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文献詳細

雑誌文献

耳鼻咽喉科・頭頸部外科83巻12号

2011年11月発行

特集 知っておきたい皮膚科の知識―専門医の診方・治し方

乾癬

著者: 森実真1

所属機関: 1岡山大学大学院医歯薬学総合研究科皮膚科学

ページ範囲:P.923 - P.925

文献概要

Ⅰ.病態理解のポイント

 乾癬は中年に好発する難治性の慢性炎症性角化症である。発症頻度は日本人で0.02~0.1%,欧米白人で2~3%と報告されている1,2)

 乾癬の病変部では表皮角化細胞の増殖が正常の30倍に亢進している。さらに表皮のターンオーバー時間(表皮が角化し剝離する入れ換わり周期)が正常表皮(約30~45日)に対して著明に短縮(5~6日)している3)。乾癬の病因はいまだに不明であるが,長年の間,表皮角化細胞の異常な増殖と分化が主たる病因であると考えられていた。しかしながらシクロスポリンなどの免疫抑制剤の有効性が次第に明らかになり,T細胞を中心とした細胞性免疫が重要な役割を果たしていると考えられるようになった4)。さらにSCIDマウスを用いた実験から活性化CD4陽性細胞が乾癬発症に重要であることが示された5)。従来CD4陽性細胞はTh1,Th2の二極に分けられており,細胞性免疫を誘導するTh1の関与が乾癬には重要であると考えられていたが,近年Th1でもTh2でもないTh17の概念が病態論で注目を集めるようになり,Th17細胞が産生するIL-17やIL-22,あるいはTh17細胞を維持・増殖させるIL-23などが乾癬の病変形成に重要な役割を果たすことが明らかになった6)。また形質細胞様樹状細胞(plasmacytoid dendritic cells:pDC)がTh1,Th17細胞を誘導する骨髄系樹状細胞を,Ⅰ型インターフェロンを介して活性化することや,pDCを活性化するためには刺激を受けた表皮角化細胞が重要であることなども報告されてきた7)

参考文献

1)Aoki T, et al:Psoriasis in Japan. Arch Dermatol 104:328-329, 1971
2)Lomholt G:Prevalence, spontaneous course, and genetics, G. E. C. Gad, Copenhagen, 1963, p32
3)Weinstein GD, et al:Cell kinetic basis for pathophysiology of psoriasis. J Invest Dermatol 85:579-583, 1985
4)Lebwohl M:Psoriasis. Lancet 361:1197-1204, 2003
5)Wrone-Smith T, et al:Dermal injection of immunocytes induces psoriasis. J Clin Invest 98:1878-1887, 1996
6)Blauvelt A:New concepts in the pathogenesis and treatment of psoriasis:key roles for IL-23, IL-17A and TGF-β1. Expert Rev Dermatol 2:69-78, 2007
7)Nestle FO, et al:Psoriasis. N Engl J Med 361:496-509, 2009
8)Finlay AY:Current severe psoriasis and the rule of tens. Br J Dermatol 152:861-867, 2005
9)大槻マミ太郎・他:日本皮膚科学会マニュアル 乾癬における生物学的製剤の使用指針および安全対策マニュアル(2011年版).日皮会誌 121:1561-1572,2011

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1316

印刷版ISSN:0914-3491

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