耳鼻咽喉科・頭頸部外科82巻4号

2010年04月発行

原著

超高齢者に発生した舌根部腺様囊胞癌の1例

著者： 因幡剛¹ 宇高毅¹ 門川洋平¹ 濱田哲夫² 平木信明³ 大久保淳一³ 鈴木秀明³

所属機関： ¹熊本労災病院耳鼻咽喉科 ²九州労災病院病理診断科 ³産業医科大学医学部耳鼻咽喉科学講座

ページ範囲：P.295 - P.298

文献概要

Ⅰ　はじめに

　現在，わが国が高齢化社会を迎えているのに伴って，医療者側は，かつて経験しなかったような高齢患者の治療に直面している。高齢者は一般的に，手術侵襲に対する耐性が低く，術後合併症のリスクも高いため，治療方針の決定や手術法の選択に際しては，細心の注意が必要である^1）。

　老年医学では，高齢者の定義は65歳以上，その中で75歳以上を後期高齢者，85歳以上または90歳以上から超高齢者とするというのが一般的である^2）。今回われわれは，超高齢者で直腸癌の手術中に偶然発見された舌根部腺様囊胞癌症例を治療する機会を得たので，舌根部由来の良・悪性腫瘍の分類，手術アプローチ，ならびに超高齢者に対する手術選択について文献的考察を加え報告する。

参考文献

1）田中俊一・他：90歳以上超高齢者腹部外科手術症例の術後合併症と死亡例の検討．日臨外誌 69：1585-1589，2008

2）岡部紘明：高齢者の臨床検査基準値．モダンメディア 51：195-203，2005

3）Namazie A, et al：Adenoid cystic carcinoma of the base of the tongue. Ann Otol Rhinol Laryngol 110：248-253, 2001

4）細川誠二・他：頭頸部原発腺様囊胞癌の臨床検討．頭頸部癌 33：578-581，2008

5）Daniel RG, et al：Outcomes and prognostic variables in adenoid cystic carcinoma of the head and neck：a recent experience. Int J Radiat Oncol Biol Phys 70：1365-1372, 2008

6）伴　有紀・他：舌根部神経鞘腫例．耳鼻臨床 97：893-898，2004

7）藤原和典・他：舌根部に発生した多形腺腫．耳鼻臨床 100：833-836，2007

8）松原真美・他：ハーモニックスカルペルを用いた口蓋扁桃摘出術．耳鼻臨床 102：583-586，2009