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特集 こんなときどうする?―頭頸部外科編
放射線化学療法中の患者の気管カニューレ周囲から突然大出血―気管腕頭動脈瘻への対応
著者: 山本一宏1 丹生健一2
所属機関: 1神戸赤十字病院耳鼻咽喉科 2神戸大学大学院医学研究科外科系講座耳鼻咽喉科頭頸部外科学分野
ページ範囲:P.487 - P.490
文献購入ページに移動気管腕頭動脈瘻(図1)は気管切開の稀な合併症で0.1~1%とその発生頻度は低いが,迅速な診断と外科的治療が行われなければ致死的な経過をたどることが多い1)。気管切開口周囲からの出血は術後早期(48時間以内)では手術時の止血操作が不十分または患者の凝固機能に異常があった場合に起こりうるが,3日目以降では気管腕頭動脈瘻が一因になりうる2)。気管切開の位置が低位である場合や腕頭動脈が高位である場合には気管カニューレのカフや先端による持続的な圧迫のために気管前壁に生じたびらんから気管腕頭動脈瘻を形成し,大出血に至ることがある3)。また,適切な位置(第2,3気管輪)で気管切開が行われている場合でも気管カニューレのカフもしくは先端が解剖学的には腕頭動脈に近接しているので1),この合併症が起こりうるということを忘れてはいけない。
大容量低圧カフの気管カニューレが使用されている現在では発生頻度は減少傾向といわれている。最近では頭頸部癌に対して根治切除困難な症例以外でも臓器温存目的に化学療法同時併用の放射線治療が積極的に行われている。気管切開口周囲に放射線治療が行われている場合には,適切な位置で気管切開が行われ,適切な気管カニューレ管理が行われている場合でも,気管腕頭動脈瘻が発生する可能性があるので,今後の発生頻度の上昇が懸念される。
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