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雑誌目次

雑誌文献

耳鼻咽喉科・頭頸部外科82巻9号

2010年08月発行

雑誌目次

目でみる耳鼻咽喉科

耳介から耳前部に生じた動静脈奇形の1例

著者: 末田尚之 ,   福崎勉 ,   市川大輔 ,   山野貴史 ,   宮城司道 ,   中川尚志 ,   大山拓人 ,   高木誠司 ,   大慈弥裕之

ページ範囲:P.582 - P.584

Ⅰ.はじめに

 動静脈奇形(以下,AVMと略す)の根治的治療は,手術で病変を完全に摘出することが最も望ましい。しかし,顔面AVMでは摘出術に伴う術中出血の問題に加えて美容的側面も十分に考慮する必要がある。今回われわれは,出血を繰り返す左耳介動静脈奇形症例に対して栄養動脈塞栓術,摘出術および再建術をそれぞれ脳神経外科,耳鼻咽喉科,形成外科の三科合同で行った症例を経験したので報告する。

原著

小脳梗塞による急性感音難聴2例に対するステロイド治療

著者: 福田宏治 ,   佐藤尚徳 ,   渡辺聡哉 ,   久保直彦 ,   小原智子 ,   野崎有一 ,   佐藤宏昭

ページ範囲:P.585 - P.590

Ⅰ はじめに

 急性感音難聴は日常診療で,しばしば遭遇する疾患であるが,時に脳血管障害が原因で発症する例のあることが知られている1~3)。その発生頻度は1.2%と低いが1),中枢神経症状に乏しい症例もあるため注意を要する。今回われわれは小脳梗塞による急性感音難聴の2症例を治療する機会を得たので,その臨床経過を述べるとともに若干の文献的考察を加えて報告する。

中鼻甲介より発生した骨血管腫の1症例

著者: 西平茂樹 ,   金洋一

ページ範囲:P.591 - P.596

Ⅰ はじめに

 骨に発生する血管腫である骨血管腫(intraosseous hemangioma)は骨腫瘍全体の0.7%を占め,脊椎,頭蓋骨,顔面骨の順に好発する1)。頭蓋骨・顔面骨血管腫は骨腫瘍全体の0.2%を占め,その約半数が頭蓋骨に発生し,下顎骨には上顎骨の約2倍発生する2)。今回,われわれは中鼻甲介に発生した海綿状骨血管腫の1例を経験したので若干の文献的考察を加えて報告する。

嗅神経芽細胞腫13例の臨床的検討

著者: 宇和伸浩 ,   吉野邦俊 ,   藤井隆 ,   上村裕和 ,   赤羽誉 ,   鈴木基之 ,   西山謹司 ,   富田裕彦 ,   寺田友紀 ,   佐伯暢生 ,   佐川公介 ,   毛利武士 ,   冨士原将之 ,   阪上雅史

ページ範囲:P.597 - P.602

Ⅰ はじめに

 嗅神経芽細胞腫は1924年,Bergerら1)が初めて報告した嗅上皮から発生する比較的稀な鼻腔悪性腫瘍である。その発生頻度は全鼻腔腫瘍の0.25%といわれている2)。治療法としては手術と放射線治療が主であるが,その解剖学的な位置より治療法は施設によりさまざまである。今回われわれは今後の治療方針の決定のため過去に経験した嗅神経芽細胞腫13例の臨床的特徴,治療成績を中心に検討を行い文献的考察を加えて報告する。

口内炎を初発症状とした尋常性天疱瘡の2例

著者: 池田怜吉 ,   東海林史 ,   粟田口敏一 ,   千釜理佳 ,   小林俊光

ページ範囲:P.603 - P.606

Ⅰ はじめに

 難治性口内炎の鑑別疾患として尋常性天疱瘡はよく知られているが,実際に耳鼻咽喉科医が遭遇する機会は少なく,確定診断までに時間を要した報告が散見される1~3)

