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特集 治りにくい症状への対応
治りにくい浮動感・めまい
著者: 肥塚泉1
所属機関: 1聖マリアンナ医科大学耳鼻咽喉科
ページ範囲:P.997 - P.1002
文献購入ページに移動Ⅰ.はじめに
末しょう性めまい疾患の予後は比較的良好であることが知られている。特に一側性の末しょう性めまい疾患においては,中枢前庭系が有する強力な代償機能(前庭代償)によって左右の前庭系に生じた不均衡が修復されるからである。しかしながら,さまざまな薬物療法に対して抵抗性を示してめまい発作を繰り返したり,程度の差はあれ,めまいやふらつきが持続する症例が少なからず存在する。また末しょう性めまい疾患であっても,両側障害例では前庭代償による修復が不完全なため,ふらつきや平衡障害が持続しやすいことが知られている。これらのいわゆる“慢性めまい”はその発症パターンから,間歇期を有しながら症状を繰り返す反復型1)と常時めまいやふらつきを感じる持続型2)とに分類される。さらに持続型は,症状が改善傾向を示す改善消失型,変化がない不変一定型,症状が進行する悪化進行型,改善と悪化を繰り返す寛解増悪型に分けられる3)。反復型にはメニエール病や良性発作性頭位めまい症などが相当し,持続型には前庭神経炎の代償障害例などが当てはまる。本稿では主に,末しょう性めまい疾患を原因とする慢性めまいへの対応について述べる。
末しょう性めまい疾患の予後は比較的良好であることが知られている。特に一側性の末しょう性めまい疾患においては,中枢前庭系が有する強力な代償機能(前庭代償)によって左右の前庭系に生じた不均衡が修復されるからである。しかしながら,さまざまな薬物療法に対して抵抗性を示してめまい発作を繰り返したり,程度の差はあれ,めまいやふらつきが持続する症例が少なからず存在する。また末しょう性めまい疾患であっても,両側障害例では前庭代償による修復が不完全なため,ふらつきや平衡障害が持続しやすいことが知られている。これらのいわゆる“慢性めまい”はその発症パターンから,間歇期を有しながら症状を繰り返す反復型1)と常時めまいやふらつきを感じる持続型2)とに分類される。さらに持続型は,症状が改善傾向を示す改善消失型,変化がない不変一定型,症状が進行する悪化進行型,改善と悪化を繰り返す寛解増悪型に分けられる3)。反復型にはメニエール病や良性発作性頭位めまい症などが相当し,持続型には前庭神経炎の代償障害例などが当てはまる。本稿では主に,末しょう性めまい疾患を原因とする慢性めまいへの対応について述べる。
参考文献
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