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特集 耳鼻咽喉科感染症の完全マスター Ⅰ.耳鼻咽喉科感染症の基本をマスターする
6.SSI(surgical site infection)の概念とその予防
著者: 中山明峰1
所属機関: 1名古屋市立大学医学部耳鼻咽喉科
ページ範囲:P.47 - P.49
文献購入ページに移動Ⅰ はじめに
手術部位感染(surgical site infection:SSI)は患者自身に負担がかかるのみならずその治療は医療従事者にとっても負担となるうえ,患者の不信を生む可能性も孕んでおり,場合によっては医療訴訟に至る症例もある1)。そのため,術前より万全を期するべく対策を立てる必要がある。
米国では1999年にThe Hospital Infection Control Practices Advisory Committeeより,SSI予防のガイドライン2)が発表され,以来世界的に積極的な討論や報告がなされている。これに対し,わが国ではSSIに関する報告は少ない。感染症に起因する疾患が手術対象になることが多い耳鼻咽喉科領域の手術において,術後感染の可能性が高いにもかかわらず一般外科と比較するとその情報量の少なさは顕著である。SSI予防をすることにより手術を成功に導くのみならず,必要のない抗菌薬投与を削減できると考える3,4)。
本項では米国のガイドラインをもとにSSIに対する考え方ならびに抗菌薬投与方法を紹介する。
手術部位感染(surgical site infection:SSI)は患者自身に負担がかかるのみならずその治療は医療従事者にとっても負担となるうえ,患者の不信を生む可能性も孕んでおり,場合によっては医療訴訟に至る症例もある1)。そのため,術前より万全を期するべく対策を立てる必要がある。
米国では1999年にThe Hospital Infection Control Practices Advisory Committeeより,SSI予防のガイドライン2)が発表され,以来世界的に積極的な討論や報告がなされている。これに対し,わが国ではSSIに関する報告は少ない。感染症に起因する疾患が手術対象になることが多い耳鼻咽喉科領域の手術において,術後感染の可能性が高いにもかかわらず一般外科と比較するとその情報量の少なさは顕著である。SSI予防をすることにより手術を成功に導くのみならず,必要のない抗菌薬投与を削減できると考える3,4)。
本項では米国のガイドラインをもとにSSIに対する考え方ならびに抗菌薬投与方法を紹介する。
参考文献
1)Emori TG, et al:An overview of nosocomial infections, including the role of the microbiology laboratory. Clin Microbiol Rev 6:428-442, 1993
2)Mangram AM, et al:Guideline for prevention of surgical site infection, 1999. Infect Control Hosp Epidemiol 20:250-269, 1999
3)中山明峰:SSI(Surgical Site Infection)の概念とその予防.専門医通信 97:24-25,2008
4)清 一哲・中山明峰:予防医学からみた術後感染症・SSI.JOHNS 25:1759-1762,2009
5)長谷川賢作・他:中耳手術後の感染予防についての検討.耳鼻臨床 102:103-108,2009
6)上村尚樹・他:頭頸部手術術後における予防的抗菌薬投与.術後投与は必要か.日耳鼻感染症誌 28:19-23,2010
7)藤田 岳・他:小児口蓋扁桃摘出術における予防的抗菌薬投与の検討.抗菌薬術前単回投与と術後7日間投与の比較.小児耳鼻咽喉科 31:76-81,2010
8)清 一哲・他:耳鼻咽喉科領域における手術部位感染防止のための予防的抗菌薬投与方法.耳鼻臨床 99:697-704,2006
9)清 一哲・他:耳鼻咽喉科領域における手術部位感染防止を目的とした周術期抗菌薬投与法の再考.頭頸部外科 19:141-146,2009
10)DuMortier JJ:The resistance of healing wounds to infection. Surg Gynecol Obstet 56:762-766, 1933
11)Morain WD, et al:Wound healing in diabetes mellitus. Clin Plast Surg 17:493-501, 1990
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