 今回われわれは尋常性天疱瘡の2例を経験したので報告する。

本態性音声振戦症に対する芍薬甘草湯®の使用経験

著者: 小町太郎 ,   三枝英人 ,   中村毅 ,   山口智 ,   門園修 ,   竹田数章

ページ範囲:P.607 - P.612

Ⅰ はじめに

 本態性音声振戦症は,発声時にのみ両側声帯,咽頭壁,軟口蓋などに4~5Hzの周波数の律動的な相反性反復運動が出現し,声の震えを生じる疾患であり,動作性振戦症の一亜型として錐体外路系疾患に分類される1)。その原因の詳細については明らかになっていないが,大脳基底核に原因病巣を求めるとする説が有力である1)。治療方法として,β遮断薬や抗痙攣薬,抗不安薬などによる薬物治療2,3)のほかに,音声訓練4~6),ボツリヌス毒素の甲状披裂筋内注入3,7,8),深部脳刺激療法9,10)などの報告があるが,有効で,かつ副作用が少ない治療法は確立されていないのが現状である3)。また,本態性音声振戦症の好発年齢は50歳以上,特に70歳以上の高齢発症例の多いことが報告されていることから3,11,12),治療を行うに当たっては,既往疾患や治療による合併症についても十分検討を行う必要があると考えられる。一方,最近,本態性振戦症に対して漢方製剤である芍薬甘草湯®が有効であったとする報告13,14)があるため,今回,われわれは本態性音声振戦症の3症例に対して,芍薬甘草湯®を投与し,その効果につき検討を行った。

当科における深頸部膿瘍症例の検討

著者: 川上美由紀 ,   本吉和美 ,   鵜久森徹 ,   高橋宏尚 ,   脇坂浩之

ページ範囲:P.613 - P.617

Ⅰ はじめに

 抗菌薬が普及した今日,重篤な感染症症例に接する機会は多くないが,高齢者や基礎疾患をもつ症例では縦隔膿瘍を伴う深頸部膿瘍例などの感染重篤化例をしばしば経験する。初期対応の遅れが致死的な結果につながることもあることから,深頸部膿瘍に対しては速やかな診断と適切な初期治療が重要であると考えられる。今回われわれは過去4年間に当科で経験した深頸部膿瘍症例について,患者背景,原因疾患,膿瘍の範囲,治療と経過,ガス産生と起炎菌,基礎疾患や合併症の有無などについて検討したので報告する。

ハーモニック®を用いた頭頸部手術

著者: 酒井昭博 ,   大上研二 ,   戎本浩史 ,   杉本良介 ,   槙大輔 ,   厚見拓 ,   飯田政弘

ページ範囲:P.619 - P.622

Ⅰ はじめに

 ハーモニック®〔Ethicon Endo-Surgery, USA,(以下,ハーモニックと略す)〕は内視鏡下外科手術で広く用いられている超音波凝固切開装置である。超音波エネルギーを利用した手術機器で,凝固切開能力に優れ,電気メスに比べて組織の熱損傷が少なく止血効果に優れる利点をもつ1)。近年,ブレードの改良とともに頭頸部手術への応用も可能となり,その有用性についての報告も散見されるようになってきた2~5)。当施設では2008年よりハーモニックを導入して頭頸部手術(頸部郭清,甲状腺,耳下腺,顎下腺など)を行っている。今回われわれはハーモニックの有用性と安全性を明らかにするために,ハーモニック導入前後の手術関連因子に対する影響について従来法と比較し検討を行ったので報告する。

眼症状を呈した蝶形骨洞真菌症の2症例

著者: 干野季美子 ,   中丸裕爾 ,   高木大 ,   福田諭

ページ範囲:P.623 - P.628

Ⅰ はじめに

 副鼻腔真菌症は寄生型(非侵襲型)と破壊型(侵襲型)に分類される1)。寄生型は真菌が副鼻腔内にとどまり周囲組織には浸潤しないため,手術を行って副鼻腔を開放し真菌を除去することで予後良好な経過を示す。一方,破壊型は骨破壊や血管浸潤を伴いながら周囲組織に進展するため,大きく安全域をとることが難しい副鼻腔領域では手術で完全に真菌を除去することが難しく,予後不良な経過をたどることが多い。

