を行う,禁飲食の上,抗菌薬を投与するといった治療はあくまで嚥下障害に対する対応であって,嚥下障害に対する直接的な治療ではない。また,しばしば,嚥下障害を有する患者に対して,口腔内への寒冷刺激や“嚥下体操”と称される舌や顔面表情筋の運動,カプサイシン含有のガムなどを用いた訓練(?)などが,ただ闇雲に行われ,結局のところ何の改善もみられないで,貴重な数か月を無駄に過ごすということも現実的には多くある。このような場合でも,『摂食機能療法(185点)』として保険点数が加算されているとなれば,大きな問題であるといわざるを得ない。

 嚥下障害に対する治療を行う場合,最も重要なことは,水分・栄養摂取の問題,下気道に対する対処について考えることは当然であるが,なぜ,『この患者』に嚥下障害が起こっているのか,何が嚥下障害を起こす原因であり,嚥下障害が改善しない,もしくは遷延する要因であるのか,何が不利な条件を演出しているのかについて,実際の患者を診察し,考察を進めることである。まず,嚥下内視鏡検査や嚥下透視検査でも,嚥下訓練でもないことに留意する必要がある。

参考文献

1)大前由紀雄・他:嚥下障害に対する喉頭挙上術.日気食会報 42:237-243,1991
2)吉田義一:発声に関与する運動ニューロンの脳幹内局在.神経進歩 38:365-376,1994
3)Saigusa H:Origin of the muscles of the human tongue. Speech disorder, cause, effect and social effects. Nova Science, New York, 2010, pp259-274
4)Kawasaki A, et al:Study of movements of individual structures of the larynx during swallowing. ANL 28:75-84, 2001
5)鈴木康司:嚥下研究におけるFrancois Magendieの功績.日気食会報 53:313-318,2002

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1316

印刷版ISSN:0914-3491

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