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文献詳細

雑誌文献

耳鼻咽喉科・頭頸部外科83巻11号

2011年10月発行

文献概要

原著

発症時に中耳炎を有していた末梢性顔面神経麻痺の4症例

著者: 三輪徹1 蓑田涼生1 増田聖子1 湯本英二1

所属機関: 1熊本大学医学部耳鼻咽喉科・頭頸部外科

ページ範囲:P.875 - P.881

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Ⅰ はじめに

 耳炎性顔面神経麻痺は,急性あるいは慢性中耳炎(真珠腫性中耳炎を含む)に起因する顔面神経麻痺と定義されている1)。その頻度は,過去の報告症例2~7)をまとめると全末梢性顔面神経麻痺患者5,466例の2.8%であり比較的稀な疾患であるといえる。その内訳は急性中耳炎が48.5%,真珠腫性中耳炎が31.6%,真珠腫でない慢性中耳炎(以下,慢性中耳炎と略す)が19.8%である。真珠腫性中耳炎が原因である場合,診断・治療に迷うことは少ないが,中耳CT検査所見において軟部影を示すが中耳腔に活動性の炎症所見を示さない症例においては,顔面神経麻痺の原因が耳炎性なのかそれともほかに存在するのか,診断に苦慮し,結果として治療法の選択に迷うことがある。

 過去9年間に当科を受診した末梢性顔面神経麻痺患者は90例で,そのうち中耳炎を合併していたものは12例(13.3%)であった。その内訳は,真珠腫性中耳炎が5例,慢性中耳炎が5例,滲出性中耳炎が2例,急性中耳炎は認めなかった。このうち外科的治療(顔面神経減荷術,鼓室形成術)を施行した症例は,真珠腫性中耳炎4例,慢性中耳炎4例であった。また,耳炎性顔面神経麻痺と診断した症例は,真珠腫性中耳炎3例,慢性中耳炎3例の計6例(6.7%)であった。今回われわれは,過去9年間に当科で経乳突的顔面神経減荷手術を行い,経過を追うことができた,発症時に中耳炎を有していた末梢性顔面神経麻痺4症例についてその治療経過を報告するとともに,原因疾患の診断と手術的治療の適応について考察を行ったので報告する。

参考文献

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掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1316

印刷版ISSN:0914-3491

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