 副鼻腔のなかでも蝶形骨洞は,眼窩や視神経,内頸動脈などの重要臓器に隣接している。このため,蝶形骨洞から炎症や圧迫が周囲組織に波及すると複視や視力障害などの視覚器障害が生じやすい。さらに破壊型真菌症が原因の場合は内頸動脈や脳幹を障害し不幸な転機をたどる場合も多い。

 今回われわれは,複視と頭痛という同様の症状で発症し,一方は寄生型もう一方は破壊型と考えられた蝶形骨洞真菌症の2症例を経験したので,若干の文献的考察をふまえ報告する。

シリーズ 知っておきたい生理・病態の基礎

8.聴覚末梢

著者: 狩野章太郎

ページ範囲:P.631 - P.635

Ⅰ はじめに

 蝸牛において有毛細胞の上部では基底板の振動が受容器電位に変換され(mechanoelectrical transduction),内有毛細胞と聴神経をつなぐシナプスでは受容器電位がスパイク列に変換される。Mechanoelectrical transductionは外有毛細胞の増幅機構にも関与している。有毛細胞の上下という狭い領域にこのような精緻な機構が存在し,今までは不明な点が多かったがこの10年で画期的な知見が続々と得られている。

書評

骨・関節X線写真の撮りかたと見かた 第8版

著者: 小寺吉衞

ページ範囲:P.630 - P.630

刻々と変化する撮影法や読影法にも対応

 本書が第8版と伺って驚くとともに著者堀尾重治氏の不断の努力と研鑽に敬服するばかりである。医用画像機器の進歩発展は著しく,その撮影法や読影法は刻々変化している。その中で,このような書を長く世に送り出すためには並々ならぬ力量が必要であることはいうまでもない。

 本書を見てまず目に付くのは図が大変明瞭でわかりやすいことである。部位ごとに解剖図,撮影法,画像があり,それらの部位で考えられる疾患の画像として単純X線像が,必要であればCT像,MR像が繊細なタッチで描画されている。解剖図も画像も,すべての図が著者の手によって描かれているのが本書の大きな特徴であり,病態のとらえかたが初心者にも理解しやすい。また随所に参考・noteというコラムや表があり,症状の解説や読影のポイントなどが記述されている。

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あとがき

著者: 吉原俊雄

ページ範囲:P.644 - P.644

 臨床研修制度の改変後,大学,市中病院の勤務医の流れに変化が出て久しいが,耳鼻咽喉科医については日耳鼻調査によると新しく耳鼻咽喉科を選択する医師数は改変前に比較して減少したままである。耳鼻咽喉科医の勤務医,開業医の理想的な数についてははっきりとした答えは述べられないが,制度改変前後の新規の女性耳鼻咽喉科医師数に大きな変化はなく,むしろ新規の男性耳鼻咽喉科医の数,比率の減少が目立つ。医師不足の解消の一端として厚労省,日本医師会,各大学病院などでは女性医師復帰支援に関するさまざまな提言,プログラム作成が成されており,一定の成果は上がっていると考えられる。唯,女性医師といってもその背景は多様である。開業し地域医療に根ざしている先生,週の何日かを定期的に勤務(パート医)している先生,フルタイム勤務医,当直免除勤務医,例えば午後5時までと時間を制約している先生,外来のみの勤務などであり,何れもその先生の価値観に従うものであれば他人が口をはさむものではないといえます。耳鼻咽喉科医不足の病院は多く,復帰希望女性医師はどのような形態でもウェルカムと推測されます。ハード面については多くの復帰プログラムにあるように徐々に解決しうる問題ですが,個々の価値観,考え方については別問題と思われます。年単位で完全に医療から遠ざかっている女性医師支援は外来に来て患者さんと接する,問診をとる,耳・鼻・喉を診る,薬を処方するなどきわめてprimitiveなことから支援がはじまります。さらに女性医師が増えるにつれ,今後は女性医師間の支援の格差・不平等感に対していかに気配りをするのかが次のステップとなるでしょう。

 さて,先月号に引き続いて本号も原著論文を多く掲載させていただきました。内容も幅広く,貴重な症例が紹介されています。ご一読下さり,日々の臨床に生かしていただけたらと思います。

基本情報

耳鼻咽喉科・頭頸部外科

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN 1882-1316

印刷版ISSN 0914-3491

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