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雑誌目次

雑誌文献

耳鼻咽喉科・頭頸部外科82巻2号

2010年02月発行

雑誌目次

目でみる耳鼻咽喉科

経過中に自己免疫性膵炎を合併したIgG4関連硬化性疾患の1例

著者: 倉上和也 ,   太田伸男 ,   石田晃弘 ,   稲村和俊 ,   青柳優

ページ範囲:P.96 - P.98

Ⅰ.はじめに

 IgG4関連硬化性疾患は,全身の諸臓器にCD4ないしCD8陽性Tリンパ球とIgG4陽性形質細胞が浸潤する全身性疾患である。ミクリッツ病,自己免疫性膵炎,原発性硬化性胆管炎,後腹膜線維症などが,この新しい疾患概念であるIgG4関連硬化性疾患の1つの表現型である可能性が示唆されてきている。今回われわれは,両側顎下腺および涙腺の腫脹を主訴に来院し,経過中に自己免疫性膵炎を発症した症例を経験したので呈示する。

原著

咽頭病変の診断に苦慮した腸管ベーチェット病の1例

著者: 寳地信介 ,   若杉哲郎 ,   大久保淳一 ,   橋田光一 ,   北村拓朗 ,   鈴木秀明

ページ範囲:P.99 - P.103

Ⅰ はじめに

 ベーチェット病は口腔咽頭などの消化管粘膜病変,眼病変,皮膚病変などの多彩な症状をきたす原因不明の炎症性疾患であり,しばしば診断や治療に難渋する。

 今回われわれは,反復性扁桃炎として両側口蓋扁桃摘出術を受けたが,術後も継続する咽頭病変と発熱を主訴に来院した症例で,その後の精査にて腸管ベーチェット病の診断に至った症例を経験したので,若干の文献的考察を加えて報告する。

耳下腺MALTリンパ腫の臨床的検討

著者: 細川誠二 ,   中村悟己 ,   岡村純 ,   瀧澤義徳 ,   八木悠樹 ,   中安一孝 ,   鳥居直子 ,   峯田周幸

ページ範囲:P.105 - P.109

Ⅰ はじめに

 MALT(mucosa-associated lymphoid tissue)リンパ腫は消化管,なかでも特に胃に好発するが,頭頸部領域では唾液腺,甲状腺,眼窩内に発生することが知られている1~5)。この疾患概念は比較的新しく,低悪性度のB細胞性リンパ腫の一種と考えられ,これまで偽リンパ腫といわれ診断されてきた一部が,本疾患であったことが明らかになってきた5)。しかしその治療法については確立されたものはなく,施設により異なるのが現状である。今回われわれは,過去10年間に,耳下腺MALTリンパ腫と診断された6症例について,臨床的検討をしたので,若干の文献的考察を加えて報告する。

耳下腺および顎下腺に由来した同時性多形腺腫の1例

著者: 田中友佳子 ,   吉原俊雄

ページ範囲:P.111 - P.113

Ⅰ はじめに

 多形腺腫は全唾液腺腫瘍の中で55~70%と最も頻度の高い良性腫瘍であり,耳下腺に最も多く発生し,次に顎下腺,小唾液腺に発生すると報告されている1)。易再発であり,長年経過後に悪性化する可能性があるとされている腫瘍であるが,同時期に複数の領域から発生することは稀である。今回われわれは,同時期に片側耳下腺および顎下腺に発生した多形腺腫の症例を経験したので,若干の考察を加えて報告する。

喉頭に発生した非定型カルチノイド症例

著者: 上田大 ,   大島怜子 ,   杉山庸一郎 ,   上田雅代 ,   石坂成康 ,   三牧三郎

ページ範囲:P.115 - P.118

Ⅰ はじめに

 喉頭に発生する腫瘍のうち,カルチノイドは0.6%を占めるに過ぎない1)。今回,われわれは,喉頭に発生した稀な非定型カルチノイドの1症例を経験したので若干の文献的考察を含めて報告する。

頭頸部MALTリンパ腫の2症例

著者: 門川洋平 ,   宇高毅 ,   因幡剛 ,   濱田哲夫 ,   平木信明 ,   大久保淳一 ,   鈴木秀明

ページ範囲:P.119 - P.124

Ⅰ はじめに

 Mucosa-associated lymphoid tissue(MALT)リンパ腫は,通常ではリンパ組織の存在しない組織に発生するB細胞性リンパ腫であり,2001年のWHO分類1)では濾胞辺縁帯B細胞性リンパ腫に分類されている。頭頸部領域は,消化器,肺に次ぐ好発部位とされているものの2),その詳細についてはいまだ明らかにされていない点が多い。今回われわれは,耳下腺と上咽頭に発生したMALTリンパ腫の2症例を経験したので,本症例の病態を考察するとともに,報告する。

