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文献詳細

雑誌文献

耳鼻咽喉科・頭頸部外科83巻12号

2011年11月発行

文献概要

特集 知っておきたい皮膚科の知識―専門医の診方・治し方

性感染症

著者: 五十嵐敦之1

所属機関: 1NTT東日本関東病院皮膚科

ページ範囲:P.935 - P.937

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Ⅰ.はじめに

 性感染症は性器に生じる疾患と考えられがちであるが,近年性行動の多様化や性風俗産業の隆盛により口腔咽頭の性感染症が増加傾向にあり問題となっている。日本性感染症学会が発行する「性感染症 診断・治療 ガイドライン2008」には「口腔咽頭と性感染症」という項目が新たに設けられ,次のように注意を喚起している1)

 「近年,oral sexの一般化やoral sexを行う性風俗店の出現などにより,本来,性器にみられた種々の性感染症が口腔咽頭粘膜にも生じてきた。さらに口腔咽頭が感染源になる可能性も生じてきた。しかし,口腔咽頭粘膜は常在菌や唾液による抗菌作用により,症状所見が現れにくく,外来からの菌の減少・消退の可能性もあるので,口腔咽頭の診断,治療には慎重な考慮を要する。耳鼻咽喉科医は,常に口腔咽頭におけるSTD感染に注意して診療に当たらなければならない。口腔咽頭が感染源とならぬよう,他科との相互診を要する。

 耳鼻咽喉科医は,性感染症を性器のみの疾患としてではなく,口腔咽頭も含めて,常に注意して観察しなければならない。近年,口腔咽頭の淋菌やクラミジア感染の増加,あるいは感染源となる症例がみられており,泌尿器科,婦人科,皮膚科,口腔外科などとコミュニケーションを十分にとる必要がある。口腔咽頭のSTD感染あるいは感染疑の場合,まず耳鼻咽喉科への紹介を受け,症状,所見を観察し,生活状況を把握のうえ,今後の治療方針を決めたい。同時にoral sexによるSTD感染予防対策が必要である。」

 口腔咽頭の性感染症は症状が現れにくく,治療も抵抗性のことがあり,性感染症の拡大が懸念される。耳鼻咽喉科医が遭遇する機会は決して少なくないといえよう。

参考文献

1)日本性感染症学会:性感染症診断・治療ガイドライン2008.日性感染症会誌 19(1 Suppl):35-38,2008
2)荒牧 元:口腔咽頭粘膜疾患アトラス.医学書院,東京,2001,p48,50
3)小森康雄・他:HIV感染者/AIDS患者200例の口腔症状に関する臨床的観察.日本口腔科学会雑誌 53:155-160,2004
4)三鴨廣繁・他:クラミジア咽頭感染の実情.病原微生物検出情報(Infectious Agents Surveillance Report(IASR)) 25:200-201,2004

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1316

印刷版ISSN:0914-3491

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