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文献詳細

雑誌文献

耳鼻咽喉科・頭頸部外科84巻4号

2012年04月発行

特集 最新の漢方診療

難聴・耳鳴

著者: 神崎晶1

所属機関: 1慶應義塾大学医学部耳鼻咽喉科・頭頸部外科

ページ範囲:P.269 - P.271

文献概要

Ⅰ はじめに

 難聴・耳鳴の原因は感覚器である内耳,脳神経に由来することから,従来まで特効薬がなく,一つの手段として漢方薬を試される場合も少なくない。一例報告は多数ある。また,漢方薬を試したところ,奏効した経験がおありの方も多いと思われる。数十例の規模の報告でも時間の経過とともに耳鳴が気にならなくなることもあり,プラセボとの比較がないと有効性を議論するのが難しいと思われる。

 本領域における漢方薬の有効性を証明する臨床研究が少ないため,データが少ない。この背景として,①難聴・耳鳴の病態が解明されていないこと,②耳鳴という症状に対して動物モデルが適応しにくい,③証を配慮して投薬するという性質が多施設共同研究の実施を困難にしていること,④すでに臨床応用されているうえに社会的背景も加わってプラセボと効果を比較した臨床試験が実施しにくいこと,などが考えられる。そもそもエビデンスという言葉自体が漢方薬になじまない部分があるかもしれない。しかし,一方で,後述するGinkgo biloba(イチョウ)では耳鳴に対する有効性が証明された薬剤も存在する。また,エフェドリンは漢方薬の生薬である麻黄から開発されたものであり,まだ耳疾患にも有効性のある,新たに開発されるべき薬剤が存在する可能性を秘めている。耳鼻咽喉科医の努力が望まれる領域である。

 残念ながら現在,難聴・耳鳴に対して漢方薬が第一選択になることはない。ただし,患者全体を診てから治療するという中医学,漢方医学の考え方は難聴・耳鳴治療において重要な考え方である。

 本稿では,今までに記載された漢方薬の文献から将来性に期待してまとめることとする。

 僭越ながら,筆者が行っている漢方診療であるが,まず証も考慮する。合うか合わないかわからないが,試してみましょう,と患者に説明する。いつまで内服するか期限を決めて処方する。証が合わなかったからか数日で体にあわない方も意外に少なくないので短期間内服してもらう。副作用がない限り,約2か月間は試したうえで,効果が期待できないならば投薬を中止し,異なる薬剤を試していきましょう,と説明している。いうまでもなく漢方薬にも副作用があることもあらかじめ説明する。

参考文献

1)土橋正明・他:ステロイド依存性難聴における柴苓湯の使用効果.臨床耳科 16:48-52,1989
2)Tozawa F, et al:Saireito(a Chinese herbal drug)decreases inhibitory effect of prednisolone and accelerates the recovery of rat hypothalamic-pituitary-adrenal axis. Endocr J 45:69-74, 1998
3)Folmer RL, et al:Tinnitus and insomnia. Am J Otolaryngol 21:287-293, 2000
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12)Ernst E, et al:Ginkgo biloba for tinnitus:a review. Clin Otolaryngol 24:164-167, 1999
13)斎藤 晶:耳鼻咽喉科治療薬 19章 漢方薬.耳鼻咽喉科薬物マニュアル,神崎仁・他(編).金原出版,東京,2003,pp116-121

掲載誌情報

出版社:株式会社医学書院

電子版ISSN:1882-1316

印刷版ISSN:0914-3491

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