icon fsr

文献詳細

雑誌文献

耳鼻咽喉科・頭頸部外科82巻3号

2010年03月発行

文献概要

原著

内直筋麻痺を生じた原発性蝶形骨洞囊胞例

著者: 成尾一彦1 宮原裕2 中嶋真沙子1 細井裕司1

所属機関: 1奈良県立医科大学耳鼻咽喉・頭頸部外科 2大阪府立急性期・総合医療センター耳鼻咽喉・頭頸部外科

ページ範囲:P.247 - P.250

文献購入ページに移動
Ⅰ はじめに

 蝶形骨洞囊胞は比較的稀で,その症状も鼻閉や鼻汁といった鼻症状ではなく,視力障害,色覚障害,視野障害,複視,眼瞼下垂,眼痛という眼症状や頭痛が多い。眼症状では視力障害が多くしばしば緊急手術となる。視力障害に眼球運動障害による複視を合併することは多いが,視力障害はなく眼球運動障害のみが生じる例は稀である1~8)。眼球運動障害を引き起こす神経麻痺として,動眼神経,外転神経,滑車神経の神経障害が考えられ,このうち動眼神経の障害が最も多い9,10)。しかし,蝶形骨洞囊胞例において動眼神経麻痺のうち内直筋だけが障害された症例の報告はない。今回視力障害を伴わずに内直筋麻痺による複視のみを合併した原発性蝶形骨洞囊胞例を経験したので報告する。

参考文献

1)西村忠郎・他:眼瞼および眼球運動障害をきたした蝶形骨洞囊胞症例.耳展 54:107-112,1982
2)田辺由紀夫・他:Primary aberrant oculomotor regenerationの2症例.臨眼 43:935-937,1989
3)笹森史朗・他:動眼神経麻痺を主症状とした後部副鼻腔囊胞の1症例.耳喉頭頸 65:391-394,1993
4)山岡俊哉・他:動眼神経麻痺を呈した原発性蝶形骨洞囊胞の1症例.大阪警察病院医学雑誌 17:139-142,1993
5)小沢勝子・他:複視が主症状の蝶形骨洞囊胞例.臨眼 48:642-643,1994
6)鈴木政美・他:視力障害を伴わず眼球運動障害を呈した蝶形骨洞囊胞の1症例.耳喉頭頸 70:187-190,1998
7)片山昭公・他:動眼神経麻痺を呈した蝶形骨洞囊胞.耳鼻臨床 92:733-737,1999
8)村下秀和・他:外転神経麻痺を呈した蝶形骨洞囊胞の1例.耳喉頭頸 78:147-150,2006
9)Nugent GR, et al:Sphenoid sinus mucoceles. J Neurosurg 32:443-451, 1970
10)McCarthy WL, et al:Visual loss as the only symptom of sphenoid sinus mucocele. Am J Ophthal 74:1134-1140, 1972
11)井口郁雄・他:蝶形骨洞囊胞.JOHNS 5:682-686,1989
12)坂井田 寛・他:原発性副鼻腔囊胞の臨床的検討.耳鼻臨床 98:377-380,2005
13)森山 寛・他:後部副鼻腔囊腫.耳展 24:465-480,1981
14)長船宏隆・他:原発性および続発性蝶形骨洞囊胞の検討.耳展 35:445-458,1992
15)山内盛雄・他:蝶形骨洞囊胞―本邦における病像の特異性について.耳鼻臨床 73:811-821,1980
16)三澤 清・他:内直筋麻痺による複視を呈した蝶形骨洞炎の1例.耳喉頭頸 73:309-312,2001
17)田中千彦・他:動眼神経麻痺の臨床的検討.神経眼科 12:177-182,1995

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1316

印刷版ISSN:0914-3491

雑誌購入ページに移動
icon up
あなたは医療従事者ですか?