文献詳細
原著
持続的な白血球増多を伴った前頭洞癌の1例
著者: 籠谷領二1 物部寛子1 戸島均1 菊地文史2
所属機関: 1日立総合病院耳鼻咽喉科 2日立総合病院病理科
ページ範囲:P.313 - P.317
文献概要
前頭洞癌は鼻・副鼻腔悪性腫瘍のなかでも発生頻度が低く,これまでの報告数も少ない稀な疾患である1)。その解剖学的位置から早期診断は困難であるため進行した状態で発見されることが多く,また確立された治療法もないため予後はきわめて不良である2)。一方,悪性腫瘍には顆粒球コロニー刺激因子granulocyte colony-stimulating factor(G-CSF)産生による白血球増多症を伴うことがあり,G-CSF産生腫瘍として報告されている3)。G-CSF産生腫瘍は概ね予後不良であり,G-CSFが腫瘍増殖作用を有すると考えられている3)。頭頸部領域でのG-CSF産生腫瘍の報告は少なく,G-CSF産生前頭洞癌の報告はわれわれが渉猟した限りこれまでにない。今回,われわれは持続的な白血球増多および血清G-CSF値の上昇を示し,放射線化学療法に抵抗性であり,8か月の経過で死亡した前頭洞癌の1例を経験したので,若干の文献的考察を加えて報告する。
参考文献
掲載誌情報