原著
DICを合併したEBウイルス関連血球貪食症候群の1例
著者:
野山和廉
,
橘智靖
,
多田寛
,
平井美紗都
,
三木健太郎
,
銅前崇平
ページ範囲:P.299 - P.303
Ⅰ.はじめに
血球貪食症候群(hemophagocytic sndrome:HPS)は,骨髄やリンパ網内系において組織球の増殖と血球貪食を呈する病態である。成人症例では大部分が2次性で,感染症,悪性リンパ腫および膠原病などさまざまな基礎疾患が原因となり得る。なかでもウイルス感染症の頻度が高く,Epstein-Barr virus(EBV)によるものが最多といわれている。EBV関連血球貪食症候群(Epstein-Barr virus-associated hemophagocytic syndrome:EBV-AHS)では,EBVがT細胞に感染し過剰に活性化されたT細胞とマクロファージによる高サイトカイン血症(cytokaine strom)が持続し,多臓器不全から死亡に至る例も少なくない。特に成人におけるEBV-AHSは重症化例が多いと報告されている1,2)。しかし,小児に比べ頻度が低く認知度は十分とはいえない。今回われわれは,EBV-AHSを発症し,劇症化した1例を経験したので報告する。