頸部外切開を要した下咽頭・食道魚骨異物の2症例

著者: 谷紘輔 ,   中山雅博 ,   芦澤圭 ,   髙橋邦明

ページ範囲:P.125 - P.128

Ⅰ はじめに

 耳鼻咽喉科診療の日常診療において下咽頭,食道異物はしばしば遭遇する疾患であり,その大部分は魚骨であるといわれている1)。魚骨異物は魚骨周囲の感染,膿瘍形成などの合併症をきたすことがあり2),魚骨異物が疑われる場合には,異物の速やかな同定および摘出が重要である。今回われわれは頸部外切開による摘出術を要した下咽頭,食道魚骨異物の2例を経験したので報告する。

耳下腺筋上皮癌の1例

著者: 長谷川恵子 ,   川上理郎 ,   寺田哲也 ,   二村吉継 ,   伊藤加奈子 ,   大田真紀代 ,   竹田雅司

ページ範囲:P.129 - P.134

Ⅰ はじめに

 筋上皮細胞は唾液腺,乳腺,前立腺,涙腺などの外分泌腺に存在し,上皮と平滑筋の両者の性格を併せもつとされている1)。唾液腺に発生する筋上皮腫は唾液腺腫瘍の約1%と頻度の低い腫瘍であるが1~3),筋上皮癌の頻度はさらに低い4~6)。今回われわれは耳下腺に発生した筋上皮癌を経験したので若干の文献的考察を加えて報告する。

聴性脳幹インプラントを施行した神経線維腫症Ⅱ型症例の術後経過

著者: 曾根三千彦 ,   斎藤清 ,   川端直子 ,   林真子 ,   棚橋汀路 ,   瀧本勲 ,   中島務

ページ範囲:P.135 - P.139

Ⅰ はじめに

 人工内耳埋込術(cochlear implantation:CI)では回復が見込めない聴神経腫瘍や聴神経機能喪失症例に対する聴覚再獲得の治療法として,聴性脳幹インプラント(auditory brainstem implant:ABI)の臨床応用が開始されてから約30年を経過した1)。わが国でもABI治療の有効性が報告されている2)が症例はまだ少ない。われわれは,ABI治療を行った神経線維腫症Ⅱ型(neurofibromatosis type 2:NF2)罹患症例の術後経過を1年半以上観察してきたので,経験した同症例について患者の実感も踏まえて報告する。

甲状腺好酸性細胞腺腫の1例

著者: 深谷和正 ,   佐藤靖夫 ,   荒木康智 ,   本村朋子

ページ範囲:P.141 - P.144

Ⅰ はじめに

 甲状腺好酸性細胞腺腫は好酸性顆粒を含む細胞をもつ比較的稀な甲状腺腫瘍である。良性と悪性の鑑別が困難であり,その予後や治療法についても確立されていない。今回,われわれは好酸性細胞腺腫の1症例を経験したので,若干の文献的考察を加えて報告する。

前頭洞に発生した血瘤腫の1例

著者: 渡辺太志 ,   佐伯忠彦 ,   大河内喜久 ,   榊優 ,   平野博嗣

ページ範囲:P.145 - P.149

Ⅰ はじめに

 血瘤腫は1917年に田所1)によって最初に報告された出血性血液や凝血塊を主体とした偽腫瘍の臨床的病名である。比較的稀な疾患であるが,臨床所見や画像所見から悪性腫瘍との鑑別を要す。副鼻腔では上顎洞の発生が多数を占め2~15),前頭洞の発症例は稀である16,17)。今回われわれは左前頭洞に発生した血瘤腫の1例を経験したので若干の考察を加えて報告する。

眼窩骨膜下膿瘍に対して内視鏡下鼻副鼻腔手術を施行した2症例

著者: 白石藍子 ,   中屋宗雄 ,   渡辺健太 ,   阿部和也

ページ範囲:P.151 - P.154

Ⅰ はじめに

 眼窩骨膜下膿瘍は鼻性眼窩内合併症の1つであり,眼痛,眼球突出,眼球運動障害などが出現し,病変の進行から視力障害をきたすこともある。そのために,視機能の保存のため,速やかに診断し,適切な治療を行うことが必要である1,2)

