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原著
顔面神経麻痺で発見された肺腺癌の側頭骨転移の1例
著者: 桝谷将偉1 武市紀人1 北尾恭子2 福田諭1
所属機関: 1北海道大学医学部付属病院耳鼻咽喉科・頭頸部外科学教室 2札幌社会保険総合病院耳鼻咽喉科
ページ範囲:P.1043 - P.1048
文献購入ページに移動顔面神経麻痺は臨床の場においてしばしば経験する疾患である。一般に原因不明であるベル麻痺,ウイルス感染を原因とするラムゼイ・ハント症候群が多く認められるが,いずれの場合も良性の疾患であり,副腎皮質ステロイド,抗ウイルス薬を含む治療法がある程度確立されている。しかしながら,治癒率は必ずしも高くはなく,外来において長期にわたる経過観察が必要となる場合も少なくない1,2)。一方,稀に悪性腫瘍を原因とした顔面神経麻痺が認められる。耳下腺癌などの頭頸部領域の癌では,腫瘤や痛みなどによる自・他覚的所見が得られやすいこと,顔面神経に近接した部位に原因疾患が存在する場合は,画像検査で診断することが可能である。しかし,原発巣が頭頸部領域外である場合,PETなどの全身検索が必要となり,しばしば診断が困難である。また,原発巣が不明の場合,良性疾患であるベル麻痺と診断され,長期にわたり悪性腫瘍が無治療のまま放置される危険性がある。今回われわれは顔面神経麻痺を初発症状とし,側頭部腫瘤手術の術前検査において偶然に肺の原発巣が発見された症例を経験した。顔面神経麻痺の原因に悪性腫瘍を念頭におくことの重要性を示すために本症例の経過を報告する。
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