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文献詳細

雑誌文献

耳鼻咽喉科・頭頸部外科82巻3号

2010年03月発行

特集 診療ガイドライン・診療の手引き概要

3.副鼻腔炎

著者: 黒野祐一1

所属機関: 1鹿児島大学大学院医歯学総合研究科耳鼻咽喉科・頭頸部外科学

ページ範囲:P.205 - P.212

文献概要

Ⅰ.はじめに

 副鼻腔炎は耳鼻咽喉科領域で最も一般的な疾患の1つであり,その診断や治療に関してはすでに確立され,教科書的な著書も数多く出版されている。しかし,わが国ではガイドラインの作成にはいまだ至っておらず,その理由としてランダム化比較試験や二重盲検試験などの信憑性が高い方法によって評価された診断や治療法が少ないことが挙げられる。最近,欧州で,Evidence-based Medicine(EBM)に基づいた副鼻腔炎と鼻茸の診療に関するPosition Paperが作成されたが1),海外とわが国とでは医療環境がかなり異なるため,これをそのままわが国のガイドラインあるいは診療指針として使用することはできない。

 こうした背景そして社会的要請を受けて,2007年9月に,日本鼻科学会の編集による『副鼻腔炎診療の手引き』が出版された2)。必ずしもすべての内容がEBMに基づいて記述されていないこと,一般的なガイドラインの形式に則っていないことなどの理由から,ガイドラインという表記は用いられていないが,副鼻腔炎に関して文献的な吟味と評価を経てわが国で初めて作成された『手引き』である。本書は全9章で構成され,第1章の定義に始まり第9章の解剖用語まで,急性および慢性副鼻腔炎の考え方および診療の指針がまとめられている。

 そこで,この『副鼻腔炎診療の手引き』の作成委員の1人として,本書の概要とその用い方について,若干の私見を交えて述べてみたい。

参考文献

1)Fokkens W, et al:European Position Paper on Rhinosinusitis and Nasal Polyps 2007. Rhinology Supplement 20, 2007
2)日本鼻科学会:副鼻腔炎診療の手引き.金原出版,東京,2007
3)文部科学省:学校保健統計調査報告書.1951~1994
4)夜陣紘治:慢性副鼻腔炎の病態と治療―粘膜・骨病変の観点から.第102回日本耳鼻咽喉科学会宿題モノグラム,2001
5)黒野祐一・他:アレルギー性副鼻腔炎の概念と発症機序.ENTONI 17:7-12,2002
6)洲崎春海・他:副鼻腔気管支症候群とその周辺,臨床象―耳鼻咽喉科の立場から.日気食会報 38:181-186,1987
7)馬場駿吉:臨床薬効評価 耳鼻咽喉科疾患.臨床薬物治療学大系.砂原茂一・他(編).情報開発研究所,東京,1987,pp320-332
8)島田千恵子:慢性副鼻腔炎におけるStagingの試みとその評価.耳展 43:366-380,2000
9)西村忠郎・他:第3回全国耳鼻咽喉科領域感染症臨床分離菌全国サーベイランス結果報告.日耳鼻感染症研究会誌 22:12-23,2004
10)馬場駿吉・他:第2回全国耳鼻咽喉科領域感染症臨床分離菌全国サーベイランス結果報告.日耳鼻感染症研究会誌 18:48-63,2000
11)小林正桂・他:ステイツク型嗅覚検査法―4件法と分類段階法の年齢と検知能力評価に関する検討.日鼻誌 43:167-174,2004
12)間島雄一:鼻茸の成因と治療.耳展 42:525-530,1999
13)Chandler JR, et al:The pathology of the orbital complications in acute sinusitis. Laryngoscope 80:1414-1448, 1970
14)Singh B, et al:Sinogenic intracranial complications. J Laryngol Tol 109:945-950, 1995

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1316

印刷版ISSN:0914-3491

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