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特集 メニエール病Update
中耳加圧治療
著者: 五島史行1
所属機関: 1日野市立病院耳鼻咽喉科
ページ範囲:P.1007 - P.1010
文献購入ページに移動Ⅰ はじめに
メニエール病は回転性めまい発作を反復し,それに伴った耳鳴,難聴などの蝸牛症状の反復を特徴とする疾患で,内リンパ水腫の形成が発症の主たるメカニズムと考えられている。わが国においては,その内リンパ水腫の軽減を目的として浸透圧利尿剤などの薬物療法が第一選択の治療として行われている。一方で,難治性メニエール病の治療には内リンパ囊手術,鼓室内ゲンタマイシン注入術,鼓室内ステロイド注入術1,2)などが行われているが,治療に対する患者の侵襲が大きく,治療効果も一定した結論を得ていない。以前からメニエール病と中耳圧の関係を示唆する報告は多かったが,近年,スウェーデンにおいてメニエール病に対する治療法のひとつとして携帯型加圧装置であるMeniett®(図1)を使用した中耳加圧療法が開発された。1999年にはアメリカ合衆国食品管理局(FDA)に認可された後に欧米にて広く臨床試験が行われ,メニエール病への有効性が報告された3,4)。わが国においても,將積ら5,6)によりMeniett®治療法の有効性については報告されたが,2004年度の時点では厚生労働省の認可を得ておらず,広く普及していないという現状がある。日野市立病院では2004年9月より倫理委員会の承認ならびに患者の了承のもと,難治性メニエール病に対するMeniett®治療を開始し,報告した7)。それらの概略を報告する。またほかの中耳加圧治療として,近年,Watanabeら8)によって報告された鼓膜マッサージ器を用いた方法,およびドイツのEnttex GmbHより発売されているP-100について概説する。
メニエール病は回転性めまい発作を反復し,それに伴った耳鳴,難聴などの蝸牛症状の反復を特徴とする疾患で,内リンパ水腫の形成が発症の主たるメカニズムと考えられている。わが国においては,その内リンパ水腫の軽減を目的として浸透圧利尿剤などの薬物療法が第一選択の治療として行われている。一方で,難治性メニエール病の治療には内リンパ囊手術,鼓室内ゲンタマイシン注入術,鼓室内ステロイド注入術1,2)などが行われているが,治療に対する患者の侵襲が大きく,治療効果も一定した結論を得ていない。以前からメニエール病と中耳圧の関係を示唆する報告は多かったが,近年,スウェーデンにおいてメニエール病に対する治療法のひとつとして携帯型加圧装置であるMeniett®(図1)を使用した中耳加圧療法が開発された。1999年にはアメリカ合衆国食品管理局(FDA)に認可された後に欧米にて広く臨床試験が行われ,メニエール病への有効性が報告された3,4)。わが国においても,將積ら5,6)によりMeniett®治療法の有効性については報告されたが,2004年度の時点では厚生労働省の認可を得ておらず,広く普及していないという現状がある。日野市立病院では2004年9月より倫理委員会の承認ならびに患者の了承のもと,難治性メニエール病に対するMeniett®治療を開始し,報告した7)。それらの概略を報告する。またほかの中耳加圧治療として,近年,Watanabeら8)によって報告された鼓膜マッサージ器を用いた方法,およびドイツのEnttex GmbHより発売されているP-100について概説する。
参考文献
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