うつ状態を併存する難治性良性発作性頭位めまい症へのミルタザピン併用療法の検討
著者:
新井基洋
,
牧山祐希
,
中山貴子
,
高橋直一
,
五島史行
,
徳増厚二
ページ範囲:P.1027 - P.1033
Ⅰ.はじめに
めまい患者は精神的不安を認め1),それがめまいを難治化させる原因となっていることがあり,予後にも大きく影響する2,3)。これまでわれわれは,めまいの薬物治療のみで改善が認められなく,うつ状態を併存する難治性患者を対象に,入院加療による集団リハビリテーション3~5)(以下,集団リハと略す)に加え,抗うつ薬を組み合わせた併用療法の効果を検討してきた。結果はself-rating depression scale(SDS)6,7)≧50のうつ状態群には集団リハ,めまい治療薬に加えてselective serotonin reuptake inhibitor(SSRI)の併用が望ましいことを報告した8,9)。一方,ミルタザピンはSSRIに比べ効果発現が早く,抗うつ効果が高いといわれており10~12),不安,睡眠障害を改善する効果も期待されている13,14)。抑うつ,不安,不眠などを併存する難治性めまい患者に対するミルタザピンの精神症状の効果の報告は見当たらない。そこで本研究では,うつ状態を併存する良性発作性頭位めまい症(BPPV)に対しミルタザピンの併用療法によるQOL〔Physical Component Summary(PCS),Mental Component Summary(MCS)〕の改善とその有効性を明らかにし,加えて同対象群における年齢による治療効果の差を明らかにする目的で検討を行った。