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文献詳細

雑誌文献

耳鼻咽喉科・頭頸部外科82巻4号

2010年04月発行

原著

持続的な白血球増多を伴った前頭洞癌の1例

著者: 籠谷領二1 物部寛子1 戸島均1 菊地文史2

所属機関: 1日立総合病院耳鼻咽喉科 2日立総合病院病理科

ページ範囲:P.313 - P.317

文献概要

Ⅰ はじめに

 前頭洞癌は鼻・副鼻腔悪性腫瘍のなかでも発生頻度が低く,これまでの報告数も少ない稀な疾患である1)。その解剖学的位置から早期診断は困難であるため進行した状態で発見されることが多く,また確立された治療法もないため予後はきわめて不良である2)。一方,悪性腫瘍には顆粒球コロニー刺激因子granulocyte colony-stimulating factor(G-CSF)産生による白血球増多症を伴うことがあり,G-CSF産生腫瘍として報告されている3)。G-CSF産生腫瘍は概ね予後不良であり,G-CSFが腫瘍増殖作用を有すると考えられている3)。頭頸部領域でのG-CSF産生腫瘍の報告は少なく,G-CSF産生前頭洞癌の報告はわれわれが渉猟した限りこれまでにない。今回,われわれは持続的な白血球増多および血清G-CSF値の上昇を示し,放射線化学療法に抵抗性であり,8か月の経過で死亡した前頭洞癌の1例を経験したので,若干の文献的考察を加えて報告する。

参考文献

1)和田昌興・他:当科で経験した前頭洞癌の1例.耳喉頭頸 77:231-234,2005
2)田原哲也・他:原発性前頭洞癌の1症例.耳展 36:483-488,1993
3)山本英永・他:G-CSF産生耳下腺粘表皮癌の1例.耳喉頭頸 77:651-656,2005
4)小西孝彦・他:囊胞を思わせた前頭洞癌症例.耳喉頭頸 60:1019-1021,1988
5)伊積政雄:前頭葉ヲ侵セル前額及眼窩内基底細胞癌腫ノ1例.日耳鼻 30:85-86,1924
6)藤原和典・他:前頭洞に原発した移行上皮癌例.耳鼻臨床 99:373-376,2006
7)林 裕史:前頭蓋底手術を施行した前頭洞癌の1例―眼窩切除の適応について.脳神経外科 36:71-74,2008
8)鎌田利彦・他:原発性前頭洞癌の2症例.耳鼻臨床 82:1259-1264,1989
9)志水雄輔・他:前頭洞癌En-bloc手術の試み.耳鼻臨床 62:276-280,1969
10)岩井 一・他:原発性前頭洞癌の1治験例.耳鼻臨床 64:510-513,1971
11)平野 実・他:頭頸部腫瘍に対する頭蓋底外科―前頭開頭下の手術.日耳鼻 94:343-350,1991
12)田中文雄・他:前頭洞癌の一例.耳鼻臨床(補) 64:86-91,1993
13)金沢丈治・他:G-CSF産生上顎癌例.耳鼻臨床 92:987-992,1999
14)栗原秀雄・他:血清G-CSF高値を伴った中耳癌の一例.日耳鼻 96:415-420,1993
15)渡邊雄介・他:高カルシウム血症を伴ったG-CSF産生腫瘍と考えられた下咽頭癌の1例.厚生年金病院年報 24:121-125,1998
16)大野繁夫・他:G-CSF産生腫瘍と考えられた口腔癌の1例.日口外誌 44:394-396,1998
17)守屋真示・他:G-CSF産生口腔粘表皮癌の1例.倉敷中病年報 65:109-114,2003
18)野口忠秀・他:G-CSF産生腫瘍と診断した上顎歯肉扁平上皮癌の1例.日口外誌 53:297-300,2007
19)高橋久雄・他:G-CSF産生多型細胞型腎細胞癌の1例.日臨細胞誌 35:576-581,1996
20)河原正明・他:進行肺癌治療後白血球減少時の内因性G-CSF(colony stimulating facor)値の検討.肺癌 36:562,1996

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1316

印刷版ISSN:0914-3491

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