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雑誌目次

雑誌文献

耳鼻咽喉科・頭頸部外科82巻7号

2010年06月発行

雑誌目次

特集 耳鼻咽喉科領域と感染症

1.聴器―風疹,サイトメガロ,ヘルペス,その他

著者: 藤原圭志 ,   古田康 ,   福田諭

ページ範囲:P.433 - P.438

Ⅰ.聴器障害を引き起こすウイルス

 聴器に障害を引き起こすウイルスには,先天性難聴を引き起こすものとしてサイトメガロウイルス(cytomegalovirus:CMV),風疹ウイルス(rubella virus)が,また後天性難聴やめまいを引き起こすものとしてムンプスウイルス(mumps virus),水痘帯状疱疹ウイルス(varicella-zoster virus:VZV),麻疹ウイルス(measles virus)が挙げられる。本稿ではこれらのウイルス感染症について,その特徴,治療,予防について最近の知見を交えて述べる。

2.副鼻腔真菌症

著者: 大越俊夫

ページ範囲:P.439 - P.447

Ⅰ.はじめに

 鼻は呼吸路として外界との門戸であるがためにさまざまな病原微生物に曝露され,感染症の好発部位である。今回は副鼻腔真菌症について概説し,あわせてBipolaris spisiferaSchizophyllum communeによるアレルギー性真菌性副鼻腔炎などの症例を提示する。

3.咽喉頭・頸部の感染症

著者: 宮本真理子 ,   吉原俊雄

ページ範囲:P.449 - P.455

Ⅰ.はじめに

 咽喉頭・頸部の違和感,腫脹などを訴え,受診する患者を診察する機会は多い。原因はウイルス性のものや細菌性のもの,その他さまざまで多岐にわたる。最近では,結核やHIV感染者も増加し,多様な症状の1つとして,耳鼻咽喉科を受診する患者も増えている。

 本稿では結核など特殊な感染症を中心に,その臨床像や治療について述べる。

シリーズ 知っておきたい生理・病態の基礎

6.眼球運動

著者: 肥塚泉

ページ範囲:P.457 - P.463

Ⅰ はじめに

 眼球運動には非共同性眼球運動(左右眼が別方向に動くもの)と共同性眼球運動(左右眼が同方向に動くもの)の2種類がある。非共同性眼球運動には輻輳および開散運動があり,これらは視標が近づいたり遠ざかったりする場合の視覚の安定化に寄与している。一方,共同性眼球運動には前庭性眼球運動,衝動性眼球運動,滑動性眼球運動,視運動性眼球運動の4種類があり,これら4種類の眼球運動系が単独,あるいは共同して,頭部や体部の動きによって生じる注視対象のブレを防ぐことによって視覚を安定化している。本稿では,共同性眼球運動の代表格である前庭性眼球運動と,これら4種類の共同性眼球運動のうち,滑動性眼球運動を除く3つのシステムが共通の神経回路を用いている急速相(眼振急速相・急速眼球運動)の生理,前庭系と小脳の関係について概説する。

原著

紅皮症に併発した頰粘膜癌の1例

著者: 野本剛輝 ,   伊藤博之 ,   稲垣太郎 ,   清水重敬 ,   岡本伊作 ,   古瀬寛子 ,   豊村文将 ,   鈴木衞

ページ範囲:P.465 - P.468

Ⅰ はじめに

 腫瘍性紅皮症は内臓悪性腫瘍と関連した紅皮症で悪性腫瘍の治療後も皮膚症状が難治性の場合は,重複癌の可能性を考慮する必要があるとされ,耳鼻咽喉科領域の癌を合併する報告例1~5)は少ない。

 今回紅皮症が契機となって発見された頰粘膜癌と胃癌の重複症例を経験したので,若干の文献的考察を含めて報告する。

口腔内より刺入した頸部箸異物例

著者: 脇坂浩之 ,   前谷俊樹 ,   高橋宏尚 ,   鵜久森徹 ,   本吉和美 ,   高木大樹

ページ範囲:P.469 - P.473

Ⅰ はじめに

 口腔,咽頭異物は日常診療でしばしば経験する疾患だが,そのほとんどは口腔や咽頭の浅層に留まる異物であり,外来で摘出可能なことが多い。その一方,箸などの異物が口腔内より刺入し脳脊髄や大血管の損傷をきたして重篤となる症例も存在する1~3)。このような症例では,異物の存在位置に対する画像診断の重要性は述べるまでもないが,摘出前後の気道確保や大血管損傷に伴う出血や血栓への対応,他科との連携なども必要となってくる。今回われわれは,口腔内より刺入した箸が副咽頭間隙を経て内頸動脈の深層を進み後頸部に停止していた症例を経験したので報告する。