 今回,眼窩蜂窩織炎に対して,他科で保存的治療が行われたが改善しないため,当科にて内視鏡下鼻副鼻腔手術を施行した眼窩骨膜下膿瘍の2症例を経験したので治療経過とともに診断や治療方法などについて考察を行い,文献的考察を加えて報告する。

シリーズ 知っておきたい生理・病態の基礎

2.味覚の生理とその障害の病態

著者: 池田稔 ,   小野田恵子 ,   平井良治 ,   関根大喜

ページ範囲:P.159 - P.165

Ⅰ 味覚の生理

1.味覚器の構造

 味覚は化学物質が味覚器,すなわち味蕾における味細胞の味覚受容器に受容されて生じる感覚であり,嗅覚とともに化学感覚といわれる。ラットの味蕾の微細構造を図11)および図2に示した。味蕾の先端には直径数ミクロンの味孔があり口腔に開口している。味細胞先端の微絨毛には味覚受容器が存在しており,味孔に伸びて呈味物質の刺激を受けることになる。

鏡下囁語

天国から届いた万年筆

著者: 加我君孝

ページ範囲:P.155 - P.157

 万年筆で書かれた文字や文章には人柄がよく出る。私も万年筆をしばしば使う。昨年,松本清張生誕100年記念の特別展が開催された九州小倉の松本清張記念文学館で見た原稿は,太めのモンブランのペンで書かれており,まるで作家がそこにいるかのようであった。モンブランは頑丈なので原稿の執筆にも耐え得る。私は署名用には米国留学時代の先生でジェファーソン医科大学の学長で医学教育が専門のゴネラ教授から東京大学の教授就任のお祝いにいただいたWatermanを好んで使い,手紙や葉書にはモンブランのペン先の太さが異なる3種類を使用している。これらはいずれも約20年前から愛用しているものであるが,3年前から,パイロットのノック式の万年筆も使うようになった。万年筆のキャップをはめることが面倒な人にはぴったりである。この万年筆はA製薬会社の幹部社員で,35年来の親しいSさんから亡くなって49日が過ぎて本人の名の小包郵便で届いたものである。私は『天国から届いた万年筆』と呼ぶことにしている。

 私が昭和46(1971)年に卒業と同時に東京大学の耳鼻咽喉科学教室に入局して研修医として勉強を始めた頃は各製薬会社のMR氏が営業活動で自由に病院の医師勤務室や医局に出入りしていた。当時はMRではなくプロパーと呼ばれていた。そのなかでSさんは入社して数年の頃であった。学生のときにはまったく存在も知らなかった世界であったがSさんたちMRは研修医の私共の頭のなかに,薬の名を刷りこむべく繰り返しアプローチしていた。彼らの仕事の成果として私の頭のなかには熱心だった3社の抗生物質名が今でも残っている。

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あとがき

著者: 丹生健一

ページ範囲:P.172 - P.172

 2010年(82巻)の鏡下囁語は,1月号・2月号と私の恩師お二人が続きました。1月号は市村恵一先生(自治医科大学)の教育論。私自身,駆け出しの時期に,市村先生という素晴らしい教育者の下で学ぶことができたことは本当に幸運でした。お会いして20年,医師としても教育者としてもまだまだですが,市村先生の教育方針を肝に銘じて,現役生活の後半,後進の育成に励みたいと思います。それにしても,辻静雄さんの「人間は楽しみにすることを職業にしてはいけない」との言葉には,ハッとしました。私自身も仕事を仕事と思わず,趣味のように楽しんでしまっているところが多々あります。このことは,恵まれない労働条件で働くわれわれ勤務医にとっては,生命線ともいえる大切なモチベーションだと思いますが,そのなかにいろいろな甘えが生じてくることを戒めるものなのでしょうか。

 今月号の鏡下囁語は加我君孝先生(東京大学名誉教授)の万年筆のお話。たしかに加我先生からのお便りはいつも太字の万年筆です。一目で誰からかわかる大きな字で書かれた温かい一言は,短いですがとても励みになります。私が愛用しているのは,教授就任祝いに貰ったモンブランの万年筆。やはり太字です。同じく耳鼻咽喉科医である妹から,「教授の署名が教室員の先生方の人生に大きくかかわるのだからね」と渡されました。就任して今年で10年目,その言葉の重みを実感しています。

基本情報

耳鼻咽喉科・頭頸部外科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1316

印刷版ISSN 0914-3491

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