BAHA両耳装用の1症例―有効性の評価

著者: 岩崎聡 ,   中西啓 ,   姜洪仁 ,   水田邦博

ページ範囲:P.475 - P.478

Ⅰ はじめに

 埋め込み型骨導補聴器(bone-anchored hearing aid:以下,BAHAと略す)は耳介後部の骨に埋め込むチタン製のインプラントと外部に装着する骨導補聴器(サウンドプロセッサー)からなり,音声情報を骨振動として中耳を介さず直接蝸牛に伝播し,聞き取る方法(図1)である1)。米国では1990年代から本格的に始まり,わが国では2001年にスタートして以来,現在までに11施設が行い,補聴器と同等かそれ以上の効果が報告2~4)されている。さらに,1999年米国では,5歳以上の小児に,2001年にはBAHAの両耳装用を,2002年には片側聾耳に対してFDAの承認を得ている。

 気導補聴器に関しては両耳装用の有効性が言われているが,骨導補聴器は頭蓋骨を介して対側耳の蝸牛刺激をするため両耳装用の有効性に対しては議論のあるところであった。しかし,最近BAHAの両耳装用は一側装用に比べて方向感検査や雑音下と静寂下の語音了解閾値検査で良好な結果が得られたとの報告5~8)がみられている。われわれは2003年からBAHA手術を開始し,これまで骨導・気導補聴器との比較結果を報告3)してきた。今回はBAHA両耳手術を行った1例を経験したので,両耳装用による効果を報告する。

声帯に限局して発生したアスペルギルス症の1例

著者: 大河内喜久 ,   佐伯忠彦 ,   榊優 ,   渡辺太志 ,   平野博嗣

ページ範囲:P.479 - P.482

Ⅰ はじめに

 耳鼻咽喉科領域における真菌症は外耳道,鼻副鼻腔や口腔咽頭に発生することが多く1),喉頭に限局した報告は稀である。

 今回われわれは,声帯に限局して発生したアスペルギルス症の1例を経験したので若干の文献的考察を加えて報告する。

急激に呼吸困難を呈した術後性声門下肉芽腫症の1例

著者: 長谷川直子 ,   石本晋一 ,   藤巻葉子

ページ範囲:P.483 - P.486

Ⅰ はじめに

 喉頭肉芽腫は広義の外傷が誘引となって慢性的な炎症が起こり,炎症部位に反応性の肉芽腫が生じる疾患である。しばしば呼吸不全などの長期気管挿管による挿管チューブのカフなどの慢性的な刺激で肉芽腫が生じる症例を経験する。肉芽腫は,気道を狭窄して呼吸困難,出血を起こしたりするため治療に難渋することが多い。今回開胸手術後に1週間気管内挿管をされ,声門下に巨大な肉芽を生じて呼吸困難を呈したが,喉頭微細手術による外科的切除にて根治しえた1例を経験したので報告する。

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あとがき

著者: 小川郁

ページ範囲:P.492 - P.492

 長らく伝統ある本誌『耳鼻咽喉科・頭頸部外科』の編集委員として中心的な重責を担われた八木聰明先生の後任として,今回,編集委員の末席に加えさせていただきました。私にとりましても『耳鼻咽喉科・頭頸部外科』は最初に学術論文を投稿させていただいた学術誌であり,また,若い教室員の初めての論文の投稿・査読をお願いするなど,大変お世話になっておりますので,その編集委員の一員に加えさせていただきましたことは,大変光栄なことと存じております。しかし,八木聰明先生の後任としての一人前の業務をこなすことができるまで,どれだけ修行が必要か見当もつきません。これまでもいくつかの学会誌の編集委員を務めさせていただきましたが,学会誌の場合は学術的査読とその結果から採択の是非を検討することが業務の中心でした。先月,初めて本誌の編集委員会に出席いたしましたが,本誌の編集委員には査読と採択の検討以外に特集やシリーズの企画という大きな仕事が加わることがわかりました。しかも,毎月の編集委員会です。加えて,編集委員が3人ですので,3か月毎にこの『あとがき』の担当がまわってきます。編集委員会の間,今のスケジュールのどこにこの重要な業務を組み込めばいいのか,ひたすら考えていました。文才が全くないために,理系で医学部を目指した私にとりましては,特にこの『あとがき』の作文は一番頭の痛い仕事になりそうですが,稚拙な文章はご容赦いただき末永くお付き合いいただけましたら幸いです。

基本情報

耳鼻咽喉科・頭頸部外科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1316

印刷版ISSN 0914-3491

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